清水哲男事務所のBook Shop
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清水哲男(しみず・てつお)のプロフィール
1954年京都市生まれ。同志社大学文学部哲学及び倫理学科専攻卒業。卒業後国内はもとより世界各地を放浪。1980年頃より執筆活動をはじめる。常に野に在り、市井の人々の暮らし、労働の現場に入って日常を共にすることで得た実体験を頼りに、思考し書き続けている。1997年より鹿児島市在住。著書多数。
清水哲男の本「揺れて歩く ある夫婦の一六六日」
60歳になった時、思いました。
ぼくはあとどれくらい生きられるのだろうかと。
平均的な余命は20年あまり。その間に何ができるのだろうかと。その背景には、若い頃思い描いていたような道のりを生きてきたのだろうか、生きるとはいったいどういうことなのなのだろうか、そんなことを思い続けてきた自分がいます。
そんな時父が末期の肺がんだと告知され、平均的な余命は6カ月程度だと宣告されたのです。
父は、何もせずに死を待つという道を選びました。もう、充分生きたと。
それを受けてぼくは父に残された時間すべてをつぶさに記録しようと思いました。市井の片隅で生きる無名の父です。その死への道程に、死とは何か、生きる意味とは何かが見えるのではないかと思ったのです。死に直面して、人は最後の時間をどう生きるのか。後に続くぼくにとっては、父に死に方のコツのようなものを、最後に教えてもらいたいと思ったのです。
そこには父を支えてきた母の父の死への思いはもちろん、最後になにを伝えあいたいのか、ふたりで最後の時間をどう過ごそうとしているのかを含めて、ちゃんと見ておきたい、記録しておきたいと。それを通して、死をめぐる人々のありのままの姿を普遍的に描けないか。まだまだ死は自分の問題ではないという若い世代の人たちにも、死というものを通して生きるということの意味を考えてほしいと思いました。
この本は、ぼくの両親の物語ですが、誰の親にも、誰にも訪れる物語なのです。
タイトル:揺れて歩く~ある夫婦の一六六日~
ジャンル:ノンフィクション
編集・出版:エディション・エフ
発行予定時期:2020年4月15日
著者:清水哲男
撮影:清水哲男
頁数:192p
体裁:B5変形横型(182mm×210mm)
ISBN:978-4909819086
BLUES on the streets
路上で暮らす猫たちのポートレート10枚組。
僕は町々に住み暮らす猫を見てきた。
視線を逆にすると、僕は町々で猫に見られてきたことになる。
当たり前の僕の暮らしを猫の視線で見たらどうなるだろう。
僕が見ているものを猫たちはどう見ているのだろう。
一つのものは視線の方向を換えることで別々のいくつかの側面を持っているとはよく言われることだが、その視線というやつは人の視点を離れることはできない。人というやつは、いや、僕というやつはそれほど傲慢なのだ。人の理知に勝るものはないと思い込んでいる。自ら多様な視点を捨てるなんて、創造性と想像力を捨てているのと同じだと思う。
萩原朔太郎がこんなことを言っている。「同じ一つの現象が、その隠された『秘密の裏側』を持っているということほど、メタフィジックの神秘を含んだ問題はない」と。「メタフィジックの神秘」は「ミステリー」と言い換えてもいい。
僕は故意に理知を捨ててこのミステリーの空間を彷徨ってみたいと思った。猫の視線で僕を見ようと思ったのだ。いや、猫に化かされよう!と。
夢の中で猫になるようなもんだなと、人は笑うかもしれない。確かにそうかもしれない。でもその後で、夢の猫が自分であるか、現の自分が自分であるか、ゆっくり考えればいいじゃないか。