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「歩き直しの旅路」と、東の果て・日本。

だいぶ前、夏くらいに一緒に買っていた2冊。レジリエンス・・のほうはまだ読んでいないのですが、右、関野吉晴先生含む「九人の賢者」の対談集『人類滅亡を避ける道』を読了して、このタイミングで読書日記&雑感を刻んでおきたいと思ふ。

関野先生は文化人類学者で、「グレートジャーニー」やアマゾンの熱帯雨林滞在などの旅を通した研究、著書で知られる。探検家、医師でもある。以前どこか別の本かサイトでお見かけした時に知った、人類がこの先実現させると言われている火星移住に対して、地球に住み続けようというプロジェクトをされているという。

私自身も・・(今世生きている間にはその選択をする必要は多分まだ?無いとは思うものの)出来れば地球と最後まで運命を共にしたい、地球を去ってまで生き延びるつもりは無い・・という思想を基盤にしている(笑)ので、母なる星、地球を癒してなんとか、このまま滅びに向かわない道筋を探せないものかということに、いつも意識が向いている。

画像サイズの関係でカットされてしまっている帯。ふだん帯ってすぐに外してしおりにしてしまうのだけど、この本に関してはとてもインパクトが強くて、迫力があるのでそのままにしている。少し、ご紹介しておくと、

七百万年前、地球上に時空を広げて「グレートジャーニー(偉大な旅)」をしてきた人類だが、このままでは世界は破滅だ!

環境破壊、人口増加、食糧不足、資源の枯渇、そして原発・・
科学は倫理を見失い、経済成長の名のもとに危機はますます進行している。

われわれがこの地球上で生き残るため 歩き直せる「旅路」はあるのか?

『人類滅亡を避ける道』関野吉晴 対談集
東海大学出版会

宗教学者の山折哲雄先生との対談で、人間社会と地球を危険な状況にしている経済中心主義、人間の利己的な欲望主義を変えて行くのは、「宗教」しかないのでは、と、さまざまな文化の素朴な生活をする人々に触れて来た関野先生は仰っていて。マルクス・ガブリエル氏の倫理的な哲学の重要性についての語りを、思い出したり。

人間は、「移動する」ことが一番の凄さだ、という話も印象的だった。サルの北限は青森県だそうだけれど。確かに人類は世界の隅々まで旅をして拡散している。人類のアフリカからの移動「グレートジャーニー」の逆ルートを辿る旅をされて来た関野先生、こんな事を仰っていた。

人間の移動について、私は以前には好奇心や向上心が原動力になったと思っていました。「あの山を、あの海を越えれば、より良い生活が待っているのではないか」そんな気持ちに突き動かされて人間は旅してきたのではないかと考えていたわけです。しかし、今の考えは違います。
中略
(最終氷期が終わり氷が溶けて海面上昇、陸地が水没し始める時代が来て)
当然土地は狭くなり、食糧も少なくなります。しかし人口は変わらない。となると、誰かが住み慣れた場所を離れなければならなくなります。
そのとき、誰が出ていったのかというと、好奇心や向上心に突き動かされた人ではなく、弱い人たちが押し出される形で出ていったのじゃないか、と私は考えているんです。
中略
その繰り返しが現在まで続いているのではないかというのが私の考えです。極東にある日本などは、まるで玉突きのように押し出された人たちがたどり着いた最後の島だったのかもしれません。

上に同じ p28~p29

ここ・・そうそう、ここは以前から私もそう思って来て、日本には縄文時代(16000年前〜3000年前ころ)にも、北・南・その真ん中から人々がやって来たことと思うけれど、その後のいわゆる「弥生人」「渡来人」について。3000年前に文化的な知識と技術を持った人々がやって来て弥生時代の始まりと言われている部分、その後も、中国での戦乱の時代や朝鮮半島情勢などにより、常に人々の集団が渡来して来ていたらしいと言われている。

最近、遺伝子ゲノムの解析などから、史学や考古学と共に解明が続いて、色々と分かって来ている。つい先日見たNHKの番組でも、

まさに同じような事を研究者の先生方が仰っていて、
もうこれ以上、ここに居ては後が無い、進むほかない、というくらいに追い詰められた集団が、日本に渡って来ているのではないか・・と。

中国の春秋戦国時代(BC770年〜)、500年にもわたる戦乱の時代には、恐らく多くの王侯貴族が移住、庶民たちも避難して来ただろうと言われているし、それらが弥生人として、日本列島に定着していった。更に、この番組で紹介されていた最新の研究結果による新事実、

現代の日本人の遺伝子には、縄文人と弥生人の遺伝子を受けている部分が、40%ほどである事が、分かったのだとか。日本人て、その二つの要素を持っているのでは無かったの?・・衝撃の事実。では!?
あとの60%は、一体何?

カギは、古墳時代(3~7世紀)。残りの60%の遺伝子はどこから?その具体的な解明はこれから、だとか。先生方いわく、
「ユーラシア大陸全体から、さまざまな文化や言語の人々が入って来ているのではないか」
「そこら中で言葉は通じない、服装も習俗もまったく違う、みたいな事が溢れていたのではないか」

・・・日本という国の成り立ちに関して、これまでとは全く違う歴史観が、明らかになっていくのだろう、とのこと。

騎馬民族が来て蘇我氏になったとか、秦氏はユダヤ人だったとか・・聖徳太子信仰にはキリスト教の気配があるとか、飛鳥京にはゾロアスター教やミトラ教の影響が見られるとか・・以前から古代史探求の分野で言われている(そして主流の学会では否定され続けて来た)事も、トンデモ話ではない事が、これから証明されていくかも?

そうそう。シルクロードの文物が入って来ているのだから、人々や他国の移民だって、到来するのはそれほど難しい事ではない。それも、さらに西方の人々が、上の論理「弱者が押し出される」形で中国や朝鮮半島に一旦定住、その後、最終的に日本に渡って来ているとなれば、尚更に。

ルーツはユーラシア全体、というロマン。
八百万の神々を受け入れた日本の民族信仰の形態は、そのような状況からやむを得ず、そして自然に生み出されたものなのかもしれない。今で言う移民の国の多民族都市、マンハッタンのような?

一緒に番組を見ていた家族が横で「ダイバーシティやね」と呟いた。本当に。それが日本の本当の「始まり」だと思うと、ワクワクしませんか。

話が本から外れてしまったけれども。
この先を生き抜いていく人間の可能性について。色々なジャンルの賢者どうしの対談は、なかなか興味深かった。けれど・・9名全員が男性で、びっくりもしていた。日本らしいなあ、と。

BBCその他、海外の番組を見ていると、学者や組織の代表だけでなく現地のガイドなどの体を張った職業でも、女性が、ほぼ男性と数の偏りなく出て来ている印象がある。9名「賢者」を集めるチョイスが全員男性になるというのは、先進国では日本ならでは・・かもしれない。増して、地球の未来、自然との共存など、女性の感性が生きるテーマでもある。

未知の60%の遺伝子に多くの才能や可能性を秘めている日本人が、未来「人類滅亡を避ける」ために「歩き直せる旅路」・・を見つけるにあたって、潜在的な何かを持って、この時代、これからの時代にそれが発揮されるのだとしたら。男女格差を乗り越えて、バランスできた時にこそ、カギとなり得るのではないかと感じた。

世界に声や技術を届けて、道を示していくには。
「これが日本なんだよ、分かってくれよ」という訳にはいかない(そういう意見をよく見かけるけれど、世界にそれは通用しない)。大陸を逞しく移動し東の果てまでやって来た、先祖たちの勇気と感性に応えるには、今の私たちも、それなりの意識変革が必要かもしれない。

若い世代に期待・・?と言っておきたい所だけど、中年もアラフィフも、おばさんも、それなりに頑張らないと。笑 と拳を握りしめた私であった。

関東の冬晴れに映えるメイプルツリーを見上げて。

Love and Grace
Amari