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会社を家族にしない、居心地の良い組織開発

会社組織では、組織の一体感が欠如されてきていると指摘されるようになって久しい気がします。かつてバーナードは、「組織とは、2人以上の人間の意識的に調整された行動や諸力のシステム」であり、組織が組織であるためには、共通の目的、貢献意欲、コミュニケーションが必要であると説きました。そのため、組織の一体感の欠如に対する処方箋も、ここから発想されてきたように思います。

共通の目的が曖昧になっているからだとして、ビジョンやミッション、そして最近ではパーパスを明らかにすることが流行りました。また、多くの企業で形骸化しているMBO(目標管理制度)も、本来は、貢献意欲を高めるための施策だったのでしょう。コミュニケーションについては、権限移譲については今のところ無策であるように感じますが、メンバーが共通の目的を受け入れるためのコーチングは浸透しているように見受けられます。しかし、それでもなお、組織の一体感の欠如は、組織課題として現前としているように思われます。

そもそも“一体感”というものは、存在しているのでしょうか。組織メンバーの在り方は、社会の変化に伴って変わっていきます。にもかかわらず、「昔は…」という感傷が、単に“一体感”という言葉を発明したに過ぎないのかもしれません。そうであるなら“一体感”は、どこかに在る言葉で済ますのではなく、自らの言葉で語り直した先にある、それぞれの”一体感”となるのではないでしょうか。

GAFAMの一角を占めるアマゾンは、創立当初、何年も赤字続きだったことが知られています。そこで経済誌紙の大半は、アマゾンのビジネスモデルは失敗だったと喧伝しました。しかしジェフ・ベゾスの自分語りでは、おそらく成功だったのでしょう。そして、それを共有できた一部の資産家の継続的支援が、現在のアマゾンを実現させたわけです。おそらく、ここには“一体感”があったのではないでしょうか。

しかし、アマゾンを支えた一団は、共通の目標によって統一化された仲間意識をもった一団ではなく、自身の目的に沿っているために協力し合ったもので、そのために互いを保護し合うということさえする集団だったと考えられます。

素人の投資家であれば、「成功するまでは…」と、借金をしてまでも投資を継続するでしょう。しかし、プロの投資家であれば、自分の資産との兼ね合いで、どこかで見切りをつけるでしょう。すなわちプロの投資家は、「今のところは…」と考えて、投資を続けるわけです。これは、互いが影響し合い、変わり得る存在であることが許容されているからこそ成り立つ関係でもあると思えます。このように、ジェフ・ベゾスと彼を取り巻く投資家の関係は、ある意味、“偶然”の産物と捉えることもできるでしょう。

今、ここに在ることを必然と見なさず、偶然であると捉えることで、むしろ、共に在ることの意義、あるいは一緒にやっていく可能性が見えてくるようにも思えます。

リーダーシップ論では、組織目標と個人目標を統合・調整する連結ピンになることがリーダーの役割と説明されます。しかし、それは組織とメンバーを永遠に結合させることではないでしょう。「今のところは…」という偶然性に依拠するリーダーシップが、心理的安全性に基づく組織の一体感を醸成する礎になるように思われます。

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