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DX推進における最大の課題はIT担当者が現場から信頼されていないことだ

「DX推進における最大の課題はIT担当者が現場から信頼されていないことだ」
某大手ホームセンター(C社)のDX担当者にヒアリングをする機会があった時に最も印象に残ったのがこの言葉でした。このC社はこの業界で最もDX化が進んでいると言われている企業です。今でこそ、顧客に優しいサービスを支える先進的なシステムを整えているのですが、ここに至るまでには様々な試行錯誤があったようです。

郊外型ホームセンターは巨大な倉庫のような店舗で、スーパーマーケットのように週○回というものでなく、○ヶ月に1回など、来店頻度の高くないのでどこに何があるのかが分かりづらい。だから、店頭で従業員の方に売場を尋ねる。場合によっては、わざわざ来店しても在庫がなかったりする。一方の従業員も、巨大な店舗のわりにはかなり少ない。店頭での作業をしているとその都度お客様に呼び止められ、売場を聞かれる。電話やファックスでの問合せや注文も入ってその手配をしないといけない。顧客にとっても、従業員にとっても課題を抱えていました。

そんな課題解決策として、BOPIS(Buy Online Pick-Up In Store)と呼ばれる「アプリで予約して店頭で受け取る仕組み」を整備することになったのですが、注文があるたびに従業員が店頭を駆けずり回って品集めをしなければならなくなる訳です。従業員からすると「また新しい仕事が増えた…」と受け止められてしまう可能性がある。また、オンライン注文は便利なのですが、一方で来店してみたら注文した在庫がなかった!ということも発生する可能性がある。店頭在庫がリアルタイムで分からないと販売可能数以上に売ってしまうこともあるわけです。納品数とPOSによる販売数が把握できていれば、在庫が分かるはず…ではないのです。お客様が店頭からとってカゴに入れて未だPOSを通っていなければ登録上の在庫は減っていない。また、万引きなどの事故によって理論上の在庫が減ってしまっていることもゼロではない。このような問題も解決しなければならない。

そもそもそれぞれの商品がどの売場で展開されているのか、どのくらい店頭在庫があるのか、どのくらいバックヤードの在庫があるのか、センターにはどのくらいあるのか…などをトータルで管理しないといけない。こうした仕組みがあれば従業員にも喜ばれる。また、電話やファックスでの注文は従来、手書きで発注書を起こし、作業所へ交付していたので従業員の負担が大きかったのですが、これを絵付きの発注書を自動的に起票し、交付するようにしたとのこと。

結局、お客様に優しい仕組みを作るためには、従業員にも優しい仕組みにしなければならない。業務フローそのものを再構築しなければならないということだったのです。だからこそ、DXを推進するIT担当者は現場に入り込んで一緒に現場の課題を解決していくことが大切になる訳です。
「DX推進における最大の課題はIT担当者が現場から信頼されていないことだ」とはこうした試行錯誤を繰り返してきた担当者としての実感。また、こんなことも言ってました。「外部のシステム担当者は現場を知らない。現場のヒアリングを踏まえて細かい仕様変更をしなければならないことの繰り返し。そんな時に外部にお願いすると4週間かかる。自分たちで出来るならば1時間で終わる。だから、システム開発はできるならば内製化する方が良いのです。そのために専門人材を採用するのですが、いきなり開発に携わらせるのではなく、一定期間店頭で働いてもらうのです。そうすることで現場の実態を踏まえた開発ができるようになる。」

現場の従業員を巻き込んだ業務フロー改革が必須であり、現場従業員とIT担当者を結び付ける調整役が不可欠なのです。「システムを導入すれば、生産性はあがるだろう!」と思っている経営者がまだまだ多いのですが、DXとは地道な活動なのです。

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