「サランラップはまた明日」(超絶ショートショート in ベトナム)
ホーチミンの夜は意外と涼しい。
僕は長そでを羽織って家を出た。
近所の複合施設まで歩いて日用品を買いに行こうとおもい、アパートメントを後にした。
道すがらいつもいく馴染みの居酒屋がある。
見つかると「飲んでいけ」「こっちのテーブルあいている」などとベトナム語でいってくる。
僕は見つからないように下を向いて歩いていた。
20メートル、30メートル、誰にも声をかけらない。
どうやらやり過ごせそうだ。
ふと顔を挙げた瞬間
「えーーー、むぉーーいーー」と声がかった。
(みつかったか・・・・)
声の主を見ると馴染みの店員だ。
彼女は手を振って、「ここのテーブルにこい」としきりにジェスチャーをしている。
僕も手を振りかえした。
「今日は駄目なんだ。」そうジェスチャーをしかけたところ彼女が振る手に視線が留まった。
彼女は人差し指と中指を15度の角度でひらいて他の指は握りこんでいる。
反射的に自分の手を見た。僕は掌をひろげていた。
「仕方ないな。サランラップはまた明日だな。」
そう言うと僕はすごすごと店に入っていった。
こうしてベトナムの夜はふけていく
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