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仕事のやり方が “昭和” というつもりはないけれど...

ある不動産関係の手続きを役所でする機会があった。

事前にネットで必要な手続き方法をしっかり検索する。まず、手元に準備しておく必要のある書類を細かくリストアップした。行政用語・法律用語では見慣れないものが多いが、ネット上には専門家による詳細な解説があって、何とか解読できた。ありがたい。

市区町村レベルの手続きに進む。

今ではどの地方自治体でもホームページがしっかりあって、必要な証明書類がどうすれば入手できるかを細かく案内してくれている。ただ、ほとんどの手続きはフォーマットを自分でプリントアウトして、それに自分で記入して手数料分の定額小為替や返信用封筒とともに送れ、とある。結局手書きなのか!と心の中で毒づく。オンラインで手続きができるようにするシステムなんて、その気になれば構築にそれほど手間がかかるとは思えないのだが。定額小為替を手に入れるのも、わざわざ郵便局の窓口に行かなくてはならない。役所ではペイジーの利用がかなり拡大したと思っていたけど、まだ進んでいないみたいだ。再び心の中で毒づく。

郵送でやり取りすれば、往復で1週間はかかる。結局、一部の証明書類は近隣の役所の窓口に直接出向いて手に入れることにした。言うまでもないが、役所の窓口が開いているのは平日の昼間のみ。仕事の調整をしなければならない。窓口では、どうせ言われるのはわかっているから、申請書の真上に運転免許証を置いて差し出す

マイナンバーカードをカードリーダーにつないでネット上で本人確認する仕組みはずいぶん前からあるのに、いまだマイナカードが使えるのはごく限られた手続きのみというのもやっぱり気に入らない。

申請書類の準備に進む。

これもネット情報を活用して情報収集しまくったら、けっこうスムーズに準備ができた。何度も見直し、最後に実印を押す。押印廃止の動きは進んでいるけど、この “実印” という仕組みも当分残るのだろうな。最後に、個人的にはあまり好きではない “捨印” を念のため押しておく(実は、後に細かい訂正が必要になり、この “捨印” が役に立ったのだが…)。

国の出先機関での手続きに進む。

これもネットでいろいろ調べてみると。「オンラインで手続きができる」とある。さすが!国の方が市町村より進んでいる、とちょっと感心する。地方自治体で集めた証明書類を電子化して、添付書類としてデータで送信できるらしい。スキャンの手間はかかるが仕方がない。数十枚の書類をせっせとPDF化する。

申請の材料がすべてそろったところで、いよいよオンラインで申請できる段階になった。

よく見ると、オンラインの稼働時間が平日昼間のみとある。申し訳程度に役所の窓口よりも長めの時間帯になっているが。サーバーを24時間稼働させると何かまずいことでもあるのかな?よくわからない。心の中でまた小さく毒づく。

専門用語をネットで確認しながら慎重に入力する。何度も見直した後に、電子署名を付与してデータを送る。しばらくして無事データが送られたとのメッセージが返ってきた。

これで完了…のはずだった。

注記をよく見ると、データを送ってから2日以内に到着するよう原本一式を送れとある。原本を送るのはまだいい。「2日以内」にというのはかなりきつい。書留速達で送るために郵便局の窓口にまた行かなくてはならなくなった。

後日、若干の補正と書類の追加が必要との連絡が先方よりあった。オンラインでもいいが、直接出向いてくれれば詳しく説明するとのこと。

これも仕方がない。仕事の調整をして平日昼間に電車に乗って出向くことにした。

窓口で対応してくれたのは、こちらの申請を担当してくれているという審査官だった。非常に腰の低い、言葉遣いも丁寧で好感の持てる人だった。

「同時に20件ほどの審査をやっているので、なかなか大変で」と愚痴りながら審査官がフォルダーから取り出したのはプリントアウトした書類の束だった。よく見ると、初めにオンラインでこちらから送った書類一式を打ち出したもののようだ。量からみて、すべてのデータを打ち出したように見える。なぜか後で送った原本ではない。電子データで送ったものをわざわざプリントアウトしている。ところどころ付箋紙がついていて、手書きのメモがいくつか書き込んである。

変な意味で懐かしい!と思った。はるか昔に会社勤めをしていたころに、パソコンで作った書類は、なぜか毎回せっせとプリントアウトしていたし、メールで届いた添付ファイルももれなく打ち出していた記憶がある。今では、そのような仕事の仕方は考えられないことだと思っていたが、まだそのやり方をしている職場が令和の時代にもあることを目撃してしまった。

デジタル化とは?ペーパーレス化とは?省力化とは?自分が自分であることの証明の仕方とは?ネット認証とは?役所間の連携とは?…

時間も手間もかかったが、いろいろと考えさせられる機会となった。いい勉強になった。

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