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【 さすがにやり過ぎ!? “ラングニックのプレッシング” の裏側とは? 】 ~ ドイツ在住指導者 大島さん ~

━━━━━━ 140字じゃ語れないことがある

そんな思いを持っている方々の、それでも140字に詰め込んだ思いや感情、価値観を深掘る企画「140字じゃ語れないことがある」。


今回のゲストは、ドイツ2部『TSG WIESECK』のU19のアシスタントコーチとしてご活躍されている大島 正寛(オオシマ マサヒロ)さんです!

▼今回深掘るツイートはこちら↓↓

あの “ラルフ・ラングニック” の哲学について詳細をお聞きしながら、大島さんご自身の考えもアツく語っていただきました!

今回は、前後編の2章編成です。
まずは第1章、ぜひお楽しみください!!

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※インタビュアー:大矢 峻(オオヤ タカシ) / OFF THE PITCH Staff
※インタビュー日:2021年8月7日(土)


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【 ラングニックは、なぜ “過度なプレッシング” を哲学にするのか? 】


◎大矢:
大島さん、よろしくお願いします!


◉大島さん:
よろしくお願いします!


◎大矢:
今回深掘らせていただくツイートは、1998年に “ラルフ・ラングニック(以下:ラングニック)” がドイツの人気スポーツ番組で話をした様子です。
改めて、この動画の中でどんなことを話しているか、大島さんの方から簡単に教えていただいてもよろしいでしょうか?


◉大島さん:
当時のドイツサッカー界では、リベロを配置した[3バックシステム]が主流で、ドイツ代表チームも[3−5−2]でプレーをしていました。
そんな中、時代の流れとは異なる4バックを導入していたラングニックが、どのように4バックでプレーするかを説明したドイツのスポーツ番組になります。


◎大矢:
なるほど。
ラングニックは、動画内で具体的にどのような主張をしているのでしょうか?


◉大島さん:
「過度なプレッシング」です。
ゆっくりな守備ではなく、ボール保持者に対して2〜3人で数的優位を作り、アグレッシブにボールを奪いにいくというやり方でした。
決められたゾーンでプレスを行う「ゾーンプレス」や、いわゆる「マンツーマンディフェンス」ではなく、“ボールを中心” に危険なエリアを考えて、そこに選手を送り込みます
動画の最後では、ボードを使って「4バックでどのように守備をするのか?」を説明しています。自分たちから見て右サイドの半分には相手選手はいる一方で、味方選手は誰一人としていない様子が示されています。
味方選手は “ボールを中心” に守備をしており、周りの危険なエリアを埋めているのです。


◎大矢:
ありがとうございます。
僕も動画を観た上で、とはいえいくら「過度なプレッシング」といっても、ボール保持者に2〜3人がプレッシャーをかけるというのは、率直に「やりすぎじゃないか?!」と思いました。笑
これはラングニックのどのような考え方がベースにあるんでしょうか。

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※いくらなんでもやりすぎじゃないの!?


◉大島さん:
そうですよね。笑
まず前提として、ラングニックには「4局面で考えたとき、どのように守備から攻撃に移るか?(ポジティブトランジション)」を重視するという哲学が根幹にあります。
また、彼には「バルセロナやシティのように “ボールを繋いで得点を狙うサッカー” というのは、技術的なレベルが高い選手が集まったときにできることである。技術レベルの高くない選手がポゼッションをしようと思っても、どうしても難しい。」という考え方がベースにあります。

その上で、「どうしたら簡単にゴールを奪えるか?」というサッカーにおける最も原則的な問いを考えたときに、彼は「どのような状態でボールを奪うか?」が重要であると考えました。
つまりは、“数的優位” の状態でボールを奪って、“数的優位” の状態でゴールを奪うことを重視し、守備と攻撃をセットで考えたのです。
簡潔に言えば、“数的優位” をつくるために、“過度に” 人数をかけるという背景があるのだと。


◎大矢:

なるほど、めちゃくちゃおもしろいです!
では、なぜラングニックはこのような考え方(哲学)にいたったのでしょうか?
そこの背景を、もう少し詳しくお願いします。


◉大島さん:
ラングニックは当時、ドイツ3部の『ウルム』というチームで指導をしていました。
スター選手が集まるようなチームではなく、どちらかというと「雑草魂」と言いますか、下から這い上がってきたようなチームでした。同様に、ラングニックが関わっていた当時の『RBライプツィヒ』や『ホッフェンハイム』もスター選手のいないチームでした。
試合において、バイエルンのようなスター選手が多いチームに対して互角に渡り合うためには、「ボールを持って(ポゼッションして)ゴールを奪う」というやり方ではなく、「守備でボールを奪い、そこからすばやく攻撃をする」というやり方を求められていた環境にいたため、そのような哲学になっていったものだと考えられます。


◎大矢:
そういった経緯があった上で、ラングニックは自分の哲学を固めていったんですね。


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スター選手がいないチームで、格上のチームに勝つためにどうするか?

この問いの答えとして、大島さん曰くラングニックは「数的優位でボールを奪い、数的優位ですばやく攻撃する」という哲学に至ったとのことです。

サッカー指導者として確固たるサッカー観や哲学があることは重要になる中で、そういったものが固まるのは、「好き」や「憧れ」といった感情ではなく、案外自分が指導している状態や環境に影響されるものなのかもしれません。


後編は、ラングニックの話に続いて “ナーゲルスマン” についても語っていただきました。
ぜひ、お楽しみに!!

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<ゲスト紹介>

◉大島正寛(オオシマ マサヒロ) 氏
・Twitter↓↓
https://twitter.com/oshima7soccer?s=21
・YouTube↓↓
https://www.youtube.com/channel/UCyN3UFNock7C3e-p3kMQsuQ/featured

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<運営紹介>

◎ 一般社団法人FiC
「WORK WITH PRIDE 〜誇りと共に働く〜」をコンセプトに、日本サッカー界で起きている様々な問題を解決するべく、サッカー指導者が総合的に学べるコミュニティ事業を展開。10代〜40代まで幅広い年代の、サッカーや指導に想いを持つメンバーが所属する。
現在は、関東圏のみならず関西、そして全国に200名以上の会員を抱え、サッカー指導者が学べる機会や情報のほか、会員一人一人のキャリア支援や、講演会をはじめとしたイベントの企画/運営も実施している。
2021年7月に大阪支部がスタートし、2021年秋には第6期生を募集予定。

▼お問い合わせはこちら↓↓

◎インタビュー:大矢 峻
◎編集:佐々木 良央、八田 凌雅

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