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C向けサービスの、「愛」と「名誉」のジレンマ【Off Topic Ep198】

宮武徹郎と草野美木が、アメリカを中心とした最新テクノロジーやスタートアップビジネスの情報を、広く掘り下げながら紹介するポッドキャスト『Off Topic』。このnoteでは、番組のエピソードからトピックをピックアップして再構成したものをお届けする。

今回は「#198 古いフォーマットの新しいバージョンを作る」のなかから、SNSなどのC向けサービスがスケールを目指すなかでぶつかる、「愛」と「名誉」のジレンマについて。SNSの「楽しいフェーズ」と「ステータスのフェーズ」、「ソーシャルネットワーキングサービス」と「ソーシャルメディア」の違いなどから解説していく。


「ソーシャルネットワーキングサービス」が「ソーシャルメディア」に変わる瞬間

C向けアプリの作り方を考えるにあたって、ヴァリアント・ファンドのリ・ジンによるフレームワークは興味深い。まず彼女の考えは、Twitchの共同創業者たちによる、SNSの機能のプライオリティ化に関するフレームワークを参考にしている。OpenAIの(55時間32分だけ)元CEO エメット・シアはTwitchのCEO時代に、動画配信者たちにストリーマーとしての動機と目標を問うた。その結果、彼らの目的は「愛(ポジティブなソーシャルフィードバックと繋がり)」「名誉(オーディエンスを増やしたい)」「お金」の3つにカテゴライズされることがわかった。Twitchは、これら3つに貢献しない機能は開発しないことを決めていたという。カテゴリーで区切ることで、各カテゴリー内でどの機能がインパクトがあったかの比較とプライオリティ化がしやすくなるためである。

リ・ジンは、 このフレームワークを援用して、ソーシャルアプリが「愛」と「名誉」のグラデーションの中に存在するとした。「愛」にフォーカスしたプロダクトは、より繋がりを重視する。双方向性のコミュニケーションや、ユーザー同士の関係性やアフィニティを意図的に強化する傾向がある。iMessageなどのメッセージアプリや初期Facebook、Discord、Redditなどがこの領域に位置するだろう。

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一方、「名誉」にプライオリティを置いたプロダクトは、繋がりよりもユーザーのアテンションやコンテンツのリーチを増やすことを目的に、より新しいコンテンツやクリエイターのディスカバリーに特化したものが多い。双方向性というよりも一方的なものが多く、現在のTikTokやInstagramのリールスなどがわかりやすい。そこで影響力を得られたユーザーはプロ化し、より大きなオーディエンスを集めていく。

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