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2023年10月〜12月観たアートまとめ

東京ビエンナーレ2023(東京都心東北エリア)10月

東京で2年に一度、上野~日本橋方面で開催されている芸術祭です。メイン会場は茅場町の「エトワール海渡リビング館」という、たぶん今は使われていない(解体予定の商業施設?)ビルの中。その他、上野や秋葉原、有楽町、水道橋などに作品が散らばっているので、パスポートを購入して日をまたいで行く芸術祭です。でも、ちょっと場所が離れているのと、作品が見つけにくいこと、行った労力に対する場所での作品数が少ない、行きにくさ分かりにくさがある芸術祭でした。今後の発展に期待!

東京ビエンナーレ2023、パスポートは大人2500円~
まずはメイン会場の「エトワール海渡リビング館」(廃墟ビル?)からスタートです。
佐藤直樹氏の木炭画。「まだあるの?まだ続くの?」と、どこまでも描かれた植物の道。もう迷路のような長さです。300メートルにも達するそうですが、もうライフワーク!これだけ絵に没入できること、続けられることが羨ましくなる作品。
廃墟のビルの中に作品が展示されています。人が少ないので、ひとりだと怖いかも。
これは別の日に上野の寛永寺で観た日比野克彦氏の作品。捨てられたようなタンボールは、寛永寺に集まった徳川家の将軍たち。たたずむ諸行無常。
これもまた別の日に有楽町で観た、みんなでつないでいくリボン。ビルの合間の隠れた休憩スペースとなっていました。「有楽町にこういうところもあるんだな~」と休憩スポットを発見できた。

ここへきてやむに止まれぬサンサシオン(アーティゾン美術館)10月

サンサシオンとは「感情に至るまでの感覚」という意味だそう。

日本画や油絵の技法を使って、絵画だけにとどまらず立体作品まで手掛ける山口晃氏の作品展。入り口から驚きがあり、スッと山口氏の世界に落とされた感じ!「視る」ことを色んな角度から、「考え」させられる展示方法。ときに漫画だったり、インスタレーション(空間)だったりと表現をなんでも試しているところ。静かで真面目な絵画ばかりかと思ったら大間違いでした。
よく見るとユーモアあふれる展開が絵の中にあったり、パースの取り方が精密だったり、見るべき要素が多すぎて、一緒に行った息子は、また別の日にリピートしに行ってました。そう、アーティゾン美術館は、学生無料なんです!私も大学生(放送大学在学中)なので無料。ありがたし…。

鏡に映り込むことで見えてくる文字。

うえののそこから「はじまり、はじまり」荒木珠奈展(東京都美術館)10月

絵本のような物語の中に入れるインスタレーション(空間)体験の作品展でした。日常の風景が絵本の中に溶け込んで、自分もまたその世界を体験できる。暗いからちょっと怖いけど、小さな子どもも楽しめそう。大人も冒険しつつ、子どものときの記憶が蘇るような時間でした。

東京都美術館の地下の薄暗い中の展示。どこかの夜の街の物語に連れ込まれます。
街を照らす明かりは、電柱から勝手に引っ張ってきた電線から拝借した光。来場者もひとつ家を選んでプラグをつなぎ、自分の家をこっそり照らすことができます。一緒に「ズルいこと」をしてニヤけたような連帯感。
鍵を渡され、鍵に書いてある番号から自分の部屋を探して開けてみます。私の部屋には何がいるかな?誰かが開けた扉で、展示の風景が変わります。かつて開催された実際の個展では、個展の招待状の中に鍵が入っていて、来場者が開けに来るという設定だったとか!小さくワクワクする仕掛けが、かわいらしい。
上野の底にあった、なにかの巣?自分も入ることができます。キラキラした光と影が、過去と今をつないでいる。

”Syn”身体感覚の新たなる地平(TOKYONODE・虎ノ門ステーションヒルズ)10月

オープンしたての虎ノ門ヒルズステーションタワーにて。こけら落とし上演された作品。オープン3日後くらいに行ってみたよ。

メディア・アートのライゾマティクスとダンス集団・イレブンプレイによる、デジタルとアナログ(身体表現)が融合した作品。演劇のように予約制のチケット購入が必要です。(途中休憩なし70分・大人8000円)これまた学割で4000円で参加させていただきました。(申し訳ないので!?2回観たよ)
自分で会場内を進んでいくのですが、ダンサーさん近くてドキドキ!なのと、会場のタイムスケジュールが計算されつくされた設計で、自分が見られる側になったり、過去と現在がつながったりと、仕掛けが多い!頭のいい人はすごいなあ、という思いと、やっぱり「人間は人間が好き」という感覚に気がついて感動の涙。人間って美しい!

Aiに支配されてていく?ような未来。人間は発展していくデジタルの世界に飲み込まれていくのか?科学の発達ははたして本当に人間を幸せにしていくのだろうか?
途中で立体メガネを渡され、映像や影が立体に見えてきます。ダンサーさんとの距離が近くて、同性ながらもときめきを覚えるくらい、みなさんキュート!

終了後に虎門の地下鉄の駅に行くと、駅の壁にこんな作品が。虎ノ門だからトラなんだろうな~。

虎ノ門の新しい地下の駅にこんな「トラ」の作品が。繊細すぎて、こんな道にあっても大丈夫なの!?と心配になった。見る角度によって表情が変わるし、光の加減もいろいろ考えたんだろうな。
中谷ミチコさんの作品。たぶんどこかでも観たことあるな。好きだな~と思っていたら、後日また有楽町で再会しました。
どこから見ても立体的に見えるような手の込んだ作り、

高井戸芸術祭2023(高井戸駅周辺)10月

美術手帖のWEBが流れてきて、「こんなのやってるんだ~。え?ライアン・ガンダーの作品もあるの!?」と観に行ってきた芸術祭。土日だとガイドさんの説明付きで回れるらしいので行ってみたら、なんと主催の方が案内してくれるガイドツアーでした。
色々聞いてみたら、コレクターの方と主催の方とたった二人で始めた芸術祭とのことでびっくり!「すごい、芸術祭って個人で始められるものなの?」と、人間「やる気があれば芸術祭も作れるー!ダーッ!」と勇気をもらえたのでした。しかも「ライアン・ガンダーの作品って個人で買えるの!?」と下世話なこと色々聞いてしまう。(現代アートって投資の対象でもあるから…。いや私は、そんなにそういう気は…。でも、20年前に原宿でバンクシーの作品が5万円で売られていたって話も聞いたことあるし、多分今なら億とかなってたりして~~~~⁉とかは…考えます…)
それはさておき、高井戸がかつて「ゴミ戦争」があったという歴史を知れたり、行ったことのないお店に「作品を観に来たんです」というテイで入れるのは楽しかった!今後も続いて欲しいなあ。

この煙突、遠くから見えていたけど高井戸にあったんだね。
果物が発する微弱な電力で音がなるという作品。腐りつつも、うぃ~~~とがんばって最後の息を吐いているみたい。りんごの死は、いつまで続くのだろう。私も死んだら、いつまでうぃ~~~って言えるかな?でも、死んだらスマホ触っても反応しないっていうし、りんごの死と私の死は境目が違うのかもしれない。
噛んで捨てられたチューインガムは実は大理石で作られたもの。言われないと気が付かない、影から見ている誰かに「へへっ、うぇーい」と言われているような気分。トリッキーなことをする、ライアン・ガンダーの作品。
素敵な喫茶店!おしゃれすぎて、ヘボい私は普段なら3回くらい素通りしてからしか入れないけど、今日は芸術祭だしガイドさんもいるからね。入っちゃうよ!中には、スパゲッティの作品がありました。落ちたスパゲティはゴミ? ゴミをテーマにした芸術祭。作品の選定もおもしろい!

東京文化財ウィーク 旧磯野家住宅(銅御殿)(茗荷谷)10月

旧磯野家住宅は、大正元年に施工された当時の実業家のお屋敷。この門から重要文化財らしいです。

その日は放送大学の対面授業の日で、茗荷谷の大学で授業(ちなみに授業は「ディズニーランドの経済学」という完全な趣味…。行動経済学や心理も経営に反映されていると知る)を受けていました。天気がいいのでお昼はマクドナルドでテイクアウトしたものを大学脇の公園で食べていたら、目の前の古い門に「東京文化財ウィーク」の旗が立っていて、人がチラホラ吸い込まれていきます。今日は自由に内覧できる日(無料開放)らしい。あわててハンバーガーをモグモグして5分で観てきましたヨ。

震災か東京大火災かの影響で「火災に強い家を作る」ため、2階建て木造建築をしっかり銅板の壁で覆うという手の込んだ作りになっていました。中には入れませんでしたが、部屋も多そう。玄関脇には「警察立ち寄り所」の看板もあり、お金持ちだった記憶が。

江戸川区角野栄子児童文学館「魔法の文学館」(江戸川)11月

区の施設とのことで入場料700円。事前のインターネット予約制でしたが、わりとすんなり取れました。

JR葛西駅からバスで10分くらいと、ちょっと行きづらい場所ながら、新しくできたことで話題の文学館(図書館)。ジブリ作品「魔女の宅急便」の原作絵本を書いた作者さんの文学館。絵本作家さんになって、将来こんな図書館をつくってもらえたら本望だろうなあ。
中はイチゴ色で、上にはカフェやテラス、絵本がたくさんあるので、親子でのんびりするにはうってつけ。ご近所さんはいいですね~。
本を読むための隠れ家のようなスペースがあり、1日のんびり絵本を読むのに良いと思います。おとなもひとりでじっくり過ごしたい。
最初に5分くらいのミニ映画も見れます。カフェのお食事は比較的高め。

全体的にフォトジェニック!本棚には「あ、これ小さい時読んだ。なつかしい~」の本がいっぱい。子どもが小さかったら一緒に来たかった。
角野栄子さんのファッション。まさに憧れの「かわいいおばあちゃん」! 日本人全員の老後がこんなだったらいいいのにな。そのためには、財力と地位・権力・才能って、やっぱりあったらいいなあ。老後に大切にしてもらえるって…本当にいいですよね。映画「PLAN75」まっしぐらの自分と比較してしまって、泣けた。

大巻伸嗣「真空のゆらぎ」(国立新美術館)11月

なんと無料!なのに、大きな作品が2つも。作品デカいし、床もしっかり真っ黒のシートが全面に貼られているし、このシート、メーターいくらだろう?結構な予算かかってるのでは!?その予算出したのどこ?あー、文化庁?じゃあ大丈夫だね。アートってお金かかるよね、とか考えてたり、いなかったり…。

瀬戸内国際芸術祭の港にある2本のタワーが印象にある大巻伸嗣氏の展示。無料なので、さらりと見るつもりで行ったら、見どころが大きかったです。最初の光るツボは、中から眩しい光がゆっくりと上下に動いています。これか核融合の光を表しているそうです。強烈な光に照らされているのは植物をモチーフにした文様。私たちはその光に集まり、目を凝らし、グルグル回って写真を撮り、ネットにあげて…⁉ なんとなく作品をわかったような気になったような!? 美しいものは怖いものを隠してくれているのかも。それでも私は気が付かず、アリになって白い砂糖壺に引き寄せられるのです。

惹きつけられる強い光と美しい白い壺。
白い部屋で眼をやられたあとにやってきた暗闇の海。軽い布(繊維?)が風と光に煽られて一瞬一瞬の姿を見せます。ずーっと座って観てられる。ここにヨギボーあれば、ぼーっとしたい。

渡辺篤「私はフリーハグが嫌い」(国立新美術館)11月

私の好きな「アイムヒアプロジェクト」。街で流行ったフリーハグだけど、それが嫌い・・・なぜ?そう簡単に軽くは開かない心の扉がここには並んでいるのです。扉の向こうには、ずっと引きこもっていたけれど勇気を出して作者とハグするために出てきてくれた人の写真。重い重い扉を開けるのに、すごい葛藤と勇気があったと思います。日常的に美術館に来れる人には、その恐怖の重みがわかるだろうか?私はわかったのだろうか?本当にわかったとは言えないけど、想像させてれる。そんなアートでした。

扉の重さは人それぞれ。自分の扉と比べて「フリーハグ、そんなの簡単じゃん!」とは言えないんだな。ちなみに私の扉はふすまです。直球でよくなぎ倒されます。そっと横にスライドしてね。

デザインフェスタ58(東京ビックサイト)11月

色んな発想や作り手に触れたくて、なんとなく年に1回くらいのペースで行くデザインフェスタ。だんだんと規模が大きくなって、南館もびっちり。

いろいろあるよね、ビックサイト
今回はタワシさんの「孟子2体(もうしにたい)」キーホルダーを購入!夫にプレゼントしたところ、「カチャカチャ言うのが気になる…」というので、一体づつに分け、ペアキーホルダーにして夫婦2体集まると、本望を遂げる仕組みにしました。いいのかな!?

さいたま国際芸術祭2023(旧おおみや市民会館)12月

いきなり「明日最終日だ、行きたい!」という息子を連れて、翔んで(?)さいたま国際芸術祭へ。今回はアート集団「目」がディレクションしているらしい…てことは、ネタバレしないほうがいいよねと、あまり前情報無しに、とにかく現地へ。本当に「目」らしい、市民会館をがっつり使った「目」の作品でした。館内にも参加されている作家さんの作品が展示されています。が、入場券を買ったあたりから「もう、目にハメられている気がする…」と警戒しだす息子。その通りでした。あのぉ、入り口はどこですか~!?

入り口が数か所ありまして…ですね。行けそうな場所へ行けないんですよ。
2階の入り口は窓を突き破って入る仕組みだし、変なところに置いてあるカップや傘も、これは作品なのか単なるゴミなのか、あの清掃の人は仕掛け人なのか「やいっ、お前は誰だ!?もしやアートの一部か?」と、目の世界へ引きずり込まれるのです。
劇場も変な具合に仕切られていて、本当に設営前なのかスケーパー(仕掛け人)なのか?
あれ、あっちの壁の向こうに行きたいのだが…。見えているのに行けない。体験型アートでした。最終日ということもあり人も多かったです。でも人が少ないと、ちょっと薄暗くて怖いところもあり、適度に人がいて、他の人の反応を見たりするのも楽しいですね。

「ノンスタイルライブ2023~おもてうら~」(東京ドームシティホール)12月

若きお友達(中学生)に誘われて、お笑いライブに行ってきました。夫がお笑い好きでよく吉本に行ってますが「ライブ?1時間くらいかな」と言っていたので、そのつもりで行ったら3時間くらいあってビックリ!よく喋るし、漫才を7つくらいやって、体力とか脳内とかすごいなプロは!と思った次第です。人気があるのもうなづけます。そして笑うって疲れますね。演者さんはもっと疲れるだろうな。笑って疲れてよく眠れそうな冬の夜でした。

今はQRなのか~!しかも開演前に事前に「途中のトークコーナーで聞きたいこと」などをダイレクトに送って、本当にその後のライブで答えてくれるし。進化してますね。

というわけで、今回は以上です。新年入ってやっとミュージカル・コンサートも行ってきました。最近舞台は高いので、控え気味です。が、緊縮財政の中で物を買うことは諦めても、形に残らないもの「体験、感動、旅など思考に作用するもの」にはなるべく勇気予算を出したいなと思います。