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【目印を見つけるノート】284. わたしたちの贅沢な旅

先日、ニューヨークのチェルシー・ホテルのことを書きましたが、Googleで関連記事を提示されました。
アメリカの不動産関連の専門紙の記事です。Nowadaysという感じでタイミングがいいですね。

きちんと訳して読んでいませんが、一筋縄ではいかない感じです。

https://therealdeal.com/2021/01/11/chelsea-hotel-reno-can-resume-after-housing-department-drops-fight/

『ラグジュアリーなホテル』ですか……。
🤔

⚫贅沢な旅

ラグジュアリーという旅はあまりしたことがないのですが、「これは贅沢な旅だ」と思った旅はいくつかありました。

けっこう歳上の職場の女性と青森に小旅行に行くことになって、「宿泊は浅虫温泉にしよう」と決めたのですが、紅葉の繁忙期で宿が空いていません。あるいは予算からすると目が飛び出るほど高かった。
手配係の私は困りました。
連れの女性は少し体調がよくなかったので、とにかくのんびりできるところにしたかったのです。
電話をしまくって、やっと予算内で取れたのは野辺地の温泉ホテルでした。青森から鉄道の移動になるし、帰りは特急『はつかり』で盛岡まで出て、そこから新幹線になります。当時は盛岡までしか新幹線がありませんでした。

彼女は「飛行機が苦手だからいいわよ」と快く了承してくれました。

宿のある駅に着くともう午後になっていました。彼女が少し疲れていたので、すぐにタクシーでホテルまで行くことにしました。丘陵がいくつもあって海が時たま見えます。牛が放牧されているのを見て、イギリスみたいだなと思いました。
イギリスに限ったことではないのでしょうが。

ホテルは高台にあったのかな、丘陵の風景の奥に堂々と建っていました。海の見えるお部屋もあったようです。

いいホテルでした。広くて、きれいで、応対も丁寧で。大浴場も広くて泳げそうでした(泳ぎません)。ヒバのいい香りが記憶に残っています。彼女と一緒に入って、他のひとがたまたまいないのをいいことに、ひたすら話をしていました。

食事は豪華でした。
お刺身の舟盛りもかなり大きかったですし、お膳の小鉢も温かく手がかけられているのが分かりました。魚介が多かったですが、お肉もしっかりありました。デザートにいたる前にもう、ギブアップしそうでした。何人分だったのかしらぐらい。

おそらく、人生でもまたとないほどのお食事だったと思います。

彼女はお風呂が気に入って、私より多く入っていましたね。
夜は彼女が髪をすくのを羨ましく眺めながら、お話をしました。私は手櫛でいいぐらい短かったのです。
お布団に入ってもほんの少し話は続きました。
中身は内緒です😉
オンナどうしのお話。

翌朝、チェックアウトをしてタクシーを呼んでもらいました。
「本当にのんびりできたわぁ。いい宿を取ってくれてありがとうね」と彼女が言ってくれて嬉しかった。
本当に、お値段よりはるかにいいお宿でした。
まかど温泉富士屋ホテルさん。

紅葉のきれいなところでタクシーを停めてもらって、散策しながらお互いに1枚ずつ写真を取りました。
運転手さんに撮ってもらえばよかったなあ。
『はつかり』でも新幹線でも彼女はよく眠っていました。そして、私は車窓の景色を眺めながら、時おり彼女の寝顔を見ました。

きれいでした。

次の年の2月に、彼女はこの世を去りました。

年賀状をいただいていました。
「あれが最後の旅になりました」と書かれてありました。
過去形で。

私は、ほんとうに、
贅沢な旅だったと思いました。
浅虫温泉には行けなかったけれど、
まかど温泉はとても素敵だったし、
『はつかり』にのんびり乗ることができました。

ここで国語の入試問題ならば、
「なぜ筆者はこの旅を贅沢だと感じたのか、選択肢を答えよ」
などとなるのかもしれません。
入試問題には正解が必要です。
(受験生の皆さん、ガンバレー)

でも、
解を作らない感慨もあるのです。

偉そうなことを承知で書くのならば、
その連続が人生の時間なのかなと思います。

彼女が好きだった大黒摩季さんの『空』を引用します。

彼女に頼まれて、CD買ってきたなあ。


⚫そろそろ空は

雨が降ってきていますが、雪になるのでしょうか。

みなさまひきつづき、おきをつけて。

それではまた、ごひいきに。

尾方佐羽

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