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【目印を見つけるノート】315. チック・コリアさんを教えてくれたのは

鍵盤奏者のチック・コリアさんが逝去されたというニュースを見ました。Yahooのコメントの数々で泣けたのは初めてです。

ジャンルを悠々と超えて音楽を追求されていた方です。フリージャズからクロスオーヴァーというジャンルの嚆矢(こうし)となり、他には真似できない多彩な活動をされました。ともに演奏した方がたもトップ・プレイヤー揃いで、長く大活躍されています。

『ジャズピアニスト チック・コリアさん死去』NHK NEWS WEB
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210212/k10012862131000.html

このニュースでは『ピアニスト』となっていますね。
エレクトリック(という表現もどうかと思いますが)・キーボードの音が印象的ですが、ピアノの演奏の音がたいへん美しかった。

心よりご冥福をお祈りします。

さて、ジャズにもフュージョンにも通じていない私ですが、ふたつ思い出したことがありましたので、個人的な経験として書かせていただきたいと思います。

私が最初にチック・コリアさんを知ったのはコージー・パウエルさんのインタビューでした。
ご存じのかたも多いかと思いますが、パウエルさんはハードロック、ヘヴィメタルのジャンルのドラマーです。ジェフ・ベック・グループ、レインボー、ブラック・サバスなどに在籍されていました。
バスドラムふたつですごくパワフルな演奏をされる方でした。
確か、『音楽専科』という雑誌のインタビューだったかと思うのですが、彼は家でどんな音楽を聴いているのかと聞かれて、「チック・コリアとか」とお答えになっていました。

一言で言えば、違う畑のミュージシャンです。
中学生だった私は意外な感じがして、それが強い印象として残りました。あとから考えれば、パウエルさんが一緒に活動していたジェフ・ベックさんはギターでジャンルを横断するような創作に取り組まれていたので、まったく無関係ではなかったでしょう。スタンリー・クラークさん(ベーシスト)をパッと思い出しますが、ともに活動していた人が共通していました。

その頃聴いた曲を。
おそらく、多くの方がまっさきに思い浮かべるのではないでしょうか。
『SPAIN』Return To Forever


Return To Foreverはチック・コリアさんが中心のグループです。

さて、だいぶ後のことになりますが、月刊ファッション誌で私はひとつのエッセイを読みました。雑誌は『ELLE』か『MARIE CLARE』だったか、日本版でしたが記憶があいまいです。音楽評論家の黒田恭一さんが書かれたものです。
大まかですが、「飼っている犬にReturn To Foreverを聴かせたら家出してしまった話」でした。

このエッセイはたいへん印象的でした。
「犬が家出してしまうなんて、すごい」と思いました。グループの経歴とか斬新さを専門用語で記すのではなく、音楽がいきものにどのような心象を与えるのかという視点がとても新鮮でした。

Return To Foreverのことを直接書いたのではない。なのに聴いてみたいと思わせる。
そして、音楽のもっとも特徴的な部分を分からない人にもイメージできるように書く。

文章で音楽を書くときのお手本だと考えています。
ついさっき、改めて思ったのですが😅
その域にはまだまだまだまだ∞

さて、
それを読んで、Return To Foreverの1枚目を買いました。ラテンの音楽かなと思うのですが、確かにどこか遠くに心がふわふわ浮いていくような音楽だと感じました。
Return To Foreverは、
日本語にすれば「永劫回帰」ですね。
どの曲で犬さんは感じ入ったのかしら。

『Crystal Silence』


少し記事の趣旨から外れますが、
黒田恭一さんは主にクラシックの評論をされていました。ご著書にはクラシックの初心者に向けて平易に書かれたものも多かったと思います。

私は前記の一文がずっと印象に残っていましたので、一度お仕事のエッセイをお願いしたことがあります。電話でいきなり直接お願いしたのですが、ご快諾くださいました。飛び込み営業✨

書いていただいたエッセイは、知らない人から電話がかかってきたときの「もしもし」という声についてでした。その声が後の印象も決めると書かれていて、私はちょっとドギマギしました。

きっと、「もしもし」も黒田さんにとっては音楽だったのかもしれません。

今は電話で話す機会じたいが減りましたね。
レトロな話かもしれません。
なんて素敵なレトロでしょう。

私にとってのチック・コリアさんは、コージー・パウエルさんと黒田恭一さんに紐付けされているようです。これはけっこうなフュージョン=クロスオーヴァーだと今でも思っています。
教えてくださったお二人に感謝します。

パウエルさんも黒田さんもクラークさんも皆さん世を去っています。
ちょっとさびしいですね。

今日はそのことだけ。

それではまた、ごひいきに。

尾方佐羽

追伸 ジャズ&フュージョンファンの皆さま、どうか大目に見てください。
やっぱり、さびしい。


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