尾川安吾

寄る年波にも負けず 夜の街で飲み歩くおっさんです。 ゴルフに片思い中。 普段、考えてる…

尾川安吾

寄る年波にも負けず 夜の街で飲み歩くおっさんです。 ゴルフに片思い中。 普段、考えてることや創作を載せてみようかと思っています。 ヘッダー写真は、自身で撮った太平洋クラブ美濃里16H。

マガジン

  • 【ノアール小説】 es

    2006年の作品。 キャバクラのキャスト、ホスト、キャストに入れ上げるサラリーマンの関係を軸にした一種のノアール小説ですが、キャストとサラリーマンの自分探しの一面もあります。

  • 歌詞というものについて

    大好きな作詞家の作品を、自分勝手に解釈しています。

  • 東京瘋癲酔人随筆

    16歳のとき、作家、吉行淳之介のエッセイにあった「酒場は男の学校だ」という言葉に出会い、なんだか「わかった気」になり、思春期特有の焦りから、そのまま近所のスナックに行って、幾星霜。  多分、東京に中古マンションは買えるぐらいの金額を夜の街に落としてきました。歌の題名ではありませんが、「東京砂漠」は、ちょっとやそっとの量では決して潤うことなく、私の落としてきたものでは、水溜りのひとつも作ることができませんでした。「それならば」ということで、水溜りがわりに随筆を綴ります。

  • 時事エッセイ

    世の中のことで「ん?」と思ったことを、書いてみました。

  • 安吾と玲香

    2007年、mixiでスタートした掌小説集 キャバクラ遊びが好きな中年男の妄想がたっぷりつまった作品 同じ主人公 同じ設定で どこまで展開できるのか?

最近の記事

【ノアール小説】 「es」 episode_015

 深夜三時だというのに、むせるような暑さであった。岡崎が美林閣につくと、何故か臨時休業の札がかかっていた。 「岡崎さん」  和明から声がかかる。和明のそばには、南と仁も一緒だった。 「臨時休業じゃないか、どうするんだ? それにその二人は?」 「気にしないでください、ただの知り合いです。臨時休業ですが、玲香さんには言ってありますので、中に入りましょう」  仁がドアをノックすると、開いた。 「さあ、いきましょう」  四人は、店内に入った。店内は冷房が効いておらず、外以上に蒸し暑い

    • 【ノアール小説】 「es」 episode_014

       二人一緒か  店からでる姿を、路地から見ていたのは岡崎だった。  あれ以来、スプレンディに行かなくなった、いや、行けなくなった岡崎は、店の前で史子を待つことにしたのだ。連絡する、と言いながら、史子からはメッセージも電話もなく、こちらから電話すると、着信拒否になっていた。そこで、史子と話をする機会を作ろうと考え、今日、初めてそれを実行したのだ。  二人一緒じゃ、話ができないな  それでも、二人の後を追いかけようとした。二人は、すぐそばの喫茶店に入った。ガラス張りの喫茶店をのぞ

      • 歌詞というもの#5ー松本 隆5

        「しあわせ未満」太田裕美/作詞:松本 隆 20才まえ ぼくに逢わなきゃ 君だって 違った人生 白い夏 裸足の君に 声かけて名前きかなきゃ良かったよ ついている奴 いない奴 男はいつも2通り はにかみやさん ぼくの心の あばら屋に住む君が哀しい しあわせ未満 しあわせ未満 あー 君は連いて来るんだね あどけない君の背中が 部屋代のノックに怯える 水仕事 指にしもやけ アパートも見つからなきゃ良かったよ 棘のあるバラ れんげ草 女もそんな2通り はにかみやさん 家柄

        • 歌詞というもの#4ー松本 隆4

          「東京メルヘン」木之内みどり/作詞:松本 隆 もうじきに もうじきに 春が来るんですね* もうじきに もうじきに 春が来るんですね あなたにとって私など ただの心の道草でしょう さむいポッケで二人の手 暖めたのもおとぎ話ね 冷たい人ね くちづけてても 肩越しに遠くを見てる どこか乾いたあなたの胸を 涙でそっとぬらしましょうか もうじきに もうじきに 春が来るんですね 恋人達の街角を 耳をおさえてただすりぬける あなたの腕に抱かれてた 想い出だけにおびえる私 冷たい

        【ノアール小説】 「es」 episode_015

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        • 【ノアール小説】 es
          16本
        • 歌詞というものについて
          5本
        • 東京瘋癲酔人随筆
          10本
        • 時事エッセイ
          1本
        • 安吾と玲香
          10本
        • 読後感想
          1本

        記事

          歌詞というもの#3ー松本 隆3

          「白い港」大瀧詠一/作詞:松本 隆 心の片隅 何かがこわれたよ 青空が眩しい 港の カフェーの椅子で ぼくはふと 眼をふせながら 腕統計巻いた セイルをおろした 無数の帆柱が こわいほど綺麗だよ 離れて 生きてみようと 違う船 選んだ君に こだわりもないさ スーツケースくらい 自分で持つと 君はいつも強い 女だったね 港の カフェーの椅子で ぼくはふと 眉を翳らせ 優しさを破く 青空が眩しい かもめが 波をかすめる 触れもせす ぼくをかすめた 君に似ているよ 帽子

          歌詞というもの#3ー松本 隆3

          【ノアール小説】 「es」 episode_013

           その頃、和明と仁は、池袋のカラオケボックスにいた。 「お前、無茶しすぎだよ、仁。どうするんだよ、こんなことして」  二人の目の前には、アタッシュケースに入った1キロの覚醒剤が置かれていた。 「いつまでも田淵の言いなりになんかなれるか。あぶない橋は、俺らばかりが渡って、自分は、家具屋のオーナーだ。だから、コインロッカーからこいつを取り出した時、ふけようと思ったのさ。このあたりで、ひと山当てて、男になるんだよ。南さんが、ケツもってくれるから、大丈夫だって」 「南さんって、信和会

          【ノアール小説】 「es」 episode_013

          【ノアール小説】 「es」 episode_012

           岡崎は、自宅に戻っていた。  どうしてこうなったんだろう  岡崎は、あきらめきれなかった。真由美を好きだという気持ち、そして、今まで応援してきたこと。これを否定するは、自分を否定することと等しいと岡崎は思った。  きっと、会ってくれるはずだ。もっと、ちゃんと伝えれば  岡崎は、空になった貯金通帳を見ながら、伝えるすべを考えていた。  カイザーに行くと、和明はいなかった。 「玲香さん、いらっしゃいませ。今日は、大輝さん、来ないみたいですよ」  麻菜の担当である遼介がいう。

          【ノアール小説】 「es」 episode_012

          【ノアール小説】 「es」 episode_011

           史子は、田淵のベッドで意識が覚めた。いって意識を失ったあと、そのまま眠っていたようだ。見回しても、田淵はいないが、バスローブとタオルが準備されていた。その上に、メモが置いてあった。 『仕事で出かけます。鍵は勝手にしまるので、心配しなくても大丈夫』  メモは続いている。 『君はちゃんと存在しているんだ。存在していることを疑って、自分を探してはダメだよ、寂しくなるだけだ』  田淵のメモは、そこで終わっていた。  八月に入り、猛暑が続いた。テレビのニュースキャスターが、記録的

          【ノアール小説】 「es」 episode_011

          【ノアール小説】 「es」 episode_010

           まだ、一時過ぎだが、今日は業務終了だ、飲むぞ、と田淵は言って、寿司屋にはタクシーで出かけた。つれて来られた店は前にまりあが言っていた、世田谷の住宅地の中にある、かなり先まで予約の取れない一日に数組しか客を取らない店だった。その日の仕入れで出す物が決まるその店では、メニューはなかった。 「本当は好きなんだろう」  と田淵から勧められた日本酒は、のど越しといい、鼻腔に拡がる香りといい、今までに飲んだことないものだった。それでいて、変に自己主張が強くなく、寿司にマッチする。 「お

          【ノアール小説】 「es」 episode_010

          歌詞というもの#2ー松本 隆2

          「涙のステラ」南佳孝/作詞:松本隆 ステラ 映画がはねたなら おまえを家まで 車で送る ステラ 星影の瞳 俺を虜にして離さないのさ 人が言うほどには遊んではいないさ 今はおまえひとりが 俺の全てさ ステラ 横なぐりの雨 ワイパーの向こうで 雨もにじむよ 人が言うほどにはクールでもないさ おまえに冷たくされりゃ胸がいたくなる ステラ 最後のお願いだ キスし終わるまでは 眼を閉じててくれ 主人公の男は、少年でなく、青年、もしくはそれ以上の年齢。 20代にも染みた歌詞

          歌詞というもの#2ー松本 隆2

          歌詞というもの#1ー松本 隆1

          「詩」はよくわかりませんが 「歌詞」に心を奪われることが多いです。 「COOL」南佳孝/作詞:松本隆 俺をわかってくれなくていいさ 心の影なんて 読める方がおかしいよ 髪を変えたら 綺麗になったね 前の方がずっと 好みだったけど アルトサキソフォン 泣くみたいに 淋しい夜は 愛もなしに抱きたがる 男にはなれないさ 俺をわかってくれなくていいさ 明日の夢なんて 壁にかいた落書きさ 松本隆は、いいですよね。 こういう「男の独りよがり」は胸に染みます

          歌詞というもの#1ー松本 隆1

          【ノアール小説】 「es」 episode_009

          「玲香さん、お願いします」  待機席の史子に声がかかる。 「ご指名の岡崎さんがおみえです」  今日、出張から帰ってくるんだったんだよね、成田から真っ直ぐきたのか  テーブルにいくと、ニコニコした岡崎が座っており、今やおみやげの定番となった免税店の袋に入ったシャネルのチャンスを手渡される。 「成田から真っ直ぐ来てくださったんですね、うれしいです」 「玲香ちゃんの顔が見たかったし、大事な話もあるんだ。とりあえず、いつものモエと赤ワイン・・・いや、モエじゃなくて、あのピンク色のシャ

          【ノアール小説】 「es」 episode_009

          【ノアール小説】 「es」 episode_008

           二人が美林閣につくと、楽が現れた。 「いらっしゃいませ、今日はおともだちいっしょですね」  史子は、あれ以来、何度か岡崎と同伴で来ていた。  注文が終わったところで、麻菜が切り出した。 「中国語オヤジ、パワー全開って感じじゃん」  今週から史子は夏休みに入っていた。それにあわせ、出勤を週五日にしたのだが、岡崎は全ての日に、スプレンディに現れている。 「引っ張るって、決めたからね。でも、最近、ちょっとうざくて」  最初の頃の岡崎は、一人で、三国志や中国の話を延々としているだけ

          【ノアール小説】 「es」 episode_008

          【ノアール小説】 「es」 episode_007

          「玲香さん、お願いします」  ヘルプでついて、その場で場内をもらったテーブルにいる玲香に声がかかった。  今日は、来店予定の客はないはずだけど  史子は学生ということもあり、出勤も週三日から四日程度である。早上がりすることもある。店側はもっと出勤を増やしたいようで、担当マネの青木からは、しばしば懇願されている。しかし、単位など落としたら宮城につれ戻されることがわかっているので、史子は大学を優先していた。熱心な営業もしないタイプであることも重なって、指名客はそう多くないが、太い

          【ノアール小説】 「es」 episode_007

          【ノアール小説】 「es」 episode_006

          「カイザー、やっぱパス?」  営業終了後の更衣室で、史子は麻菜に声をかけられた。 「ごめんね、なんかつかれちゃって」 「中国語オヤジに変な病気移されたか? ってか、あの田淵さんのテーブルにいたら疲れるよね」 「帰って、寝るよ。大輝君に、それから遼介君にもよろしく」 「じゃ、おつかれ」  本当なら和明に問いただしたいところだが、カイザーで訊くわけにもいかない。史子は、思案しながら店を出て、携帯をみると、和明からメッセージが来ている。 「おつ、今日は仁のところへ行くから、帰れない

          【ノアール小説】 「es」 episode_006

          【ノアール小説】 「es」 episode_005

           その日、岡崎はいつもの倍、店に滞在した。その上、 「あれって、シャンパンでしょ。初同伴の記念に飲みたい」  などと言いだし、モエを頼もうとするのを史子がなだめ、カフェ・ド・パリを注文させた。  そんなにいきなり飛ばされても困る  会計は、当然、いつもの三倍以上だったが、ニコニコしながら岡崎は帰っていった。  岡崎を送り出し、トイレに向かう途中で、史子は、まりあとすれちがった。 「岡崎さん、いいお客さんになりそうで、よかったわね」 「谷田さんのテーブルで、まりあさんに、うまく

          【ノアール小説】 「es」 episode_005