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【#0から保育】 第9回 保育とキャバとシングルマザー(前編)

連載説明

私とマミ(仮名)は小・中学校の9年間を同じ校舎で過ごしていたが、一度も同じクラスになったことはない。それでも学童や部活で仲良くなり、よく一緒にくだらない話をしながら帰り道を歩いた。

そんなマミと久しぶりに再会したのは成人式の時だった。保育の短大に通っているという彼女は白とピンクの振り袖を着て、お腹のあたりが少し膨らんでいた。

あれからさらに4年半。取材の依頼をすると、マミは息子のケンちゃん(仮名)を連れてやってきた。現在はシングルマザーとして子育てをしながら、保育園で働いているという。

一時期は保育のパートとキャバクラをかけ持ちしながら子育てをしていたというマミ。その経緯や、保育の世界について今思うことを聞いた。

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―シングルマザーになって始めた
 保育とキャバのダブルワーク

小川:成人式ぶりだね。

マミ:そっか、あの時はまだケンちゃん生まれてないんだ。

小川:お腹大きかったよね。

マミ:そう、お腹の中にいた。振り袖むりやり着たもん。

小川:ケンちゃんは今何歳?

マミ:4歳。21の時に産んだ。成人式が1月で、その年の4月だったね。うちも4月生まれだから1週間くらいしか違わない。忘れられちゃうけどね、誕生日はケンちゃんがメインだから(笑)。

小川:今マミは保育園で働いてるの?

マミ:うん、今は保育園の正社員。ケンちゃん産んでから1年間は実家で子育てして、そのあとケンちゃんを保育園に入れて、それから今の園で最初はパートで働き始めた。うち結婚してないから。その時はまだ親の扶養内だったから、それを超えないように。で、プラスで副業というか……日払いで働いてた。

小川:ダブルワークだったんだ。

マミ:そう、普通のバイトだと換算されて103万の上限超えちゃうから、うちはずっとキャバ(キャバクラ)やってた。キャバならその日に現生で手渡しだからね。保育園は時給1200円で、週5フルで入ると扶養の上限超えちゃうんだよね。

小川:超えたら超えたでやっぱりキツいのかな。

マミ:稼げればいいけどね。でもパートだからボーナスもないし、税金でどこまで持ってかれるか……。だから保育園は扶養を超えないくらいで働いて、それ以外の日は朝キャバ(朝に営業しているキャバクラ)やってた

小川:朝やってたんだ。

マミ:うん、夜は子ども見ないといけないから。だから朝ケンちゃんを7時半に保育園に預けて、そこから隣の街まで行って8時くらいから朝キャバで働いてた。

最初は朝キャバやらずに、保育のパートを短時間で週5でやってたりもしたんだけどね。それで午後は早めにケンちゃん迎えに行ってダラダラするみたいな。でもそれだと時間がもったいないなって思って、週2〜3日で朝から夕方まで保育園で働いて、残りの2〜3日は朝キャバで午前中だけ働いてた

小川:キャバの仕事ではどれくらい稼げてたの?

マミ:お客さんの入りによるかな……。多い日は朝8時から12時まで入って、4時間で1万円とか。保育だと1日フルで入っても1万いかないけど。キャバは時給にプラスして、お酒が飲めたらバック(加算されるお金)がもらえたり、指名がきたら指名料がもらえたりもする。

小川:朝の時間帯でもお客さん来るんだね。

マミ:お客さんは同業者が多いかな。夜キャバとかガールズバーで働いてるボーイたちが来るんだよね。朝キャバが終わったらそのままお客さんと飲みに行ったり、買い物行って何か買ってもらったりとかもしてた。

―「結婚するはずだったんだけどね」
短大在学中に妊娠が発覚して

小川:ケンちゃんが生まれた最初の1年は保育もキャバもしてなかったの?

マミ:何もしてない。実家にいた。就職もしてなかったから。

小川:もともとは保育の短大に行ってたんだよね。

マミ:そう、高校卒業して短大行って、2年の9月くらいに妊娠が発覚したんだけど、つわりとかほとんどなかったからそのまま普通に授業行って卒業した。卒業式はさすがにお腹大きくて袴着れなかったけど(笑)。まあ色々大変だったけど、まだ実家があったからよかったよね。

小川:相手のこと聞いてもいい?

マミ:うちが大学1年の時に働いてたキャバクラの店長で、3人くらい腹違いの子がいる(笑)。結婚するはずだったんだけどね。妊娠が発覚してからも一緒に働いてたんだけど、お腹が出てきてもうキャバは無理じゃない?ってなって。それでも時々会ってたけど、まあ生活の時間帯が真逆だから……。相手は夜の仕事で、うちは昼間に学校行ってて。それで会わなくなって、でもお金だけずっともらってた。

小川:お金は今でももらってるの?

マミ:うん、今ももらってる。仲良かったころは何十万とかもらってたけど、縁切ってからは養育費だけ。最初は結婚できるまで待ってるつもりだったんだけど、うちの親も「もういいんじゃない?」って言ってるし、実家でいいやってなって。それで養育費だけ振り込むように話して縁切った。一応まだ振り込まれてるよ。

小川:養育費はいくらくらい?

マミ:今は月5万。でもほら、普通養育費って書類を書いて契約したりするけど、それをやってないからいつ切られるか……。

小川:今はもう会ってはないの?

マミ:会ってはない。ケンちゃんも父親とかよくわかってないし。でも写真だけは見せたことあるよ。全然似てないけどね、要素ゼロ(笑)。

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―初任給手取り17万
残業30時間の職員も

小川:シングルマザーとして育てていくってなった時はどんな心境だった?

マミ:うーん……まあ、うちはそんな深く考えてないかな。次探そう、みたいな(笑)。今も探し中。

小川:そっかー。出会いはあるの?

マミ:ないね。職場にも男はいるけど、嫌だもん、保育士は。給料安いから。園長とかになればまだいいけど……。

小川:給料は、正社員の初任給でどれくらいなの?

マミ残業しなかったら手取り17万くらい。先月は残業10時間弱しても18万8千円だった。残業を20時間くらいしてやっと20万超える感じかな。でもケンちゃんのお迎えもあるからそんな時間ないし。

小川:それはキツいね……。

マミ:時間に縛られてない人たちは、残業が月30時間とかの人もいる。

小川:残業の時間はみんな何をしてるの?

マミ:書類を書いたり、行事前だったらその準備をしたり。でもうちはケンちゃんのお迎えが18時30分までだから、残れても30分とか1時間とか。お迎え遅れると延長料金かかっちゃうし。

小川:自分の職場に自分の子どもを預けることはできないの?

マミ:認可の保育園はだいたいできないね。だから同じ地域の別の園に預けてる。

―夢だった保育士
 「こんな辛いんだ」

小川:保育の世界には昔から興味があったの?

マミ:それしか見てなかったよね。親も保育士だし。小学校の自由研究でもママの保育園に体験に行って、写真撮ってまとめたりしてたし。将来の夢を書くときも、だいたい保育士って書いてた。でも短大入って「あ、ちげーな」って思ったけどね(笑)。

小川:なんで?

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