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ハグが苦手なイタリア人、アニメをみない日本人


これは私が大学生だったころの出来事です。
当時の私は、外国語の授業を取ることにハマっていました。
といっても、「自己研鑽のために…」などと高尚な目的があったわけではありません。
単に、外国語を勉強することが好きだったのです。

中学高校と英語を勉強し、ラッキーにもそれが楽しいと思えたことや、
自分の母語である日本語、広く言語に興味があったこともその要因でしょう。
勉強を始める前はさっぱり意味がわからない文字の羅列だったものが、
勉強が進むにつれて語をみつけられるようになり、文法によって意味を見出せるようになり、と
だんだん情報を得られるようになっていくのが、(喩えとしてはよくないですが)暗号解読のような感覚で楽しかったのです。

幸い私が通っていた大学では、さまざまな言語の入門授業が開講されていたため、
私のような言語学習ジャンキーにはまさに夢のような場所でした。
(とは言いつつも、単位取得を目指すため現実的なコマ数に抑えてはいました)

その中で、イタリア語の授業を受けていたときのことです。
先生はイタリア出身かつイタリア語ネイティブの方で、
日本語が堪能な方だったため、日本語でイタリア語を教わっていました。
授業はガツガツ文法や語彙を暗記する方針ではなく、
イタリアの風土や文化の紹介を主軸に置いたものでした。

その中で、先生は言いました。
「私はイタリア人だけど、スキンシップが嫌いです。特にハグ」

イタリアの人は日本に比べてスキンシップが多いとよく聞いていたし、
そういう文化だと思い込んでいたので、この発言は目から鱗でした。
子どものころから、親戚のおじいさんおばあさんには特に熱烈なハグをされていたそうで、
「自分はスキンシップが好きじゃない」と気が付くまでに苦労しただろうな…など、いち受講生ながら考えましたね。

そんなことはすっかり忘れて、これは昨日のことでした。
アニメ好きが高じて日本語を勉強している留学生に、質問されました。
「先生の好きなアニメは何ですか?」
私の答えはこうです。
「私は日本人で、日本語の先生だけど、アニメはあまり見ないんです」

このとき、私は大学時代のイタリア語の先生の気持ちを本当の意味で理解しました。

ハグが嫌いなイタリア人、アニメを見ない日本人、それもいいよね。

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