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No.535 小黒恵子氏の随筆-2 (木曜手帖から)

こんにちは。小黒恵子童謡記念館です。

 今回は、小黒恵子氏の作品(随筆) をご紹介します。
「木曜手帖500号記念号」に寄稿された随筆をご紹介します。木曜会について、次の様な説明が載っています。

 ・木曜手帖を半年分以上お申し込みくださった方は、木曜会会員と認めます。会員は、詩作品を投稿なさることができます。
 ・木曜会の詩の勉強をする会は、毎週火曜日と土曜日サトウハチロー先生宅において、午後六半から開いております。

「木曜手帖」より


1997年(平成9年)10月25日発行 木曜手帖500号記念号

わたしが木曜会に入った時
                          
小黒恵子
「木曜手帖五〇〇号」おめでとうございます。
私が木曜会に入った頃、童謡に就て僅かな知識しか持っていませんでした。
然しサトウハチロー先生の名声と作品は、幾つか知っていました。「リンゴの唄」「めんこい仔馬」「長崎の鐘」「小さい秋みつけた」等々でした。
児童文学関係の本や、童謡の本も殆ど手にした事もなくお粗末のかぎりでした。
木曜会に入るきっかけとなったのは、週刊新潮の表紙絵を創刊号から死去される迄、毎週かいていらした谷内六郎氏が、新潮社の人に聞いて下さったのが出逢いの始まりでした。
当時の木曜会は、毎週二回の勉強会に、毎回二〇名から三〇名ほどの会員が出席していました。
私は作品がなかなか書けず、週一回出席するのがやっとでした。
木曜会に入って一年半ほどしたある日、私の愛犬が十一歳で他界しました。
その時「もう帰ってこないんだね」と言う愛犬に捧げる詩を書きました。
勉強会に久しぶりで、サトウ先生が顔を出され、その時、「小黒くん、これなんだと。詩は心なんだよ。」とおっしゃいました。その詩は私にとって初めての一段組となりました。
詩をやめてしまおうーと思っていた時、サトウ先生の暖かいお言葉で開眼し、詩の世界を歩き出す心固めとなりました。
あれから三十有余年。軽い気持ちで入った詩の世界でしたが、人生の厳しさも悦びも悲しみも苦しみも紡ぎ乍ら、いま詩をライフワークとして生きがいになっています。
物を書くと言うことは、大変苦しいことですが、人生を楽しく彩ってくれます。
もしもサトウ先生と木曜会との出逢いがなかったら、どんなにか淋しい人生だったろうと思います。
雲の流れ、風のそよぎ、野に咲く小さな草花や虫たちに心をよせ、五匹の動物家族たちの表情や仕草に、心のベルが響きあう幸せを感じています。
サトウ先生は、みるからに威風堂々として、豊かで暖かい希望の「大きな木」という印象でした。
サトウ先生の「大きな木」の小さな小さな種子の一粒として私は、次代をつぐ子供達に、緑の自然と生物への愛の心を、童謡を通して伝えたいと思います。
サトウ先生亡きあと、木曜手帖を立派に続けられ五〇〇号の快挙を遂げられた、宮中雲子、宮田滋子、斉藤貞夫氏と、木曜会の皆さま方に、心からの拍手を贈ります。

1997年(平成9年)10月25日発行 木曜手帖500号記念号
もう帰ってこないんだね イメージ画(当館スタッフ作画)

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 次回は、「詩」をご紹介します。(S)

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