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詩のご紹介13 孤独(小黒恵子作) ~ユトリロの絵のなかで

こんにちは。小黒恵子童謡記念館です。
 今回の詩は、「孤独」です。

「詩集:ユトリロの絵のなかで」については、下記をご覧ください。

 まずは「目」から。

孤独
~ユトリロの絵のなかで 「花衣」より~
小黒恵子作

枯葉が舞う
パリの 路地裏

今日のわたしには なぜか
華やかな シャンゼリゼ通りは
似合わない

真珠いろの 空のせいなのか
久しぶりに見た
不吉な 夢のせいなのか

わたしは
コートの 衿を立てて
知らないパリの路地裏を あるく

かすかにしみこんだ
路地裏の匂いが
枯葉の匂いが
枯葉の音が
わたしの心を 柔らげてくれる

ふと見上げる
朽ちかけた テラスに
置きざらしの ゼラニュームが
最後の炎を 秋風の中に燃やして

わたしの先を 杖にすがって
とぼとぼ歩いて行く 老婦人

なぜか
後姿には
人生の蔭のドラマが ひそんで

わたしは ふと垣間見た
やがてくる老いの日の わが姿を

パリの 路地裏に
枯葉の秋は 一人深かまり行く

次に、「耳」からお聴きください。

 朗読:大森寿枝

 最後までお読み、お聴きいただき、ありがとうございます。
 次回の詩は「幻の笛」です。(S)

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