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どん底の先にあるのは希望。シェイクスピア『リア王』

たまに来る。昔の文学を読みたい熱。

今回は海外文学を読んでみようと思い、苦手なシェイクスピアに挑戦。彼の作品は戯曲だから、本は台本のように書かれているとのこと。舞台やミュージカルになっているものが多く、私の好きじゃない分野だから敬遠していた。

でも一歩踏み込んで、シェイクスピアの『リア王』をまんがで読んだ。難しい文学は、自分が取っかかりやすそうなものを読むようにしている。

読んだ感想を先に言うと、自分の好きな作品ベスト10に入るくらい良かった。読まず嫌いはダメだなと痛感。

Kindle Unlimitedで読める。

この「まんがで読破」シリーズは面白い。情景、ストーリー、登場人物の雰囲気も分かりやすい。まんがだから30分ほどで読み終えて、2回も読んでしまった。

あらすじをザックリ言えば、リア王が3人の娘に資産相続するのをキッカケに、勘違いが勘違いを生んで悲劇が起きる。権力争いが起きて誰も幸せになれない。

どこにでもある物語だけど、自分の予想の斜め上をいく、容赦のないストーリー展開が衝撃だった。今も長く語り継がれる理由がよく分かる。シェイクスピア、天才だ。

読後1時間ずっと「すごい」とため息をついていた。『人間失格』や『阿Q正伝』を読み終えた後もこんな感じだった。こういう時こそ、「考えさせられる」という言葉を使うのが正しいんだろうな。

『リア王』は物語にのめり込むというより、この作品が伝えたいことに思いを馳せるのが楽しいと思った。

過度に求める権力、お金、情欲は本当に人を醜くする。

リア王がどんどん惨めになっていくのが辛かった。結局、富や名誉なんて当てにならない。みんなが歪み合い、疑い合う。でも話し合う気はない。リア王に忠誠を誓った娘と家臣が悪者扱い。

あとは、欲深いもの同士が権力とお金を巡って争う。醜さ、汚さ、愚かさなど、人間の本質がよく見える作品。良く言えば、人間らしい。現代の遺産相続にも、似たような争いがあるんだろうな。

この物語は、悲劇を超えて喜劇にも思えた。そして、ほんの小さな希望みたいなのも見える。

「人間、どん底まで落ちてしまえば、常に、在るのは希望だけ。不安の種は何も無い。」

目が見えなくなって、肩書きも富も手放してやっと、大切なものに気がつくなんて皮肉だ。

この物語の登場人物は、悪に染まりきった者か純真無垢な者のどちらか。

リア王
ワガママ。もう少し大人しくしとけば、娘たちに疎まれなかったのに。言葉だけで愛情は推し量れないよ。いくらでも嘘をつける。手のひらを返されては返す。

リア王の長女と次女
親のすねかじりのくせして偉そう。

リア王の三女
純真過ぎ

エドマンド
登場人物たちを引っ掻き回す役。野心強すぎ。やり方は姑息だが頭はいい。彼の父親と異母兄は疑うことを知らないため、簡単にエドマンドの計画通りに。父と異母兄よ、すぐ信じる前に本人に確認しよう。

気持ちいいくらいに全員都合良すぎ、極端すぎ(褒め言葉)。一番振り回されたのは家臣な気がする。お疲れ様です。

久々に、「noteに感想を書きたい」と思える作品に出会った。心に残るものを見つけると、本当に読書が楽しい。自分の知らない世界を知った瞬間だ。そいういものに出会えるのは多くないから、大事にしたい。

人をカタチ作っていくのは、味わいのある物語と経験から考えたことなのかもしれない。

次は、日本語訳で文字だけの本で『リア王』を読みたい。その後は英語でも挑戦してみたいな。

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