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女装の派手モード

気まぐれな性格もあり、時折無性に派手な格好をしたくなる。
日頃無地のシャツなどを着て過ごしていても、あるとき「どこで買ったんだ」と言われるような突飛な柄や色のシャツなどを着たくなるときがあるのだ。
特段嫌なことがあっただのストレスがたまっているだのという理由があるわけではない。単純に「今日はちょっと”こっち”で行くか」という気持ちの針が「派手モード」に振り切れるのである。

しかし、派手な女装をするときはそれ相応の化粧をしなければならない。
普段「化粧が薄すぎる」だの「もっと目元や口元を化粧したほうがいいよ」などと言われ「うるさいな」と思う私だが、このときばかりは少し時間をかける。これまで使う機会が全くなかったようなアイシャドウやらもガンガン使うし、アイラインもいつも以上に長めに引く。
そのため派手顔メイクは私にとって、化粧品の整理をする上でも役立っているような気がする。あくまで気がするだけなのだが。

派手顔化粧をしているときにいつも陥るのは、段々自分が元の顔に戻れなくなっているような気分になってくることだ。
道に迷う感覚に似ている。
「こっちかな?うん、多分こっちだよ」
と思いながらますます道に迷い自分の進路がわからなってしまう感覚だ。
顔が変わっていくにつれて、「こんな感じかな?いや、まだ行ける。もうちょい進んでもいい気がする。」という手探り感と冒険心の両方をかきたてららえるのだ。

普段化粧をするときは割と安全運転がモットーである。
「あ、これ以上やったらバランスが悪くなるな」
と思いながら適度にブレーキを踏みながら化粧を進めている。
ただついつい調子に乗ってアクセルを踏みすぎてしまうと、
なんだか部分的に化粧が濃くなってしまったら、とてつもなく目元が誇張されてしまうので、「やっぱりやらなきゃよかった…」と猛烈に後悔させられるのだ。
派手顔化粧の時は、その時の感覚を一切無視できるところが大変良い。
アクセルを全力で踏んで高速道路を快走している感じだ。
気分がよくなったら「だいたいもっと派手な人なんているんだから、もっとやっちゃえ」とさらにギアを上げるときさえある。

このように派手顔仕様の際は、ウィッグも同様に派手なものを使う。
シルバーとブルーのメッシュやら、金髪に茶色のメッシュだとか、2色ウィッグはデフォルトである。
こんな時に通常のウィッグなんてつけていたら、それこそ浮きかねない。
既に化粧によって気持ちのギアが上がっているので、躊躇なく派手色のウィッグをつける。

もはやそこに顔の原型はない

ちなみに派手モードの時には、自分の特徴にも気づかされるときもある。
私はいつも派手モードの時ほど、
「鷲鼻でよかった」
つくづく感じてしまうのだ。
よくドラッグクイーンが鼻筋に線を入れて強調しているが、それをせずに鼻筋が強調できるのは派手モードだからこそ活かせる個性である。
このように、自分の特徴やコンプレックスといったものも全てプラスに変えられるときがあるのも派手モードの特徴だ。

あれがだめ、これが失敗した、などというのを全て無視し、最も明るく陽気で清々しく女装ができる状態なのかもしれない。

しかし問題は、派手顔でどこに行くかという問題だ。
特にここ数年、女装イベントにおいてもご無沙汰な私にとっては、もっぱら、ライブ用の衣装になっている。
せめて女装の機会は減っても、開放的な気分になるために派手柄のシャツでも着て出かけることは心掛けたい。


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