読書レポート(再開) 転職2.0 村上臣さん

長らくさぼりにさぼっていた読書レポートを再開します。今度はちゃんと習慣化して継続できますようm(__)

転職2.0

リンクトイン日本代表の村上さんが書いた転職2.0。転職市場で働いているものとして、今転職市場がどうなっているのか知りに行こうとぽちりました。普段仕事中に感じていることが改めて書いてあったり、因果関係がわかったりとても面白かったです。HR業界で働いている方はもちろん、これから自分のキャリアをどうしていこうかと悩んでいる方にとって良書かと思います。

終身雇用の時代、転職はわりとネガティブなもので、現職で活躍できなかった人の逃げの選択肢、みたいな位置づけだったようだ。確かに一生会社が面倒みるよって言ってて、総合職として様々な経験をさせてくれて、年次があがれば昇進し・昇給し、やめるときには退職金がどーんともらえる。ただしこれならあまり辞める理由はないように思う。

ただ、そういう時代はもう終わりそうで(終わってて?)有名な上場企業が社員に対して早期退職を促したり、年功序列的な制度を廃止するっていうニュースも記憶にあたらしい。やはり、働くということの前提が変わってきているようだ。

以前は、転職はしても1回くらいだったので、その1回に全力を注げばよかった。すごく乱暴に言えば、面接でうまいこと言ってそこさえ突破してしまえばOK。ゆえに業界や企業研究をちゃんとして面接を突破することが目的になっていた(その限りではない人もいたとは思うが)

今後は企業寿命<労働寿命なので何回か転職するのが当たり前、しかもSNSやリファレンスチェック系のサービスもあるので「ハッタリ」が通用しにくい。1回の転職成功を目的にしていた転職1.0に対して、転職2.0は自己の市場価値最大化、を目的としている。転職は目的ではなくて手段という考え方だ。自分の市場価値を高めれば、転職はトレードオフではなくなる。望み通りの生き方を実現することができる。

タグ付けと発信

よい転職を実現するために大切なことがいくつか書いてあるがその中の一つがタグ付けと発信。自分はこういうことができるよーと発信することだ。
強み、とかそういう言葉に置き換えてもいいかもしれない。
そんなこと言っても「自分の強みってなんだろ・・」「そんなに誇れるものなんてないよ・・」みたいな人も実は結構多いのではなかろうか。

そういう時はポジション、スキル、業種、経験(実績)、コンピテンシーで自分の経験を考えてみるといい。例えば僕だと、ポジションは「法人営業」「カスタマーサクセス」スキルとして「チャレンジャーセールス」業種は「インターネットサービス」「HR」、通常40%の成約率を半年で80%に引き上げた「経験」、傾聴、継続などが「コンピテンシー」にあたる。これらを単品でみると普通に見えるが掛け合わせると自分らしいタグになっていく。自分の強みってなんだろうと悩んでしまう方もいると思う。そういう時はこれまでやってきたことを職務経歴書に書いてみたり、同僚や友人に自分がどう見えているのかヒアリングしてみるといい。僕は人材エージェントの方に壁打ちをさせてもらったことがあるけど、とても良い経験となり継続的にお付き合いいただこうと思っている(中には、個人のキャリアとかどうでもよくて、求人紹介に命を懸け紹介フィーを稼ぎたいだけの方もいるので注意が必要ではある)

このタグを「発信」することも大事で、「継続」することであの人はこれに強い、と認知してもらえるようになる。そうなるとスポットで仕事の相談が入ったり、市場にまだ出ていない求人紹介が入ったりするようになる。タグを発信し特定の分野で第一想起される人を目指すということ。

タグを取りにいく・創りにいくという感覚が大事なのだと思うが、ではどういうタグを選択すればよいのか?「〇〇という商品の営業一筋20年」これはとても素晴らしいことだと思う。ただ、〇〇という商品が■■という商品に取って変られたら・そもそも需要がなくなったら・・と考えると少し危険なのかもしれない。

例えばビックデータ、DX、などよくニュースで見かけるようなキーワードに付随するタグは「市場に求められているタグ」と言い換えることもできる。こういう考え方で仕事や役割を取りにいってもいいのかもしれない。

人材紹介会社はどう選ぶ?

日本には約2万社の人材紹介会社がある。これは国内のコンビニの数とほぼ同数。人材紹介会社は大手・総合型とブティック型に大別することができる。前者はリクルートやパーソルなど、CMなどでお馴染みのああいう会社だ。後者は比較的小規模で事業を運営しており、大手に比べると取り扱う求人数は少ないが、その代わり特定の領域に強みを持つケースが多い。例えばシリーズA前後のベンチャー企業紹介に強み、とか金融業界に強い、とか営業職特化型とかそんなイメージだ。

まず絶対にお勧めしないのは、案件紹介マシーンみたいな人。有料職業紹介事業は求人企業からの紹介フィーのみがマネタイズポイントである。これはもともと経営コンサルタントが企業を支援するときに、じゃあその戦略を実行する人を連れてきてよ、というニーズに応えはじめたのが起源だ。なので人材紹介会社の人は企業の採用課題に応え、採用充足することが最初の目的となる。この構造から、求職者のキャリアはさておき採用決定を生み出すことだけに注力する人がいる。別にこれを否定する気はない。そういうビジネスモデルなので。ただ、極端に求職者サイドの都合を無視し、下手な鉄砲数撃ちゃ当たるかの如く10も20も求人を紹介する人、他選考を断らせようとする人、月内だからと、自分都合で乱暴なクロージングをする人も残念ながらいる。こういう人は今後淘汰されていくと思うけど、まだまだいるのが実態。大切な大切な自分のキャリアのためにこういう人は距離をとることを勧めたい。

そういうことしない人、がお勧めできる人材エージェント、になるわけだがもう少し具体的にいくと、個人的には安易に求人紹介しない人・業界やクライアントへの知識が深い人・求職者に指摘できる人だと思っている。

人材紹介会社は採用企業からお金をもらうので上記二つは経済的に考えると合理的ではない。ただ、この合理的でない行動を最終的に成果につなげ企業に価値貢献し、求職者のキャリアアップにも寄与した上で紹介フィーをもらえる極めてバランス感覚のよいエージェントが世の中には存在している。こういう人たちは大体目立たないところにいるのだけれど、こういう人たちほど求職者との接点が増えればいいなと思う。

ただ、求人紹介マシーン系の人も職人みたいな人も、だいたい転職サイトのスカウト機能を使って候補者と会うことになる。見極めはすごく難しいが、誰にでも当てはまるようなテンプレスカウトを送ってくる人は論外。スカウトを読んで、あーこの人は自分のレジュメをちゃんと確認したうえで提案してくれそうだなと思えるかどうか、この感覚を持てるスカウトだったら返信してもよいかも。各転職サイトにはだいたい「ランク」みたいなものが存在しており、ある程度参考にはなるが「良いエージェント」は人によって異なる、「ランク」も完璧な仕組みではない、ということを考えるとランクが低くても自分には合いそう、みたいな判断も大切にしたほうがよいと思っている。

良いエージェントに会えたとして今後は、求職者側の言うなれば「求職者力」も重要になってくる。自分の志向性や経験、実績をちゃんと第三者に伝えることは意外と難しい。ちゃんと伝えられないと、結局何したいかがわからないのでエージェントも浅めな提案しかできず、せっかくの機会がうまく機能しない。「希望の求人を紹介してもらえなかった」「失礼な対応を取られた」みたいなエージェントに対する口コミを結構よく目にする。事実かもしれないが、求職者サイドに要因があるケースも意外とあるんじゃないかと思ったりする。

ちなみに巻末にキャリアの棚卸をするときのタグ分類表が付録としてついているので非常に参考になります。

終わりに

HR業界にいる人、そして今後転職を考える人にとっての非常にわかりやすい教科書のような本だった。個の時代、人生100年時代と呼ばれ60歳で定年できる人はごくわずか、労働人口減にも歯止めはかからず一人一人の主体的なキャリア形成が、壮大に言えば国を支えることにつながる。

キャリアについて、悩まない人はあまりいないと思う。この良書がきっかけとなり一人でも多くの発展的なキャリアが生まれたらいいなと願うばかり。

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