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ブックサンタになった話


子供の頃、繰り返し読んでいた絵本がある。
きのしたあつこさんの『はんぶんあげてね』と、西巻茅子さんの『わたしのワンピース』、なるみやますみさんの『ふうみん池にワニがでた』。どれもとても好きで、大人になったいまも手元に残してある大切な本だ。

なかでもわたしにとってはんぶんあげてねはとても大切な一冊で、余裕がなくなったときやひとに優しくできなくなったとき、かならずひとりで開くことにしている絵本だ。
くまくんのおばあちゃんが焼いてくれたおおきなおおきなパンを、お友達ののぞみちゃんにお裾分けしにいくお話。途中たくさんの動物のともだちに会って、会うたびおおきなパンを半分こにしていって、最終的には抱えるほどおおきかったパンはなくなってしまう。
どうしよう、と眉を下げるくまくんを見て一緒に「どうしよう」と悲しんだことも、そのあとのぞみちゃんとひとりといっぴきでおいしそうにパンを頬張る結末も、何度読んでも大好きな一冊だ。
読後やさしい気持ちになれる、おとなになった今だからこそ沁みるところがある素敵な一冊。その本が廃版になっているのを知ったのが、今日。

わたしが幼い頃読んでいたものだから、そりゃあ廃版になっていても仕方がない。寂しい気持ちで帰ってもう一度本をひらいて、「大切にしよう」と誓った。

https://bp-uccj.jp/smp/book/b551588.html


前置きが長くなったけれど、今日ブックサンタをやってきた。提携の書店で本を購入すれば、クリスマスプレゼントとしてどこかのおうちの子供の手元に本が届くという素敵なシステムだ。
その時に選ぶ本を何にしようか、このサービスを知ってからずっと考えていた。悩んで、一冊ははんぶんあげてねにしようと思っていたのだけれど、どうやらもう新しいはんぶんあげてねをどこかの誰かに贈ることはできないらしい。

紙の本は手元に残る。思い出と一緒に、朽ちるまではずっと。だから紙の本が好きだし、電子化がすすむいまでも、紙の手触りを感じたくて、手元に残したくて、紙の本を選ぶ。場所的な要因で電子にすることも最近は少なくはないけれど、気に入った本はかならず紙のもので揃えるようにしている。

そういうあたりまえのことを、改めて感じた一日だった。

わたしのこれまで生きてきた人生に、本はおおきな影響を与えている。漫画も小説も、エッセイも童話も、ふとしたときに心のどこかに残っていた一文が頭に蘇って、その体験ごと読書がすきだ。
図書室で何度も借りた本のことや、笑ったり泣いたりしながら読み進めた本のことを、きっとこの先も何度でも思い出す。
読書家といえるほどたくさんの本に触れてきたわけではないけれど、好きな本を聞かれてすぐに数冊がぱっと頭に浮かぶくらいには本が好きだ。
はじめて触れる本が、いつかおとなになったとき大切になってくれればいいと思うし、そうじゃなくても一度本をひらいて楽しんでもらえるといいな、と思いながら本を選んだ。

クリスマスまであと少し、わたしが選んだ本は誰の手に渡るのだろう、と考える。
本を好きになるか、絵本を喜ぶかどうかはその子が選べばいいのでどちらでもいい。クリスマスが素敵なものになればいいな、とそれだけ思って帰路についた。

いいことは黙ってやるのがかっこいいと言われるかもしれないけど、素敵な取り組みなので気になる方はぜひ。


あと数冊、ネットの方でも参加しようかな、と考えている。

暮らしている街に二店舗しか対象店舗がなかったので、以前から気になっていたこちらにお邪魔して、ささやかなサンタになってきたのだった。

お店の方がありがとうございます、と言ってくださってとてもうれしい気持ちに。このところずっとネットで本を買っていたのでずらりと並んだ本から一冊を選ぶのも久しぶりで、それも含めて嬉しい一日になった。

本屋、やっぱり好きだなあ。


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