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MONOの話 #6 『春菊の枝』

こんにちは。お昼の春菊です。連載テーマは「物(モノ)」です。毎月、1つの物について書いています。今回で最終回。合併号を挟んだりしたのでお久しぶりの感じですがラストです。大好きな雑誌に少しでも参加できたのが光栄すぎて、若干気合いが空回りした連載になりましたがいかがでしたでしょうか?もし「空回りしてるなあ」とお感じでしたら、それはあなたの想いが他の読者の方とも通じ合っているという事。大丈夫、感覚の共有、出来てます。良かったですね。今回も何卒よろしくお願い致します。

さて、第6回のテーマの「モノ」ですが、今回は…

「春菊の枝」の話。


普段の仕事は本名で活動してるのですが、今回のこの連載に関しては自分の中での初めての試みとして、ペンネームで書いてみようと思いました。理由としては本名だとなんだか恥ずかしかったのと、一晩寝て改めてもう1回考えてみてもやっぱり恥ずかしかったからです。で、誰につけてもらうでもなく自分で付けた「お昼の春菊」という名前、やっぱちょっとまだ恥ずかしいです。まあ、みなさんも私も頑張って慣れるしかないです。

ちなみに「春菊」は家で飼っている小鳥の名前です。その名前をそのままペンネームに転用しました。白文鳥(オス)を1年半ほど前から飼っていまして「春菊」の命名も自分で考えてしました。

動物に名前を付けるのは初めての経験でしたし、カッコいいのから可愛いのまで色々と候補は考えたんですがどれもしっくり来ず、とりあえず「今後、鶏肉を食べる時に頭をよぎるのはやだな」という懸念から、逆に絶対食べることのない苦手な野菜の名前を付けてみました。



「苦手な食べ物の名前をつけよう」という発想を元に、いくつかメモ紙に羅列した他の候補もありました。

牛肉の脂身
魚の白子
三杯酢

比べて断トツ可愛かったので「春菊」にしました。



「食べ物」の縛りも外して「苦手なもの」でいいのないかな?の候補は

寝不足
残業
ローン

比べて断トツ可愛かったので「春菊」にしました。
名前を呼んだら翔んで来るので春菊もたぶん春菊が気に入ってるぽいです。



文鳥を飼うにあたり、自分の中での決め事も作りました。まず「”単身男が小鳥を飼う”」、このワードの迫力だけでなんだかもの悲しく近寄り難いのに、実際に侘しさや小汚さがあってはいけないです。

”部屋はつねに清潔に 極めてオシャレに暮らす” これは第一義に置いてます。周囲の雑音「おい、あいつ、小鳥、飼い始めたらしいよ。いよいよじゃね?」みたいな声にこそならない雰囲気は一掃しないといけないです。じゃないと道連れになった小鳥が可愛そうです。日常から明るい人格・前向きな人生・スタイリッシュ偏向のインテリア造りにも照れとかしない暮らし、を心掛けるようになりました。



もう1つの決まりは”インスタとかに写真をあげない”です。

元々、何をするにも石橋を叩いて理論武装するタイプなので、一応、半年以上かけて飼う前にたくさん勉強をしました。グーグルが擦り減るくらい、ありとあらゆる人の「飼育日記ブログ」みたいなのを読み漁りましたし、動画サイトでも色んな飼い主の色んな動画を見ました。

それこそ飼育日記ブログの更新頻度がどんどん減る飼い主や、細かいですけど「ウチの子、可愛いでしょ?」的な感じで上げている動画の中の飼い主自身の爪が汚くてまずお手入れが行き届いてない感じだったり、ある日突然、更新が途絶えてて「あっ、これ、多分…」と思ったりするのがほとんどだったので、

「雛の時代から育ててます」みたいな事を不要にお知らせする自体、古い表現ですが、その時点で死亡フラグが立つような気がしてなんだか怖い気がしてしまうようになりました。

今はお知らせしてナンボの時代かもですが、写真を公開して「かわいいを共有する」のを飼い主特典と考えるのか、「かわいいを独占する」のを飼い主特典と考えるか、みたいな事もあるんじゃないかと思ってます。正直、フォルダにはもう1600枚くらい写真あるんですけど私だけのものです。

大原則、生き物の「生」を背負う以上、どちらにしろ熱の上下なくフラットに飼い続けたいというか、こちらは三原じゅん子とコアラの付き合いたてから結末までを見届けた時代の人間として(懐かし)、そういう最初が最高潮に盛り上がってる感じは嫌だなあというのもあり、今の所、必要な人以外にはあんまり話すらしないようにしています。

とは言いつつ、かわいいからここに書いてしまいます。




飼う上での苦労とかは色々あるのですが、今回は「枝」のお話をちょっとだけ。

鳥飼育グッズには色んな物がありまして、カゴやエサにいくつも種類があるのはもちろん、鳥にストレスを与えないようなカゴ内の装飾品や鳥用おもちゃ、行きつけのホームセンターには「鳥の止まり木用 枝」だけでワンコーナーあったりします。

「止まり木枝」は要するに部屋やカゴの中に棒を這わせて鳥の足場を作るわけなんですが、長さや形状、太さの違うものやロープ状のもの、ザラザラした爪研ぎ用など材質も色々あって、個体に合うものを選んで定期的に挿し替えたりします。

中には「10㎝くらいの本物の枝をそのまま止まり木用に売っているだけの枝」もあり、お値段で1000円くらいしたりします。いや、拾えるじゃん、こんなの!と思うのですが、よく見ると枝の端にカゴに取り付けられる用の木ネジ加工がしてあってその技術代だったりします。

とはいえ、さすがに「落ち枝にお金を払うのは果たして…」と悩んで、飼い始めた当時「本物枝使用 止まり枝」を試しに自作してみた事があります。今回はその時のお話。下記、その工程です。


(※イメージイラスト)(※後日挿しこみ)


作ろうとしてみて発見がありました。まずは、枝拾いだ!と意気揚々と外に出て「自分って普段、外を歩く時にあまり枝を気にしてないんだな。」と早速、そんな”KI-ZU-KI”を得ました。

1本目に見つけた最初の枝はすぐ玄関前に落ちてました。枝を意識して見ると枝って意外に多いです。街のそこかしこに落ちてます。急ぎ過ぎの現代人の盲点を思い知らされました。

が、用途を意識して「止まり木に適した枝」に絞って気にしてみると、細すぎず太すぎず曲がりすぎず真っ直ぐすぎない枝は中々難しく、黒いボコッとした所が気持ち悪かったり、小虫がやたらついていたり、良い落ちてる枝を探して、結局、街中をうろちょろしました。



なんとなく最終選考候補に残ったファイナリスト3本を持ち帰り、グーグルで「フリマアプリで流木を売って暮らす人のノウハウブログ」を見て手順を調べ、その通りに洗って一晩お湯につけてアク抜きして天日で干して乾かして2日後、

丁度の長さになるようノコギリで切断し、ギザギザしないようにヤスリをかけ、切断面には今度は家庭用ハンドドリルとキリを駆使して縦にネジ穴を開け、ギザギザしないようにヤスリをかけ、合うネジをホームセンターで買い、ナットを取り付け、その金属部分に春菊が触れないように木のワッシャー(ナットに付けるカバーみたいな板)を取り付け、

途中、思いの外、木が硬くてドリルの刃の棒がなかなか入って行かず無理やり押し込んでたら折れてしまったり、ドリルが斜めに入ってて横から飛び出したり、ちょっと休憩のつもりが午後ロードのスティーブン・セガールをフルで観ちゃったり、

枝1本にしてもこれがなかなかのめんどくさい作業で、止まり枝を作るのが初めてだったので研修中時給で換算したとしても、普通に店で買った方が絶対得と思えるぐらい時間がかかりました。


で、そんな素人作業で出来も悪いながら、なんとか形にしていよいよカゴに入れたのですが、結果としては1度たりとも春菊は乗りませんでした。3日間に渡って粘り強く観察したのですが一切近寄りすらしません。全く気に入ってもらえませんでした。嫌味みたいにこれ見よがしに既製品のツルツル綺麗な棒ばかりに乗ります。不味い料理には手も付けない『美味しんぼ』海原雄山みたいです。気品高いオスです。難しいです。



それ以来、「本物の枝の止まり枝」を作るのはやめていましたが、1年半ぶりに今、もう1度挑戦してみようかなという気に今なっています。このご時勢、他にやれることもないし。

趣味「人のいない道を選んではず〜っと下を向いて歩く散歩」です。落ち込んでいるわけではなくいい枝を探しています。どうぞ私を見かけましても心配や励ましの言葉とかはご遠慮ください。いい枝を探しています。


「木の棒を拾って加工して動物に納品する」という、リアルあつまれどうぶつの森みたいな事をしている、今回はそんな最近の暮らしのご報告「春菊の枝」の話でした。

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という事で今回が最終回。白文鳥・春菊の今後の姿は読者の方々も気になりますよね?それはこの連載が好評につき第2弾が決定してお会いするしかないですね〜ぐへへ〜編集長どうですか〜?という投げかけと共に『MONOの話』締めさせて頂きます。約半年に渡って読んで下さった方、また感謝をお伝え出来る機会までしばしのさようならです!拙い文字列にお付き合い下さり、ありがとうございました!



※この原稿は、万が一、マガジンハウス編集部から雑誌『POPEYE』への連載依頼が来たら提出しようと思ってたけど、来なかったから書いてどこにも出してないやつを載せたものです。趣味です。全6回分あります。

※この連載は2014年3月号〜11月号に掲載用に
自主的に書いたものに大幅に加筆修正したものです。


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