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荒ぶり息子リターン

以前からパソコンが欲しいと考えていた。
仕事をするぞ!始めるぞ!と意気込んでいたわたしはとりあえずパソコン買うところから始めようと思ったのだ。

だがしかし。
お金がかかる。
まずは敵を知らねばならない。(いや、仕事仲間だろ)
律儀に店舗に足を運び、今日は見るだけオーラを出しながらお値段(だけ)を何気に見てまわった。
びっくりした。
20万はくだらない。
ちょっといいもの、となったら30万である。
半導体の不足ってこんななの?
それだけでこんなになるの?
かつてのあの輝かしかった日本の半導体はどこへ???(とうの昔に敗れ去っていた)

予算は10万だ。
逆立ちしても(できないが)お金は降ってこない。
今日はこの辺にしておこう。
勇気ある撤退である。
わたしはそのまま家に舞い戻った。


こんな時に頼りになるのは息子だ。
さっそくスマホでタタタタと打ち込む。
良いパソコンない?
しばらく既読がつかなかった。


一週間か10日ほど経ち、ようやく返信がきた。
イニシャルコストかランニングコストか?と聞かれたが意味不明だった。
わかりやすく日本語で言ってくれ。
そしてどんな用途なのかを聞かれた。
専門用語などは使えないので、これができてー、あれができてー。くらいの返事しかできなかった。
合間合間にまったく関係ない話まで混じるのでややこしくなる。
その間、また既読がつかなくなるので長い長い見えないラリーをしているようなものだ。


ちなみに相談したのは1月初旬だ。
2ヶ月経ってようやく、このパソコンを買うというところまで辿り着いた。


先日、わたしは何十回目かの誕生日を迎えた。
息子に電話したが寝ているのか一向に出ない。
しばらくすると折り返しがあった。
悪い、寝てた。
やっぱりね。
なんか忘れてることない?
あー。
息子は一呼吸置いた。
ひとつ老けたってこと?
そーだよ。何も無いんかい。
覚えてたけど、特に何も用意はない。
期待してなかったが、本当に無いらしい。
仕事はどう?
あーまあ、なんとかやってるよ。
ひとりうざいのがいるけど。
どうしてこの会社に入ったのーとかうるせーの。
じゃあ、あなたはどうしてこの会社に入ったんですかって聞き返したら。
そう言うと、あのさ。と息子がため息をつく。
おれも暇じゃないし、第一、聞き返すほどそいつに興味は一切ないからさ。


昨年、鬱と診断されて目の前で崩れていく息子をみていたはずだ。
映画の中のジャイアンになったと言ってたのはもう過去の話。
人にやさしく。
それが戻ってきたと思っていたのに。



すっかり荒ぶり息子が戻ってきていた。
とにかく人にやさしくだよ。
わたしは念を押した。
はいはい、わかってるよ。
まあもう30にもなる息子だ。


荒ぶろうがなんだろうが、生きてれば良い。
元気でやってくれたらそれでいい。
好きなように生きてくれ。
遠くから見ているからね。


誕生日プレゼントは一年中受付けておりますよ、息子よ。

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