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♯20 近江商人とドラッカー

(この記事は約4分で読めます)

当社内で社員と毎月行っているドラッカー読書会。
今月から課題本が「もしドラ」でベストセラーとなった「【エッセンシャル版】マネジメント」になるので、久しぶりに読み返しています。

その本の冒頭。
ドラッカー氏は数多くの会社へのコンサルティングを行ってきた経験から、マネジメントの本質に関するシンプルで、そして常に肝に銘じておくべき言葉を残しています。

マネジメントには基本とすべきもの、原則とすべきものがある。<中略>
基本と原則に反するものは、例外なく時を経ず破綻する
基本と原則は、状況に応じて適用すべきものではあっても、断じて破棄してならないものである。

「マネジメント【エッセンシャル版】」ピーター・ドラッカー


「基本と原則」
課題本としたエッセンシャル版の副題も、よく見ると「基本と原則」。

マネジメント ー基本と原則ー

ビッグモーターの保険金不正請求、旧ジャニーズ事務所の性加害問題などなど。
マネジメントとして基本と原則に反する不祥事が昨年(2023年)も発生し、大きな社会問題にまで発展しました。

過去に経営破綻した企業を思い返してみると、基本と原則を踏み外してしまい、正道からはずれてしまった破綻企業も多そうです。

治療院経営をする先生も私も、事業経営者。
マネジメントに携わる身としては、忘れてはならない「基本と原則」を、しっかり胸に刻んでおきたいところですよね。

では、そもそも、ドラッカー氏が定義する「基本と原則」とは何なのでしょう?

普遍的で、自分の組織にも通用する、
「マネジメントとして留意すべき ”基本と原則” は、xxである。
なぜなら、xxはxxだからである」
というような、深淵ながら単純明快で腹に落としやすい名言があると嬉しいですよね。
自分の思考にインストールすれば、常に立ち戻れますし、またリーダー社員や外部の講習等でも、オラオラ顔で引用できそう。

ということで、マネジメントの基本と原則に関するドラッカー氏の言葉を、本の中で探してみました。

それに対するドラッカー氏の答えは、以下の通り。
”基本と原則” は、時代や国、文化、組織によって、それぞれ異なるモノである。
なので、一言で表せるような、シンプルで普遍的な ”基本と原則” なんて存在しないよ」
という内容...

ある意味、肩透かし。
同時に、「私は、ハウツー的な答えは教えませんよ。
基本と原則に関する、基本と原則のみを伝えるので、答えは自分への問いを通じて見つけなさい」と、短絡的な答えを求めた私に対し、”喝!” をいただいた気がします。

というか、”基本と原則” に普遍的なモノはないことが、ドラッカー氏をこの本の執筆に向かわせた理由みたいです。

ドラッカー氏はコンサルタント業という仕事を通じ、マネジメントの基本と原則が個別的であり、抽象的であること。それゆえに多くの経営者が基本と原則を把握していないことに気付いたようです。

時は1970年代前半。
米国や日本のような先進社会においては、社会や経済の発展はマネジメントの健全さに左右される時代。
そんな時代に突入したにもかかわらず、当時のマネジメント層の人たちの意識や視点の低さに危機感を覚えたドラッカー氏。

「その、つかみどころのないマネジメントの基本と原則を、体系的に学ぶ総合書を書きたい!
第一線で働くマネジメント層が問題に直面した際、その拠り所や指針とすべき基本と原則を導き出せる、マネジメントの入門書を書きあげたい!」
という想いから、大著「マネジメント」を執筆したようです。(1973年著)

「入門書」というには余りにも難しすぎるし、大著すぎる感(全3巻・1,000ページ!)は、正直否めません...

読み進めていく中、難解な個所にぶつかると、「なんでこれが入門書なんだよ!」と、本を途中で放り投げたくなる衝動に駆られることもしばしば...
(この大著過ぎる名著(!?)。その読破に挫折した人が多すぎた反省から、その大著を300ページ弱にまとめた「【エッセンシャル版】マネジメント」が、後年生まれたようです)

時々悪態をつきながら頑張って読み進めると、ドラッカー氏の伝えたかった「基本と原則」の輪郭が、なんとなく浮き上がって見えてきます。

1,000ページに渡る本の骨子を、私なりにざっくり3つにまとめると、

1.企業(組織)が存在する目的はただ一つ、「社会のニーズ」に応えることである。

2.「社会のニーズ」は、大別すると3つある。
 顧客(お客さま)のニーズ」
 働く人社員)のニーズ」
そして「 社会全体のニーズ」

3.マネジメントの役割は、そのような「社会のニーズ」を組織上の ”機会” に転換し、持続的(今日~明日)に成果を出し続ける ”仕組み” を組織内に作ることである。

なんだか小難しい骨子となってしまいました...




上述3点の骨子に対し、マネジメントが捉えるべき「課題」、果たすべき「責任」、取り組むべき「実践」を体系的にまとめあげた入門書(?)が、大著「マネジメント」だと、私自身は解釈しています。

今月から当社内で始まる、「マネジメント」を課題本とした読書会。
この難しい内容を、社員とともに理解を深めていかなければなりません。

でも実は、この難解な話を身近なモノに捉えることができる「飛び道具」が、当社おひざ元の滋賀県にはあるんですよね。

それは、近江商人の家訓として受け継がれてきた「三方良し」の心得。

そうなんです。
「三方良し」の教えと、ドラッカー氏の考え方が、根底では驚くほど相通じるものがあるんですよね。

マネジメントには、自らの組織をして社会に貢献させるうえで三つの役割がある。
1.自らの組織に特有の使命を果たす (顧客のニーズ=買い手良し)
2.仕事を通じて働く人たちを生かす (社員のニーズ=売り手良し)
3.社会の問題について貢献する (社会全体のニーズ=世間良し)
(カッコ内の注釈は著者による記載)

「マネジメント【エッセンシャル版】」ピーター・ドラッカー


商売をしている日本人には馴染みやすい「三方良し」の教えを念頭に置きながら、ドラッカー氏が提唱する「マネジメントの基本と原則」を一緒に学んでいきましょう。

長くなりましたので、続きは次回号に記します。

~前号の「勇気こそ、新大陸発見の栄養素」を読み返す~

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