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終活の困りごとを一括サポート!一般社団法人つむぐ(前編)「必要性が高いのに、なかなか見当たらないサービス」をコツコツと作り上げて

終活にはさまざまなテーマがあり、葬儀のことは葬儀社に、後見の依頼は弁護士に、相続対策は税理士に……などなど、課題ごとに相談すべき人が違います。信頼できる専門家を探すだけでも一苦労です。
「相続手続き支援センター」の関西所長を務める長井俊行さんは、たくさんの相続相談を受ける中で「生きているうちから終活問題をサポートできたら」「終活にまつわる相談窓口を一本化したサービスがあったら」と感じ、一般社団法人つむぐを立ち上げて終活信託サポートを行っています。前編となる今回は、法人を立ち上げた理由やサービスの詳しい内容について伺います。

生前サポートの必要性を感じて法人設立へ

「一般社団法人つむぐ」は2017年にスタートしました。法人を立ち上げるきっかけになったのが、「相続手続支援センター関西」(以下支援センター)での経験です。

支援センターでは、数え上げれば108項目もある相続手続きのなかで、相談者がどんな手続きをしなければならないのか、どんな順番で行えば良いのかを一緒に確認していきます。「長井さんがいなかったらうちの家庭は崩壊していた」などと感謝の言葉をくださる方がいて、とてもやりがいのある仕事だと感じ、今に至るまで18年間この仕事を続けてきました。これまで3,500件の相続サポートを行っています。

支援センターでサポート業務を行うなかで「どこもやっていないけれど、これは死後手続きにあたって絶対に必要」と思えるサポートが出てきました。やっているところがないのであれば、自ら作ろうと考えて立ち上げたのが「つむぐ」です。

煩雑な死後手続きをしっかりサポート

死後手続きにおいて、役所手続きは行政書士、不動産関係は司法書士、相続税については税理士に相談することができます。でも、公共料金の引き落としや携帯電話の解約、名義変更など日常生活に必要な手続きを行ってくれる専門家はなかなか見当たりません。

人が亡くなるとさまざまな手続きが発生するが、一番ボリュームがあるのは専門家に依頼できない日常の手続きだ。(図版は長井さん提供)

しかしこの日常的な手続きが意外と煩雑なのです。士業に依頼することは資料をまとめれば一任できますが、日常的な手続きはそうはいきません。遺族が会社の連絡先を自ら調べ、コンタクトを取り、解約や名義変更の書類を取り寄せるといった手間がかかります。こういった手続きのボリュームが結構大きくしかも煩雑なので、何から手をつけたらよいかわからない事態になりがちです。

そこで最初は、士業に相談できない相続手続きの困りごとをサポートする場として「つむぐ」を作りました。

終活の困りごとを信託契約で解決

また、支援センターでは相続手続きの相談はできますが、生前からのサポートは行っていません。しかし終活は生前から始まります。

健康なときはいいけれど、病院通いが多くなるととくにおひとりさまは見守りをしてほしいという希望が出てきます。さらに体の状態が悪くなると銀行に出かけられなくなり、財産管理をしてくれる人の必要性を感じるようになる。亡くなったときのために遺言書を作成しておくのも大事です。

「つむぐ」では、生前より終活に関するご相談を受け、さまざまな契約の一括窓口となることで安心してもらう活動をしています。

年齢が高くなるほど生活への不安が高まり、支える身内がいない人はとくに、さまざまな契約が必要になってくる。身元保証人や身元引受人の存在は、施設に入居するときに必須。個別に専門家への相談が必要となるこれらの契約を、「つむぐ」では一括した信託契約としてサービス化している。(図版は長井さん提供)

おひとりさまは「とくに納骨が不安」という人が多く、どんなに甥姪と仲良くしていても「納骨のことまで面倒をかけるのは心苦しい」とおっしゃる方が少なくありません。そこで力を入れているのが死後事務委任契約です。葬儀と納骨に関して契約を行い、前もって手続きに必要な費用を預かります。そして亡くなったという通知が届き次第、契約通りに葬儀と納骨を行います。

見守りから相続までトータルで活用するとさまざまな専門家が入るので費用はけっこうかかりますが、火葬と納骨だけを依頼するという形であれば40万~50万円で可能です。平均すると100万円前後くらいのご予算で、ご自身に適したサービスを選んで利用する方が多い印象です。

【前編まとめ】

「世の中にないけれど絶対に必要な仕事と思って作り、そして続けている」と語ってくださった長井さん。静かな情熱を支えているのは、「長井さんがいなかったら、うちは破綻していた」といった感謝の言葉に代表される大きなやりがいなのではと感じました。
後編では、17年もの間相談者に寄り添い続けてきた長井さんに「相続で揉めやすい3つの家」と「終活で最も大事な3つのこと」を教えていただきます。「ウチはお金がないから相続で揉めるわけない」と思っている方がいるとしたら……そういうおうちが、一番危ないかもしれません。


長井俊行(ながい・としゆき プロフィール

長井俊行(ながい・としゆき)

長井俊行(ながい・としゆき)一般社団法人つむぐ 代表理事、相続手続支援センター関西 所長、株式会社サントレフォルム 代表取締役、日本弔い委任協会 理事。相続手続カウンセラー®。「相続手続支援センター」に所属し、17年間で約3,200件の家族をサポート。その経験を活かし、家族に迷惑をかけない為の生前準備(遺言・贈与・介護・後見・見守り・葬儀・お墓など)として、地域コミュニティと連携しながらアドバイスや相談会を行っている。また、社会福祉協議会(高齢者大学等)などの公共施設団体・金融機関・企業等で、年間50件ほどの講演を行う。


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