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親の「これから」が不安なすべての人へ。シニアの家族をサポートする「LMN」が教えてくれた、「子世代が準備すべきこと」

年老いた親を持つ子世代には、これから親の入院や介護、葬儀や納骨、死後の手続きなど、慣れないことばかりが押し寄せてきます。「働きながら親の面倒を見たり、手続きをしたりできるのだろうか?」「遠方だからすぐに駆けつけられず心配」と不安になる人も多いでしょう。
介護が必要なシニアとその家族をサポートする「一般社団法人LMN」の代表理事・遠藤英樹さんに、サービスを始めたきっかけやサポート内容、親の介護が始まる前に準備したいことについて教えていただきました。さまざまな事情を持つ家族にとって、いま最も知っておきたいサービスの一つです。

介護や葬儀は知らないことだらけ!自身の経験からサポートを立ち上げる

遠藤英樹さんが代表理事を務める「一般社団法人LMN」は、親の介護に困っている人のサポート、介護施設の入居時や入院時の身元引受人、葬儀や納骨、相続サポートを行っています。まずは、LMNを立ち上げたきっかけについて教えてください。

遠藤さん:私は約10年前に父の介護や葬儀を経験しました。そのとき思ったのが「とにかく知らないことだらけ」ということ。介護施設といえばお金のかかるところというイメージで、在宅しか選択肢がないと思い、父は亡くなるまで自宅にいました。「父の年金の範囲内で入れる施設もあったのでは」と気づいたのは、後で調べてみてからです。

父は介護が必要な状態になってから4ヶ月ほどで息を引き取りましたが、その4ヶ月の間であっても、私はすべての時間を介護に取られ、想定していないことが起きてそれらに対応する日々を送りました。「介護から遺品整理までの一連の作業は、それほど高くない費用で誰かに依頼できるものなのでは」と考えたのが、この事業を始めたきっかけです。

それから終活の勉強をして、2016年にLMNをスタートさせました。LMNは「Life(生きる)&Medical(医療)&Nursing(介護)」の略称で、生活と医療、介護を結びつけるという意味です。なおかつ、これは計算外でしたが、L、M、Nはアルファベット順につながっている。QOL(生活の質)の維持や終末期の準備まで、あらゆるニーズにかかわる専門職とのつなぎ役になることを目的としています。

33万円で納骨までサポート、プラス11万円で身元引受も

LMNにお願いすると、どのようなことが可能になるのでしょうか。

遠藤さん:サービスを依頼していただいたら、まずはどのようなサポートが必要なのかヒアリングします。サポートが必要な内容は、お客様によってさまざまです。施設入居や入院の身元引受人が必要なのか、在宅で訪問医療を依頼したいのか、葬儀や納骨、遺品整理までお願いしたいのか。

ヒアリングを行った上で、同意のもと「サポート担当者」を選任し、以後はサポート担当者が必要なサービスをコーディネートして提案します。訪問医療なら訪問看護師、介護関係ならケアマネージャーやケースワーカー、自宅の売却をご希望なら不動産関連、相続に不安があるなら士業関連など、さまざまな専門家と連携したサポートが可能です。

登録と各種コンサルティング代金として、はじめに33万円を申し受けます。この金額で、介護から亡くなった後の手続きまで、各種専門家とのつなぎ役としてサポート担当者がサポートします。各場面で実際にかかる費用は、事前の打ち合わせにより別途実費でお支払いいただきます。例えば訪問介護のための費用、葬儀を行ったときの葬儀代、納骨時にお墓にかかる費用などです。

登録した上でご依頼があれば、身元引受人としてもサポートを行っています(11万円)。緊急時の第一連絡先や搬送時の搬送手続き、退院対応などが可能です。おひとりさまはもちろんのこと、ご事情あって親世代の面倒を見ることができない子世代の方も利用可能です。

ほか、緊急時の駆けつけや通院サポート、行政手続きの代行なども、1回4時間につき1万1000円から1万6500円の費用をいただくことで行っています。

「介護から手離れしたい」「毒親から逃れたい」切実な事情を持つ子世代も利用

まるで家族のように、エンディング期のあらゆるサポートを行っているのですね。LMNの活動は、メディアで「家族代行」といった切り口で紹介されたこともあるようです。

遠藤さん:週刊誌で「家族じまい」という特集が組まれたとき、家族の代わりに人生の終焉に立ち会う仕事という切り口でご紹介いただきました。NHK「クローズアップ現代」で「親を捨ててもいいですか?虐待・束縛を超えて」というタイトルの報道があったときにも、亡くなった方の家族から依頼を受けた火葬や埋葬の代行業者という形で出演しました。

現代では親との関係性に苦しんでいる人や、親の介護を「もう続けられない」と悩んでいる人がいます。メディアで取り上げていただいてからは、ほとんどのご依頼が、ご事情を抱えていらっしゃる子世代からのものになりました。

私どもにご依頼いただければ、お子さんは入院や葬儀、納骨などにも立ち会うことなく生前や死後の手続きを任せることができます。相続放棄をする形で、お子さんは相続にすらほとんどタッチしない例もあります。

子どもにさまざまな苦痛を与え続ける親を「毒親」と称し、毒親から逃れたいとあがき苦しむ人のドキュメンタリーなども、目にする機会が多くなったと感じます。親の存在というのは、子どもには重いものです。どんなにひどい親でも、介護が壮絶でも、「親の面倒を見たくない」とはなかなか言いにくいですよね。

遠藤さん:はい。「自分の親なんだから、自分で面倒を見るのは当然」という考え方は根深く、親から逃げたいと思ってしまう自分を責める人もいらっしゃるかと思います。ただ、親からしてみれば「子育てしたのだから、親の介護はお返しとして当然すべき」と思うかもしれませんが、子育てと介護は別ものです。

子育ては、とくにお金のかかる期間についてはゴールが見えています。高校や大学を卒業すれば区切りがつきますから。しかし介護はゴールが見えません。しかも介護度が高くなるほど、出ていくお金は増えていきます。「逃げたい」と考えたとき、頼るところが必要ではないでしょうか。

「親のこれからをどうしよう?」と悩むなら、まずは地元の介護情報を知ることが大事

まだ介護の入口にも立っていない子世代の多くは、「親が介護状態になったら、ある程度は自分でみなければ」と思っていることかと存じます。親のこれからに不安を感じている方に、アドバイスをいただけますでしょうか。

遠藤さん:まずは介護サービスの種類について、最低限の知識は持っているといいのかなと思います。介護認定の方法、特養の申し込み方など、結構まだまだみなさん知らないことがたくさんあるのではないでしょうか。

一番いいのは、ご両親が住んでいる地域の介護保険課に出向くことです。その土地で受けられる介護サービスについて、たくさんの資料が用意されています。いろいろ持ち帰って目を通してもらうだけで、いざというときそこまで慌てないで済むのではと。

また、それぞれの自治体には「地域包括支援センター」が設置されています。自治体に暮らすシニアやその家族の、介護に関する悩みや問題に対応してくれるので、一度問い合わせをして今の不安を打ち明けてみてください。介護が始まる前からでも、いざというときのためのアドバイスを受けることができます。

また、LMNでも横浜を中心に「生き・活き・逝き塾」という終活セミナーを定期的に行っていますが、そういった勉強会やセミナーに足を運んでみてはいかがでしょうか。親御さんだけでなく、お子さんご自身がシニアになったときにも役立つ知識を豊富に学べるかと思います。

できれば同業者がもっと出てきてほしい

現在、おひとりさまなどシニア本人向けの終活サービスはだんだん増えてきていると感じていました。しかし、LMNのようにはっきりと家族向けのサービスを打ち出しているところは、なかなかないのではと思います。

遠藤さん:そう感じています。できれば、同業がもっと出てきてほしいです。子世代が相談できる窓口がないと、きっと今後は困る人が増えていくでしょう。

数十年前までは、親戚がたくさん近くに住んでいるのが一般的でした。介護などで困ったときも、身近な誰かに聞けば問題解決できたのです。また、お寺が悩みを相談できる場所として開かれていた時代には、誰にも言えない苦しみをお寺で吐き出すことができました。

今は、介護や葬儀で困ったときや辛いとき、気軽に相談できる人が周りにいない時代です。親御さんの介護に直面している人は、とても苦しい状態かなと思います。LMNは代理店さんの力を借りて全国展開していますが、もっともっと同じ事業を行う会社が増えて、子世代が気軽にサポートを頼める社会になればと願っています。

遠藤さんのお話を伺い、子世代に必要な準備のひとつとして「親の介護を他の人に頼む後ろめたさ」を払拭することがあるかもしれないと感じました。さまざまなサポートがあることを知り、自分の生活を守りながら介護に取り組む方法を探すのが大事ではないでしょうか。


【プロフィール】


「一般社団法人LMN」代表理事 遠藤英樹(えんどう・ひでき )


遠藤英樹(えんどう・ひでき)父母の介護経験から終活サポート関連に興味を持ち、2013年に終活カフェの一員へ。2016年「一般社団法人LMN」を立ち上げ、代表理事となる。

(取材・文/奥山晶子)


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