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「堀切の花菖蒲」−花の妖精も景色に服を合わせて来てる−『名所江戸百景』

そういえば一昨日くらいに国立国会図書館デジタルで、公開される資料が増えたみたいですね。
まだその恩恵を受けていないので、早く何か資料探しの時に活用したいと思います。
絶版のものを主に公開開始したみたいなので、探そうと思っても図書館にもない資料が多めなのでしょうね。

ちょっと楽しみだとは言いつつなんだかんだ探したものがそれに該当しているかは、わかっていないまま使いそうな気もする。笑

そんなワクワクに気づいた日も広重。今回は『名所江戸百景』「堀切の花菖蒲」です。

◼️ファーストインプレッション

これもまた昨日に引き続き、目線が低めに設定されています。
まるで画面に大きく描かれている花弁の全容がしっかり描かれている2本を誰かに見立てているような描写。

ただ花を描いた綺麗な風景とも取れる描写でもありますし、当時の世相を風刺したり、はたまた奥の道を歩く女性二人組と傘を差した二人組に見立てているとも取れる。

こういうシンプルで複雑性のない絵ほど解釈の幅が広がりますね。

この絵が描かれている一帯が堀切というのですね。
聞いたことあるので現存ですねきっと。
描かれている花は菖蒲。
菖蒲湯なんてあるくらい生活に馴染んでいる植物ですね。

奥の道を歩く人々が、菖蒲の花の色に合わせているのがとても粋。
実際に色を合わせてここに来たという光景は珍しものであったかもしれませんが、広重が、こうだったら綺麗だろうと想像で着色したのかもしれませんね。


◼️堀切

このあたりが堀切ですが、実際の場所を確認しておきます。

赤い枠で囲まれている場所が堀切という区域です。
で、ちゃんと真ん中の駅に「堀切菖蒲園駅」というものがあるのがわかります。
今も菖蒲が見ものであることが顕著な駅名ですね。

「堀切の花菖蒲」は、江戸の名所として古くから知られており、歌川広重や歌川豊国らの錦絵の題材などにも登場している。約7,700㎡の広大な園内には、江戸花菖蒲200種6,000株を植栽、「十二単衣」「酔美人」「霓裳羽衣」など希少な品種も鑑賞できるとあって愛好家にも人気の高い菖蒲園だ。菖蒲の見頃は毎年6月上旬から中旬頃。

豊国の絵にも描かれているそうですね。

◼️名物の花菖蒲

歌川豊国「堀切菖蒲花盛図」です。
3枚の続き物として出版されて、一枚づつ女性が配されていますね。一枚でも十分に一人の女性が美しく、背景の菖蒲と似合っているような気がします。しかし3枚揃うと画面いっぱいに華やかさが広がりますね。

因むと国芳も描いているみたい。

歌川国芳の「堀切名花 江戸の大菖蒲」です。
こっちの方が画面の躍動感がいっぱいに広がりますね。
菖蒲というより女性たちの着物の柄が主役かのような大柄。
後ろの菖蒲はあくまでも背景であるかのような描写ですね。
やはり菖蒲が満開になる時期に花見にくる流行りの女性たちは、それに合わせた着物の柄や色味を用意するものなんでしょうか。

菖蒲の花を検索しました。
紫が濃いものもあれば薄紫で存在すら微かなものもあります。
濃いものは毒々しいとさえ感じてしまう気がします。
でもこれが一面に広がっていたら相当見ものですね。
まるで茨城県のネモフィラ公園みたいに!


この絵の奥に映る道を歩く人々をよく見てみると、真ん中には女性二人組。
一番左に傘を被った二人組。その間にこっちを見ている三人組が描かれています。

絵の真ん中に描かれている女性二人組はなんだか浮いているように見えます。
花として咲いているかのように見える。色味も花菖蒲となじみすぎているし、笑顔なのも伝わって、手前の大きな花二つと重なるとも言える。


この大きく描かれる菖蒲について、何かの世相の風刺か何かかと思いましたが1857年近辺を調べても安政の大地震・オランダとの友好関係が開始・篤姫の結婚とかくらい。
あまり絵に描かれるような風刺の場面ではなさそう。
広重は純粋に美しい花菖蒲の季節を描き、それに集る人々を微笑ましく描きたかっただけかもしれませんね。

手前の二つの大きな花がまるで奥の二人の女性のように投影され、可憐で、儚く、「うふふふ」なんて声が聞こえてきそうな印象。
実際に存在していたか、妖精のような存在の仕方をしているのか、広重の目にどう映ったのか。広重のみ知るという感じですね。

今日は堀切の場所、花菖蒲が描かれた他の絵などを見ていきました。

今日はここまで!

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