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「利根川ばらばらまつ」−北斎の描写に感心してしまう−『名所江戸百景』

最近は束の間の息抜きを、漫才を見ることで過ごしています。
夜とか、お風呂の時間、朝の化粧の時間とか。
また吉本観に行きたいなという思いが募るばかりです笑。

元々アニメやドラマを見る人ではないので、その時間が欲しい!と禁断症状が出ることはないのが救いです笑。
お笑いは笑うことでストレスが消えたり、その時間で完結する癒しなので本当に助かってます。
かといってお笑いに詳しいわけではなく、面白いものを見たいたいだけの人なので多くは語りません。笑

そんなお笑いに感謝している日も広重。今日は『名所江戸百景』「利根川ばらばらまつ」です。

◼️ファーストインプレッション

この絵も特徴的な投網の描き方で非常に気になっていた絵の一つです!
まるでインクの瓶を倒してしまったかのような滲み出方をしている灰色が印象的です。
実際網を描くとなると、この灰色に染められている実線部分以外のところが存在しませんが、投げられている最中の瞬間的な描写として時を止めずに描いているのでしょう。

この利根川では投網量が行われていたことがわかります。
何の魚を獲っていたのかは検討がつきませんが、結構な多さの船が出ているのでこの時期には盛んだったことがわかりますね。

題名のばらばらのまつというのがかわいい名前。”ばらばらの”を広重のネーミングセンスによるものなのか、当時この呼び名で親しまれていたのかで深掘りするベクトルが変わります。

広重はこの船に乗った状態で描いている立ち位置になっています。
実際にこの漁に添乗した経験があるのか、想像なのか、いずれにしてもこの瞬間を描いた絵としてとてもリアルな描写でありますね。

◼️ばらばら松

この独特なネーミングの”ばらばら松”というものを気になってこちらのサイトを読んでみましたところ、『絵本江戸土産』という本に記載があることがわかりました。↓(そのサイト)


当の『絵本江戸土産』を参照してみましょう。

こちらがその項目。「利根川ばらばら松」
この左上の記載には、「鯉をもて名品とす」と書かれているようで利根川のことを坂東一の大河とも称されていることがわかります。
この挿絵では投網の光景は見られませんが、向こう岸の松が点在していることは共通しているようですね。

実はこの『絵本江戸土産』は、著者に広重の1世と2世がいます。
なので広重の贔屓目でこの光景を描いている可能性も否定できないのです。

実際、”ばらばら松”の場所の特定は確実なものはわかっていなくて、この辺りの光景のことを指しているのではとも言われています。

◼️利根川

現在も利根川という川は存在していますが、江戸時代当時の利根川と現在のものでは若干の認識の相違があるらしい。

昨日も利根川は扱いましたが触れることはできませんでした。
現在の利根川は群馬県前橋あたりから千葉の銚子、千葉の一番東のとんがっていることろまでを流れている川です。

この画像は国土保全局の画像を引用したものです。
赤い線が現在の利根川
そこから下のあたりに灰色の点線で東京湾に繋がっているのが江戸時代当時の利根川です。

で、当時の利根川が現在のどこに位置するのかというと江戸川です。

北から東南の方面に流れているのが江戸川ですね。昨日一昨日と見てきた市川市のあたりが北側に存在します。
今回描かれているのが南の方に記載がある旧江戸川とされているところ。
今回は名所が現存してたりわかりやすいものはないので場所の特定は参考書に頼って言及とします。

◼️投網

先ほど『絵本江戸土産』で見た通り、左上の記載には「鯉をもて名品とす」と書かれていることから投網で捕らえているのは鯉ではないかとされています。

そしてこの投網の描写ですが、北斎『富嶽百景』「網裏の不二」という項目で描かれているそう。

昨年夏、六本木ミッドタウンで開催された『北斎づくし』展で購入した図録に載っていたので掲載いたします。

あー確かに。
網の裏に富士山が見られますが、この網が投網ではないので描写の手本にしたかは不確かですね。
しかし、画面の一番最初に目を引かせる部分に網を置いたという点では、ここから着想を得たというのも納得できますね。

それにしても北斎の、網の裏の濃淡のみで何があるのかを表現する力は非常に長けているものだと感心します。(上から目線)

今回は着目する点が多くて楽しかったです。不確かなところが多くて鮮明にする作業をいつかできたらなんて思えました。

今日はここまで!

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