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ロリータファッション撮影会って? 「tulle撮影会」に潜入してみた

インターネットにアップされた個人のロリータファッションの写真が、どこかの誰かにとってロリータの世界への扉になるかもしれない。

私がロリータファッションに興味をもったきっかけも、小学生のとき、ロリータさんの写真をネットで見たからでした。
2000年代前半、ネット上でロリータファッションの女の子が作ったホームページを見つけ、そこにアップされているコーディネートやお出かけの様子、お洋服紹介などを見て、私もやってみたい……!と強く思ったのです。
まだスマホもSNSもない時代、そのころのロリータさんはデジカメでお互いに写真を撮り合っていたと思われます。
90年代〜00年代頃の雑誌のストリートスナップにもロリータファッションは多く残されていますが、特定のエリアで選ばれて掲載され、記録されるのは、ロリータさんたちの中のほんの一部。
ファッションモデルがお洋服を見せるための雑誌やカタログともまた違い、お気に入りの服を着てお気に入りの場所で趣味の合う人と遊ぶ、という日常の雰囲気漂うロリータさんの写真を見ると、ロリータを着て生活するということの楽しさが、よりリアリティをもって伝わってきました。
この世界に足を踏み入れてみたい、とわきあがってきた、あのときの好奇心と憧れは、今もずっと私の根底にあります。

ロリータはお洋服から小物や髪型やお化粧まで細かくこだわるため、「写真を撮る/撮られる」ということとも親和性の高いフォトジェニックなファッションです。
スマートフォンによって撮影も発信もさらに手軽になり、自撮りしたり友達同士で写真を撮り合ったりすることは、ロリータさんにとってより身近になったと思います。
それだけでなく、最近ではロリータ体験のフォトスタジオやロリータ服レンタル、撮影会などの情報も入ってくるようになりました。
ガーリー&ロリータ系を代表するメディア『tulle』が定期開催しているという「撮影会」もそのひとつ。
ロリータ文化の発信を一線で長年続けてきたメンバーたちが撮影会という場づくりを新たに始めたのは、私にはとても興味深く、そこにはロリータさんの求める大事なものがあるのではないかと思ったのです。

そこで先日、「tulle撮影会 体験会」の現場に潜入させていただき、ロリータ撮影会のリアルな空気感と、その魅力を体験してきました。

「撮影会」とは、ロリータさんにとってどのような場所なのでしょうか?

「tulle撮影会」で撮影した写真 (提供:tulle / モデル:青木美沙子)
「tulle撮影会」で撮影した写真 (提供:tulle / モデル:青木美沙子)

「tulle」のロリータ撮影会に潜入!

tulle撮影会」は、普段からファッション業界、特にロリータやガーリー系の分野の最前線で活躍するスタッフたちが、参加したお客様とスタイリングやヘアメイクから撮影までをトータルプロデュースするというものです。

今回開催された「体験会」は、普段からの撮影会の様子を見学できるというイベント。
この日は特別にロリータモデル・青木美沙子さんをゲストモデルとして迎えて、撮影会の流れが実演されました。

まずヘアメイクさんが、どんなイメージに仕上げたいかヒアリングしながら、お洋服や空間に合うヘアメイクを施します。
撮影に使うお洋服は、着てきたり持参してもいいし、スタジオのものを借りることも可能。
アクセサリーや小物類も豊富に用意されています。
全身のコーディネートとヘアメイクが仕上がったら、フォトセッションの開始です。

より自信をもって撮影にのぞめるし、メイクテクニックも教えてもらえそう
ドレスから甘ロリ、コケティッシュなデザイン、カジュアルガーリーまで幅広く揃う
コーディネートを格上げしてくれるアクセサリーもたくさん
「お洋服を見せるためだけじゃない撮影って久しぶり!」と新鮮な様子の青木美沙子さん

独自の「かわいい」を見つけるレッスン

撮影会の際、スタジオに用意された貸出用のお洋服やアクセサリーは、すべてスタッフが自らの「かわいい」のアンテナで集めたもの。
撮影会に参加する人は、プロのスタイリストさんに相談しながら、唯一無二のコーディネートを組むことができます。
「こんなアクセサリーをプラスしたほうがいいかな?」
「これとこれは喧嘩するかな?」などと言いながら、完成度を上げるための匙加減を調整するのは、プロならではの視点。
まるでシンデレラに魔法をかけるフェアリーゴッドマザーのよう…!

「 一段階アップした装飾度にして、いつもよりも思い切って盛り盛りに!普段は全く違うファッションでも、こういうお洋服が着てみたい、という方にはぜひ、非日常の感覚を味わっていただきたいです。」
そう語るのは、お洋服やアクセサリーのセレクトも手掛けている『tulle』ディレクターの金山京子さん。
ご自身も実際にたくさんのロリータ服を着たり、現場で着せ込みをしたりしてきているので、着かたの難しいお洋服などでも、着替えをサポートすることができるそう。

モデルとして参加した青木美沙子さんのロマンティックなコーディネートには、いくつかテイストの違うブースに分かれたスタジオの中から、ぬいぐるみがいっぱいのアンティークなお部屋を選んで撮影スタート。
バランスをみながらぬいぐるみの配置を変えてみたり、ライトなど小道具を投入したり、いろいろなカメラワークで撮ったり……。
お人形やお姫様のようにみせてくれる、「かわいい写真のつくりかた」を知り尽くしたプロのこだわりが光るたび、会場のボルテージも上がっていきます。
たとえ同じ空間で撮ったとしても、ひとりひとり違う自分だけの写真作品ができあがるというのが、このtulle撮影会の特別なところでしょう。

これまで「tulle撮影会」はひとりで参加するお客さんが多めだったようですが、人数追加のオプションもあり、お友達や家族と一緒に参加するなど、楽しみ方はさまざま。
また、子ども服も用意されていて、世代を問わず誰もが「かわいい!」という気分に浸ることができる場になっています。
「ロリータを始めてみたはいいけど、なんだかしっくりこない」というお悩みがある人、これからロリータデビューしたい人にとっても、このようなロリータ撮影会は新たな自分の魅力に出会うレッスンになりそうだと感じました。

ロリータファッション&カルチャーのユートピア

「撮影会」というイベントは、ロリータ以外のファッションやアイドル、グラビアなどの分野では長年行われてきていますが、ロリータやガーリーファッションの世界観に特化してお客さんが被写体になるイベントは、近年の新しい動きではないでしょうか。
ヘアメイクやスタイリングから撮影までトータルプロデュースしてくれるものとしては、最近では「韓国アイドル体験」の流行も思い浮かびますが、ロリータ体験はそれとも似ている点があるように感じます。
ロリータは日本独自のファッションだからこそ、経験豊富なスタッフによるこのようなロリータ撮影会は、海外からの観光客にとっても、日本のカルチャーを体感できる場として注目を集めそうです。

世界中でもロリータファッションの普及活動をつづける青木美沙子さんにも、お話を伺ってみました。

Q. 世界中でロリータさんたちと交流されている美沙子さんですが、海外のロリータさんたちの間では、このような「撮影会」の文化はあるんですか?

青木美沙子:「海外だと、こういう撮影会ってあんまりないかも。たとえば中国では、日本での着物体験みたいな感じで漢服体験があったりはするけど、ロリータ撮影会はあまり聞かないです。
海外でのロリータちゃんのお茶会で、アフタヌーンティーは撮っても自分自身の写真はあんまり撮らないっていう人、結構多いんですよね。
でも、せっかくこんな素敵に着飾っているし、みんな今がいちばん若いじゃないですか!もっと写真におさめといたほうがいいよって私は思ったりします」

ロリータモデル歴20年の青木美沙子さん、ポーズのレパートリーも豊富!

単独行動が多くてなかなか写真を撮れないとか、写真にうつる自信がない、というロリータさんもいるかもしれませんが、ロリータ撮影会はそんな人も温かく迎え入れ、魔法をかけてくれる場所です。
コミュニティに入ったり大勢で過ごしたりするのが得意ではないというロリータさんが楽しめるイベントとしても、この撮影会はかなり貴重なのではないでしょうか。

自分たちはテーマパークのキャストのようでありたい、と語る、撮影会スタッフさん。
「スタッフの心構えとしては、お客様に"お姫様みたいな気分になってもらうこと"なんです。スタジオに入ったところからお姫様としてみんながおもてなしをします。非現実な世界を体験していただけたら嬉しいです」

ここでの体験そのものがきっと、とけない魔法のような思い出になるのではないでしょうか。
このような「撮影会」というのは、ロリータさんが主人公となって物語をつくりあげ、没入することができるユートピアなのだと思います。
大好きなお洋服に身を包んだ、いちばん好きな自分の姿の写真は、その状態でいられない現実の日々の中でも、自分はロリータなんだと思い出させてくれる証になるはずです。

自分の内面にある夢の世界と、外側のヴィジュアルを限りなく一致させ、もっと自分を好きになること。
それはロリータファッションを続けていくことに欠かせないモチベーションだと思います。
好きなものや生き方まで鮮やかに映し出すような、撮影会の写真の数々を見ていたら、私もまだまだ自分の「かわいい」を更新していかなくては、と力が湧いてくるような気がしたのでした。


取材・執筆:大石蘭
編集協力 : SUITE IMAGE


*tulle撮影会について詳しい情報はこちら!
tulle撮影会 Instagram 
tulle撮影会 X


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