見出し画像

もはや、夢じゃなく妄想地図

2012年、習近平さんが中国共産党総書記になってから、「トラもハエもたたく」と収賄政治の一掃をはかった。中央、地方政府のトラたちは失脚や更迭処分になり、ハエたちも戦々恐々となった。

その少し前から、中国に現地工場をつくろうと、月にいちどは通っていた。開発区の役人とは、申請方法や手続きなどの教えを請い、事業計画を大きすぎず、小さすぎず報告して協力を依頼した。日本から手土産を持っていくが、公には受け取らない。建物の外まで見送ってくれたとき手渡すと、彼は自分のクルマにそっと入れる。そんな時代だった。

習近平さんのもうひとつのスローガンが「愛国心」をあおり「中国梦」を実現することだ。

中国には「国恥地図」というのがある。かつての清朝全盛時代、朝貢した周辺国と海域をあわせたのが「中国」だった。それが、アヘン戦争や、日中戦争など諸外国との不平等条約により「領土」が割譲され、大きく失われた。これは「中国の恥」であり、取り戻さなければならない。それを地図にあらわしたものだという。

この「国恥地図」が姿を現し始めた。8月末に中国の自然資源省が公表した「新しい地図」だ。南沙、西沙諸島を含めた南シナ海やインドとの国境紛争地帯が堂々と中国領土・領海になっている。もちろん、尖閣諸島もだ。

「国恥地図」では、北はモンゴル、シベリアの一部(韃靼)、樺太、東は朝鮮半島、琉球、台湾、南はインドシナ半島、西はネパールからアフガニスタン、カザフスタンまで「中国」だ。ここまでは今回の「新しい地図」には入っていない。

「新しい地図」は、習近平さんの「中国梦」にもとづく「妄想地図」である。土地、海を一方的に獲られた諸国は抗議し、非難はしてはいるが、常識はずれの行為にあきれ顔のようだ。

9月にインドで開かれるG20に、習近平さんは欠席らしい。さすがにバツが悪いのだろうか。