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弁護人が目の前で手錠をかけられた!?話題のキーワード「制裁裁判」について、当事者に聞いてみた(後編)

今回の記事は前後編後編です。前編をまだご覧でない方は、まずはこちらからどうぞ。

法廷での録音というタブー(?)に立ち向かってきた中道弁護士

弁護士ドットコムニュースによる、弁護士108名に対するアンケートでは「弁護人・代理人限定で法廷録音を認めるべきか」という問いに「認めるべき」「やや認めるべき」75%を占めていたとのこと。

どんなテーマでも、最終的に録音の話に戻ってしまう今回のインタビューですが、後編ではどんな話となるかお楽しみください。


法廷録音によって目指したい姿

(今回の法廷でも実際に起きた重要と思われる事項が出来上がった調書に書かれていない事態に直面したことを受け)

ーそういう経緯が過去にもあって、弁護活動を行うために録音を求めるようになったんですね

(中道)
そうですね。まさにこの当日の出来事を裁判官ご自身のご失言を書いていないというのが、録音を求める理由の一つですね。別に裁判官を責めたいから録音したいだけじゃないですので、確かな証拠が欲しいという普通の動機なので


―先生の場合、特にそうですね。いやぁ、なんかすごいところに踏み込んでしまった気が…

(中道)
普通さんは、どうぞ自分の身を護る編集を。まぁ僕を出演させている時点で、要注意人物になってるかもしれませんが


―(笑いながら)あの刑事部の法廷には立ち入れないかもしれませんね…。僕として裁判所とは仲良くやりたいんですが

(中道)
(笑いながら)それは僕を出演させた時点で諦めなきゃいけませんよ


―まぁまぁ、大丈夫でしょう。あくまで、仲良くやりたいから、やることはやっていきましょうよ、お互いにというスタンスですし

(中道)
でも、僕もそうなんですよ。
というのも、裁判所に録音の許可を求めて不許可となると、訴訟指揮の異議という手続きがあるので、異議を申し立てるのですね。
そして異議を申し立てると裁判官は異議に対しての判断をする前に必ず検事に意見を聞くんですね。


―はい、裁判の中での異議も同様ですね

(中道)
で、検事が「特に意見はありません」ってみんな言うんです。
そのとき僕は必ず検事に言うんですけど「検事さん、あなたはご自身の職務の証拠はいらないんですか?ときとして裁判官と闘わないといけないんじゃないですか」、というようなことを言うことがあるんです。

裁判官が検事にとって有利な事実を書かない公判調書がつくられたとき、検事を異議を出さないんですか?って話です。


―それは争わないといけないですね

(中道)
だから僕は録音の許可を求めているのは、別に弁護人の権利だけのことを考えていないんです。検事さん、あなたも求めたらどうですか?ということなんです。


―実際、検察側が異議を公判調書について異議を出すことってあるんですかね?

(中道)
あるのかもしれないですけど、わからないですね


―裁判にかけられている当事者は人生かけている中で、しっかりやって欲しいですよね

(中道)
そうですね、検事の後ろには裁判官じゃなくて、被害者がいるはずなんです。被害者なり社会的な利益というか。また、罪を公正に裁くことを求める社会的要請が検事の背景にはあるはずで、ときとして裁判官と見解を相違させてもいいはずなんです。

むしろそういう場面があってこそ健全なはずなんです。だとしたら検察官は、裁判所の作る記録だから信頼するって態度はよろしくないですよ。


―そうですね、それによって足元すくわれることもあるでしょうし

常に裁判所の作る記録も検事の視点できちんとチェックする。これが大事なんじゃないですかね。そして検事にとって有利な発言を引き出したのになってのが書かれていないときは異議を出す。
こういうことを弁護側も検事側も双方ができてこそ、裁判所の記録がより公正になるんじゃないんですかね。


―素晴らしい!その通りだと思います。
 それがなされないのはどうしてなのでしょうか?

(中道)
単なる馴れ合いでしょ。面倒くさいんでしょう。まぁ僕も全部となったらですけど…


―まぁ起訴されての有罪率が99.9%ってことで、実際争うものも少ないですからね

(中道)
そうですね、なので私も自白事件でそんなに争ったりしないですからね


―ただ、ほとんどが争うものでないので、流れ作業になりがちというか。まぁ特に大阪は件数が多いからですね、みなさん大変なのはとてもよくわかるのですが

私も含めて人間なんでね、体力気力の限界はありますからね。
なのでそういう点を全否定する気は僕もないのですが、だからこそ録音があれば楽でしょ、と


―そうですね!「大変でしょ?だったら録音を」って言いたくなりますね

(中道)
そうなんです、録音を全部書き起こすのは大変ですけど、大事なとこを確認して抜けているなと思ったときに確認するイメージですね。


―関係者の尋問などで、「録音調書」、「要旨調書」とありますけどこれの違いは?

(中道)
要旨調書は要点をまとめた調書です。逐語で書かれていないんです


―裁判で多いのは?

(中道)
要旨調書だと思いますよ


―そうですね。それでたまに、動機や更生、事実関係に関わる部分を録音調書対応にすることを求めているのを見たことがあります

(中道)
そうですね。
まぁ全部が全部、逐語にする必要はないのは、僕もそう思っているので。


―それでは続きまして、今回の大きなテーマである制裁裁判についてお伺いしたいと思います。


拘束室での話

―どうやら弁護士の方がこれにかけられるのは1985年以来ということで、まぁ令和どころか平成も含めてなかったようなのですが

 まず先生は普段、身柄拘束された被告人が使う通路で外に出られましたが、この通路は普段弁護士の先生が使うことはあるんですか?

(中道)
あそこ僕は通ったことがないわけではないんです。すごく記憶が遠くて、弁護士としてだったか、修習生としてだったか忘れちゃいました。


―修習生のときにあるんですね

(中道)
そういう勉強的な意味で通るということはありえます


―じゃあ、早々通ることはないということですね

(中道)
まず通らないですね


―法廷を出たら、精神状態としては少し落ち着かれました?

(中道)
ドアをバタンとされ、廊下を移動しているときくらいは、隙を見て法廷に戻ってやろうと思っていました。

―大笑 先生さすがです。
 あの後、先生はご存知ないでしょうが、あの通路のドアの外側からドンドンと叩かれて、それ自体は別の職員さんだったんですけど、「ちゃんと鍵をかけていますか?戻ってくるかもしれないので」って確認がある一幕なんかも

(中道)
いやぁ、その雰囲気を察知されるようなやり方をしているようでしたら、僕もまだまだ下手ですね


―その後、拘束室で制裁裁判を待つわけですが、手錠っていつまでつけられていたんですか?

(中道)
ちょっと正確には覚えてないですが、たぶん拘束室に入ってすぐだったと思います


―割と早々に取ってくれたんですね

(中道)
手錠はなく割と自由に過ごしていましたね。


―ここで、学生傍聴人さん、ただの傍聴さんからの質問です
 拘束室ってどのような場所でしたか?椅子だけですか?他になにかありましたか?

(中道)
何畳くらいって言ったらいいかな、8畳くらいはあったんじゃないかな


―思ったより広い。カギはかかっていたのですか?

(中道)
入る前はカギかかっていましたけど、扉はオープンになって、職員さんと話しながら過ごしていました


―そのときお荷物は?

(中道)
そのとき被告人さんに預けていたんですが、被告人さんに預けていたら情報管理上問題のある携帯電話と、ネットができるならいいなとwifiと、車のカギくらいしか持ってなかったですね


没収されたりはなかったんですね

(中道)
没収はなかったですね。
でも、荷物をポケットから出してくださいと言われました。


―持ち物を確認されたんですか?

(中道)
そうですね、持ち物検査をされました。
ずーっと拒否しましたが。


―笑 チェック受けたら、元に戻せるんですか?

(中道)
ポケットには入れることはできなかったです。ずっと出しっぱなしでした


電話はできるんですか?

(中道)
これがですね電波繋がったんですよ。被告人さんと電話しました


―それは被告人さんも一安心ですね

(中道)
そうそう。拘束室で電話して、1時から裁判みたいなんで終わったら行きますね、って


―制裁裁判を何時からやります!ってのは召喚状などはあったのですか?

(中道)
見せられませんでしたが、告知はありましたね


―携帯が通じていた訳じゃないですか。そこで佐藤正子さんからの質問なんですが、
 制裁裁判を受けるにあたり、他の弁護士の方に相談などしましたか?

(中道)
そこはですね、後から考えれば当番弁護士くらい呼べばよかったのかなとも思ったんですけど、そのときはもう、まぁえぇやという感じでした


―じゃあ、誰に助けを求めるでもなく

(中道)
そうですね、法廷秩序維持法は事前に勉強していたので。過料か監置やな、と。いきなり監置は、さすがにないでしょう位の気楽な感じでした。


―この質問がすごく多かったのですが、ちはやさん、7m4gmhさん、ちゃぱ太郎さん、ただの傍聴人さん、Sおまさんからで、
 お昼はどんなものでしたか?お味なども教えてください

(中道)
まぁまぁ豪勢なお弁当をいただきましたよ


―職員さんも普通に食べるような?

(中道)
そうでしょうね


―でも、そのイレギュラーな1個ってどこから出たんでしょうね?

(中道)
わからないです。
ただ、お昼ご飯が出るまでの経緯で、むこうからお昼ご飯を出しますと積極的に言われたわけではないんです。職員さんと雑談する中、「そういえば、お昼ご飯って食べられないんですかね?」って軽い感じで言ったら、やっぱりご飯ってのは人権なんでしょうね、もうその言葉を聞いた瞬間に職員さんが「ヤバい!」って感じの雰囲気を出してましたわ。「ご飯は出さなアカンやろ」って感じで必死に準備していました

―今、「人権」という言葉が出ましたが、お昼ご飯のことで裁判で揉めることもあります
 身柄を拘束されている被告人の午前で終わる予定の裁判が、意図せずお昼以降も行うことになった場合、裁判官が公開の法廷の場で、「お昼は拘置所で食べられますか?」とか目の前でバタバタと確認することがあります。
 そういう意味で、お昼に限らずですが、そういうとこはちゃんとしようとしている裁判所の意識は感じることがあります

(中道)
そうですね


―ちなみに、いわゆるお弁当ですか?

(中道)
そうです、お弁当です。正方形の弁当箱に9等分されていて、ご飯が入ってたり、おばんざい的なおかずが入ってたりして、9品食べましたね。


―ちなみにお味は?

(中道)
まぁまぁでしたよ


―お値段はいくらくらいしそうでした?

(中道)
600~700円くらいかな


制裁裁判について

―ちゃんとお昼を食べて裁判に挑むわけですが、先生は制裁裁判についての知識っていかがだったのですか?

(中道)
法廷秩序維持法はそんな長くないんですよ。だから、ちょっと読んで復習したって感じですね


―それは、「今回、制裁裁判がありえるかも」という予感からですか?

(中道)
いや、法廷警察権というのはそれなりに知っていたので、「法廷警察権」、「裁判官の訴訟指揮権」あたりのキーワードは押さえているので、そこからちょっと深めて法廷秩序維持法を押さえておけばって感じかな


―その制裁裁判の具体的な流れなのですが、ちはやさん、いーちゃんさん、MNさん、ただの傍聴人さんからいただいているのですが、
 そもそも制裁裁判ってどこでやるんですか?

(中道)
どこ?


―普通に法廷ですか?

(中道)
そうです


―そこには誰がいるんですか?中道さん、裁判官、、、

(中道)
書記官さんはいましたね。ほとんど刑事裁判と一緒ですよ


―裁判官は法服を着てるんですか?

(中道)
あっ、言われてみれば、法服は来てなかったです。ワイシャツで裁判をしていました


―手順としては何があるんですか?人定質問や認否とか、、、

(中道)
刑事裁判と流れ一緒です。
人定質問(裁判にかけられる人と目の前の本人が同じであるかの確認)、起訴状にあたる法廷で行った行為の読み上げ、それに対する反論、僕自身が証拠だから証拠調べは終わったていになって、あとは刑事裁判でいう判決にあたる「決定」ですね

―そのころには裁判官も落ち着いていたんですか?

(中道)
裁判官は多少落ち着いていましたけど、まぁ私がこれまたしつこくですね「この制裁裁判の前提たる録音不許可の理由をちゃんと言わないのは何故なんですか?」というのを何回も聞きました


―さすがです。それに対するお答えというのは?

(中道)
「答えません」、「関係ありません」


―そちらもさすがといったところで。まぁ関係ないことはないですよね、それが原因なんでね。
 制裁裁判って公開なんですか?

(中道)
非公開なんです


―それは規則なんですか?

(中道)
僕も非公開という規則があるかどうかはわからないです


―仮に、被告人なり一般の人が制裁裁判にかけられる場合、弁護人をつけられるのですか?

(中道)
そうですね、弁護人はつけることができます


―ちなみに仰っていただける範囲で、制裁裁判の中で、裁判官からかけられた言葉などがあれば教えてもらえますか?

(中道)
特に裁判官から、よくあるような「反省してくださいね」といった言葉はなかったですね。こちらも確信犯ですからね。
で、私が何度もですね「過料3万円処するって言われても、そんなことはどうでもいいから録音不許可の理由を教えてください」としつこく聞いていると今度はですね、「もうこれ以上出て行かないなら、不退去罪にするよ」と言われたりですね、「またやったら、あんた今度こそ監置にするからね」と言われました


―いわゆる一回目の執行猶予で、次は実刑だぞと

(中道)
そういう感じですね。
ですので、次の期日はお盆前くらいに入れて欲しいんですよ。


―お盆休みとしてですか?

(中道)
そうそう。私もそれだったら監置でもいいかなと


どこで監置されるんですかね?裁判所内なんですかね?職員さんが対応するんですかね?

(中道)
そう、これ裁判所がやることだから、裁判所職員さんが僕のお世話役をしなきゃいけなくなると思うんですよ。実際、1時間半の間、お世話役の職員さんが4人いましたから。どれだけのセレブだよと思いながら自分は過ごしてましたけどね


―これはもうお盆前にやっていただいて、子どもたちの夏休みの自由研究として「監置とはなんぞや」っていうのを地元の子らに見てもらいです

(中道)


―今回はさすがに監置はないかなと?

(中道)
監置はさすがにないだろうと思ってましたけど、やられたらどうしようとは思ってましたね。
現実的にその日に、「打ち合わせ期日」といって、公開の場でやらない訴訟当事者だけが行うものがあったので、「監置になったから行けません」とその裁判所に言えればなと思ってました


―過料3万円の決定がなされてすぐに釈放されたのですか?

(中道)
そうですね


―職員さんはどこまでついてきたんですか?

(中道)
覚えてないですね


―また拘束室に戻って荷物取りに行ったりして…

(中道)
いや、荷物は持ってたので


―じゃあ、3Fの法廷の扉から普通に帰ったんですね

(中道)
そうそう


―じゃあ、その辺にいたら制裁裁判を受けたばかりの先生と違う可能性もあったんですね

(中道)


―この制裁裁判、ご自身が受けられるのは初めてでしょうけども、弁護なりに関わったことはあるんですか?

(中道)
ないですないです。ちなみに今回のも事件番号が第1号ですわ、本年の。


―刑事裁判だと、事件番号(わ)とかですと、今回の場合は?

(中道)
そこ聞きます? 苦笑
刑事裁判だと「令和5年(わ)1000号」とかじゃないですか、その(わ)のところに、(秩ろ)って書いてありますわ


(秩ろ)の第1号。第2号が起きないことを願うばかりですが。
 謎に包まれた制裁裁判につけて色々お聞かせいただいてありがとうございました


今後について

加古川くんさんからご質問いただいているのですが、
 制裁裁判は抗告可能な期間が5日間と極めて短いですが、抗告されますか?

(中道)
しまーす

【当記事執筆時点での補足として】

―続いてななかまどさんから、
 過料の支払い命令それ自体、民事訴訟の対象(国賠法)になりえますか?

(中道)
この秩序維持法で抗告できる以上、無理なのだと思います。
だって、秩序維持法の命令が間違っているのであれば、抗告をするという手続き補償自体は一応ありますので。

あーでも、例えば、地方裁判所の決定が間違っていて、高等裁判所が正してくれた、とします。それで3万円支払わなくて済んだ。でも、第一審で過料3万円ということを言い渡された、これによる精神的苦痛。というのは理屈的にはありえますかね。
だけどまぁ、高等裁判所で取り消されたら、僕はそれでいいです


―今回の制裁裁判を経て、担当されているストーカー規制法違反の弁護姿勢に何か変化はあるのでしょうか?

(中道)
録音を求め続けて、今回のように実力行使で止めさせられるんだったら、やり続けても意味がないって感覚にはなっていますね。
まぁだけれども毎回、録音の許可を求めて、不許可となり、異議を出して、その異議を裁判官に判断してもらうという通過儀礼はすると思いますね。

で、その後具体的にどう対策するかというのは、ここは秘密です


―わかりました。そこはもうみんな法廷で見て!ということでいいでしょうか?

(中道)
そうですね


―これだけ話題になって、次回はメディアもいっぱい来るでしょう

(中道)
頼むから来ないでください、僕緊張するんです


―緊張する人の動き方じゃないんですよ

(中道)
(笑いながら)緊張をかき消すために動いしてるんですわ。
本当は顔真っ赤にしちゃうんだから


―あんな立派に弁論できる人、なかなかいないですよ

(中道)
そんなことないですよ、すごい人はいっぱいいますから


―ちなみにこの件、私がtwitterに呟いたら一気に盛り上がったのですが、こんなことになっているって知っていましたか?

(中道)
全部は知りませんでした。でも、「普通さんが呟いているな」ってのは、どこかでちょっと見たかな、くらいですね


―先生に対して、何か周囲の反応は?

(中道)
僕、あまりtwitter得意じゃないんで


―リアルな交友関係などでは

(中道)
SNSではないですが、メールや電話などで、ちょっと励ましていただいたりってのはありました


―先生のお名前が出たのは、その日の18時くらいの弁護士ドットコムからですが、先生のお名前を出していない私のツイートだけで、先生のことを想定している方いましたよ

(中道)
えー


―「録音」ってキーワードは呟いていたので、私へのリプライで「あの人かな?」みたいなのはいくつかありました

(中道)
勘弁してくれー、誰か他にもやってくれー


―もう先生の活動は界隈を動かしているんです。先生だけの問題じゃなくなっています

(中道)
僕は僕の事件をやっているだけなのに。頼むから他の先生も関心あるなら、五月雨的にしてくれたら、僕が目立たなくなるからやってほしい


―その流れでいうと、学生傍聴人さんから、
 録音を要求したいと考えている弁護士の方々に対して、今回の件を通して何かあればお願いします

(中道)
同業の先生には、したくてもできない方がいらっしゃるんだと思います。
例えば、ご依頼者に迷惑かかるかなと考えてしまうとか。でも、意外と話しかければ、面白いって反応してくれる人結構いると思うんですよね。自分の裁判の記録は普通に録音したいです、って反応もあったり、いろいろですわ。
ただ、僕自身も気を付けているのは、明らかにこの人にはお願いしない方がいいと思うような、例えば速やかに終わりたい自白事件とか、録音許可不許可の流れを一通りやってしまって国選弁護人だったら解任寸前になってるとか、そういうものに関しては録音について触れないようにしていますね


―別に先生はいたずらにやってるわけじゃないですからね

(中道)
だから、同業の先生も、僕は「頼むからしてほしい~」みたいな言い方しますけども、したくても出来ない悩みを持っている方は相当数いると思いますね。だから止むなく、秘密録音をするということなのだと思います


―twitterで僕宛に、弁護士の方などが共感の声を届けてくれたりもしていました

(中道)
そういう風に思っていらっしゃる方は、普段はしたいけど、お客さんに迷惑がかかるとお思いの方なのかもしれませんね


傍聴人について思うこと

―今回の流れが何かしらの議論というか、疑問を呈するきっかけになればと思っています。
 そういうときに傍聴人の中には、何か役に立ちたいと思う層も一定数いると思うんです。そういう層など、傍聴人に対して期待することなどあれば教えてください

(中道)
弁護士は基本的に傍聴人と関わるのは、それは依頼者にも関わることにもなるから、辛いと思うときがあるんですね。普通、訴訟に関与している方って他人と関わりたくないですし。
なので、基本的には「そっとしておいてほしい」というのが、通常の弁護人の考えなのかなと思います。


―なるほど、まぁそうでしょうね

(中道)
そうは言っても、僕なんかは裁判官がまずそうなことをしているときに、「今の傍聴人もいますけど大丈夫っすか?」的なことを言ったりするので、


―よく仰いますね。私はそのセリフすらもメモしています

(中道)

なので、僕自身は傍聴人の存在を裁判官への圧力に使っています。
その他に積極的に何か役に立てるかというと、…結構難しいんですよね、傍聴人の方がこの裁判どう見ても不適切に進んでいると思ったときに、現場で裁判官に文句を言うと退廷命令じゃないですか


―そうですね。実際の制裁裁判の一部は傍聴人ですしね。(秩わ)2号になっちゃいます

(中道)
それで、現場で文句を言えないからメモを残して法廷を終わったとします。裁判官室に抗議に行ったとしても会ってもらえない、お手紙を送ったとしても多分読まれない。
そういう中で、一つ一つの事件において傍聴人さんが何ができるのかなぁと考えちゃうと、正直思いつかないんですよ


―ですよね、難しいとは思います

(中道)
でも、いらっしゃること自体が役に立つと思ってくださるのが一番なんじゃないかなと思います


―恐らく、傍聴人自身も必要以上に自分らの立ち位置を高めようとは思ってはいないけれども、石ころとは思われたくないし、市民が見てるぞ!とは言いたいんです。そして、日本の司法に関わっていたいと。
 そういう意味では、見るところは見て、法律の専門知識はなくても、周囲にもっと興味を持とうよ、という役割もあるのかな。

(中道)
それでいうと思いついたのが、普通さんが僕と面識がなかった時期にtwitterで僕の裁判についてもツイートしていたじゃないですか


―はい、ありますね

(中道)
あの時期のツイートと、知り合って以降だと、僕は出会う前のツイートが好きなんです


―そ、それは?(ドキドキ)

(中道)
一定の距離感があって、私のことを普通さんの視点で、遠慮なく見て、遠慮なく発言されているのが一番嬉しいです。やっぱ知り合い過ぎると遠慮するんですよね


―まぁ、それはありますね(苦笑)

(中道)
あの時、普通さんに「言葉遣いが悪い」というようなツイートされているんです。
今回の件でも僕はお下品なお言葉を吐いているので、それ自体は普通さんも否定しないですよね?


―それで言うと、距離感というよりも意図がわかるようになったということですね。今回は戦う意図が分かった上での発言で言葉遣いはあまり気にならず、当初は言葉遣いの方が目に行ったというのはありますよね

(中道)
あー、そういうことなら前進したってだけだから、悪くはないのか


―実際、法曹関係の方が、何名か私のtwitterなり、発信を見て下さるとお声をかけてくださる方もいるんです。ですが、できるだけ言おうとは思っています。まぁ顔が分かる分、明らかに不快になるだろうなというのは言わないですけど。
ただ先生からそのように仰っていただいたというのは私への叱咤だと思い頑張ります

(中道)
そうですね、僕に対して自分の思ったことを遠慮して言えなくなるのであれば、関係を絶った方がいいと思います。そうでないと、傍聴者としての役割を果たせていないと思う。

なので、ここが傍聴人が役に立てるポイントなのですが、まぁ名誉棄損との境目が難しいんで、アドバイスとしては難しいのですが…。
法廷を見て、その人の目で見たこと、感じたことを普通さんのようにツイートするというのは、僕にとっては勉強道具ですよね。


―ありがとうございます!

(中道)
皆さんに推奨すると「誹謗中傷してもいいんだ」と捉えてしまう方も1000人いれば含まれてしまいますので、皆さんに公式に言うのはしんどいんです。でも、例えば他の傍聴人の方で、「こんなことがありました」、「こんなこと言っていた」、「私はこう思った」くらいの意見表明というか、議論に留まるものであれば全然やっていただいていいんじゃないかなと思いますね


―これは一般傍聴人もすごく励まされたと思います(動画ではカットしててごめんなさい)

(中道)
だって、傍聴というのは裁判が公平に進むための制度ですが、裁判に関わってるのは裁判官だけじゃないですからね。私も批判される立場だし、検事だってそう。
まぁだけど、被告人だとか、民事だと訴訟当事者とか、立場のない人まで言うのはちょっと


―それはそうですね

(中道)
被告人であれば意見の論評だとしても、あなたが言っていることは被告人像を捉えていないと批判するかもしれませんね、被告人を守るのが僕の役割なので。そういう一般傍聴人に対して、それは止めてくれって抗議をするかもしれませんね。
ということはあるかもしれないので、被告人とか個々の証人というのはちょっと、監視の対象という感じではないのではないかな。
そうは言っても、メディアが一番注目するのはそこなんですけどね。

本来メディアというのは、私たちの仕事が公正になされているかというのを監視していただくのが役割だと思うので、あまり立場の弱い人にフォーカスして、その人の賞賛や批判を集めたりするのは、あまり関心はしないけど…まぁ事実を伝えるという意味ではしょうがない面もあるかなぁとか


―それは私も肝に銘じます

(中道)
いえいえ。まぁちょっと難しいところはあるけど、それをしなければ物事が伝わらないときもあるし、とっても難しいですよね


―そうですね…
 これも聞かせて下さい。もっちんさんから。
 刑事弁護をされる中で、モットー、大切にしていることを教えてください

(中道)
ちょっとかっこつけますね。
好きなバンドでAqua Timezというバンドがあるんですけどね。そのバンドの曲で「生きて」という曲がありまして、その歌詞が一番好きなんです。

「私はいい人じゃない」ってあなたは言ったけれど
僕もねいいやつなんかじゃない

Aqua Timez「生きて」

これがモットーですね


―そのこころは?

(中道)
僕も同じ弱さを持ってる一人の人間です、ということです


―先生の弁護ってがするんです。そこが傍聴人の心を掴んでいるのかなと。

(中道)
自然にやっているつもりなんですけどね


―これも聞かせてください。えみちさんから
 集中したい時に食べるものはなんですか?起案であったり集中しなければいけない時間ってあると思うのですが

(中道)
うーん、ないですね。飲み物かな。あまりこだわりはないですね?


―そうですか…、大阪地裁にコンビニがあるんですけど、「法曹関係者は集中したいときにこれを食べている!」っていう商品企画があれば、結構面白いかなと思っていろんな人に聞いているんです

(中道)


―ちなみに地裁付近でオススメのお店とかありますか?

(中道)
裁判所近くにある「黒鬼」ってお店はよく行きますね

―じゃあ、今度行ってみますね(これでtwitterのいいねを稼ぐぞ!フヒヒ)


終わりに

―たくさんいろいろな話を聞かせていただいて勉強になりました

(中道)
いえいえ、不服申し立ての起案を頭でまとめながらやってるんですけど、随分と刺激になりました


―刺激?

(中道)
内容を構成するにあたって、良い刺激をもらえました。自分の事実関係もいい復習になったですし。


―今回のインタビューをご覧いただき、裁判、というか弁護活動に興味を持たれた方もいると思います。そんな方は是非、各地の裁判所へ行かれて、頑張っておられる中道先生をはじめ、各弁護士先生を傍聴して応援してあげてください

(中道)
ヤバいヤバい緊張するがな、勘弁してください。他のいい先生のところ見に行ってください。
まぁでも、今回の被告人さんは色んな人に見て欲しいとおられるから、今回の事件は遠慮なく来ていただいて大丈夫です。


―今日はありがとうございました。すごく分かりやすい話で、勉強になりました。知らないこともたくさんありました。もしよろしければ、またお越しください。



改めまして、お忙しい中、ご協力いただいた中道先生の深く感謝申し上げます。2時間オーバーのインタビューでございました。

僕って、なんでそんなに?って自分で思うくらい裁判のことが好きなんですよ。皆さんご存じかとは思いますが。
それって具体的になにがってことでなく、携わっている方、すべてにそれぞれの刺激を受けるので好きなんですね。
なので、途中で出た、裁判がしっかりなされるように、提言したい部分ってのもあるわけなのです。

僕が脱サラして、裁判の発信をするようになって1年数か月なのですが、その短い期間の中で何度も裁判の見方が変わっています。人として生きるための法律の素晴らしさを感じる一方で、人として生きるために法律に足りないと思う部分と。
今回、また新たな側面を見ることができ、一つ自分の中で成長できた気がします。


いやぁ、もっと裁判や法律について知りたくなってしまいました。
裁判所内の書店で取り寄せた、法学部学生が基礎として使う刑法と刑事訴訟法の本を読みながら、今後の頑張りを決意したのでありました。


最後に、話題の事件や話題の方など今後も幅広く扱っていきたいと思っています。月額プランの方では、他では発信していない専用記事などもあります。
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