ハムレット131 Ⅳⅰ

王妃 何処かへ仕舞いに行きましたわ。殺めた亡骸を引きずって― あの子、気触れといっても、死者
には健気なところを見せてくれたのだわ… 荒石(あらいし)にうち混じる黄金(こがね)のように― 為したことに涙して…
王 さあ、ガートルード、来るのだ。朝ぼらけのうちに、何はともあれ、あいつを船で送り出してやろう。今ひとたび、この恥ずべき所行は厳粛ながらも見過ごしてやり、上手く逃げ道をつけてやらねばな。   
―おおい、ギルデンスターン!
(ローゼンクランツ、ギルデンスターン、再び入ル)
御両人にだが、今しばらく手を煩わせてくれるか。ハムレットの奴、気が触れたのだよ。ポローニアスを刺してしもうた。今、母親の部屋からポローニアスを何処かへ引きずりだしているところだよ。あいつを捜し出してくれ。言葉はよく選んでな! 亡骸は礼拝堂まで運んでくれるか。頼むぞ、大急ぎでだ!
(ローゼンクランツ、ギルデンスターン、下ル)
さあ、ガートルード、信の置ける臣(おみ)に集まって貰い、知らしてやろう。余が為さんとしていること、そして折悪しく為されてしもうたことをな。さすれば、浮世の地の果てまでも吹っ飛んで行きそうな口の端も、的はずれな大砲そのものだ― さがなき毒の弾(たま)は余の名にはあたらぬ。空を切るばかりだ―
さあ、行こう― 我が魂、乱れに乱れ、鬱々と愉しまぬよ。
(王、王妃、下ル)

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