おかべ、発酵中

発酵を身近に感じている人です。 発酵する前は英語教材の編集者でした。 主に発酵に関す…

おかべ、発酵中

発酵を身近に感じている人です。 発酵する前は英語教材の編集者でした。 主に発酵に関することを書いていきます。

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    発酵に関する文章です。できる限り、身近な発酵をお伝えします。

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【発酵】ビールの泡の正体とは?

二十歳になり、お酒が飲めるようになり、ちょっとだけ楽しみが増えた。はじめは苦いだけと思っていたビール。それも「とりあえずビールで!」という言葉を覚えてからは、やっぱり舌は慣れてくる。ピーマンと同じ。年を重ねるごとに美味しく感じる。苦いビールは香るビールへ。 ということで、今回はビールの発酵についてお話していきたいと思います。 ビールの製法そもそも、ビールがどのようにして作られるか知っていますか? ビールを作るために必要な材料は、大麦(麦芽)・ホップ・米・トウモロコシです

    • 掃除の編集

      年末の大掃除。 ふだんの生活では目の届かない場所を掃除する。窓ガラスやエアコン、カーテンレールの上。部屋の隅々までキレイに掃除していく。窓から引っ掻くような風が吹き込み、今年の終わりを告げる。今年の汚れは今年のうちに。それが年末の大掃除。 大掃除に取り組む前、何から手をつけるべきかを考える。この作業を意識的にも、無意識的にもおこなう。まずは前日から散らかしっぱなしの服を洗濯機へ突っ込む。そのままスイッチを押し、リビングへ戻る。かたくしぼった雑巾で窓ガラスを拭いていく。ガラ

      • 今年もメジロが遊びにきました。

        「今年もメジロが遊びにきました」 動画つきで送られてきた母からのメール。庭に生えた小さな木。1本の枝に刺さる半分の蜜柑。少しだけしぼんだそれに、さえずりとともに緑色の小さな鳥がやってくる。1回、2回。蜜柑をつつく。飛び去ったと思えば、また戻ってくる。そして蜜柑をつつく。 メジロなんて、久しく見ていない。実家にいるとき、仏壇に供えていた果物が傷むと、半分に切って木の枝に刺していた。すると、メジロが顔を出す。いまでも実家の庭には季節がおとずれているようだ。 最近、季節

        • ああ、無情

          小学生の頃、子守唄代わりだった絵本の読み聞かせ。その思い出をもう一度。開いた絵本は『ブレーメンの音楽隊』。 ゆっくりとページをめくる。次々とページをめくっていく。記憶違いだろうか。話の内容もそうだが、絵の鮮やかさに惹かれた。輪郭から大きくはみ出した色。青と黒で表現した真っ暗な夜。キラキラした黄色の明かり。ギザギザした黒い影。知らない絵本だった。 ページをめくるごとに、鮮やかな世界が飛び出してくる。知らない世界が飛び出してくる。なんだか、あらためて絵本の魅力に触れたような気

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        【発酵】ビールの泡の正体とは?

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          2本

        記事

          ナイーブを求めて

          タゴールの詩は、絵本のように自然を語り、祈るように愛を語る。どれもが情緒的で、少しだけ甘美的。 *** 言葉をもたない生き物たちが語りかけてくる。太陽や月も語りかけてくる。朝だって語りかけてくる。普遍的な存在がヒトのように振る舞う。だけど、彼ら、彼女らはヒトとは違う。ただ愛を持って漂うだけ。善悪の判断はない。空は晴れるし、雨も降る。花は美しく咲くし、美しく枯れる。朝と夜はそれなりに時間を守る。あるがままに漂うだけ。ナイーブに漂うだけ。 ただ、私は、彼の詩をナイーブに受け

          ナイーブを求めて

          数学はきまぐれ

          数学者である岡潔の著に『春宵十話』がある。そこで「クリフォードの定理」が出てくる。岡潔はその定理を「奇数個の直線は円を決定し、偶数個の直線は点を決定し、直線の数をいくら増やしてもそれは変わらない」と説明し、「これがいかにも神秘的に思えた」と言う。文字だけでは、その神秘さは伝わってこない。だったら、実際に作図するしかない。 *** 紙とペンを取り出し、岡潔の言葉通りに図を描いていく。1本の直線を引く。何もはじまらない1本。直線の数が0と1は定理に含まれないようだ。追加で直線

          数学はきまぐれ

          ラフマニノフ感覚

          ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。 この曲から「美」というものを考えるようになった。 第1楽章の冒頭、ピアノの音色が繊細に奏でられる。一滴のしずくが湖の水面へ落ちるような、静かな音。つぎつぎとしずくが落ちていく。次第にしずくの重さは増していく。そこから生まれる音が湖を揺らす。水面へ落ちたしずくは混じることなく、いつまでも沈み続ける。この曲を聴いているとき、その湖の中にいるような感覚になる。そして、思い出す。 ****** 6歳のころ。祖母にクリスマスコンサートへ連れて

          ラフマニノフ感覚

          広く、人間に

          休みの日は昼前に起きて、紅茶をいれて、とくに上手くもないギターを弾く。 学生時代に買った1万円のEpiphoneと、友人から譲ってもらったTaylorのミニギター。この2本をその日の気分で弾きわける。少し前までは、ジャガジャーン、と6弦をかき鳴らしていた。だけど、最近はフォークソングでしんみりと。 フォークソングを聴きはじめたのは、高田渡の「生活の柄」から。「歩き疲れては 夜空と陸との 隙間に潜り込んで」という歌詞が、とても綺麗で、何度も繰り返し聴いた。電車の中。散歩の途

          タンポポの根っこ

          道端に生えているタンポポ。根っこから引き抜こうとするが、なかなか抜けない。まわりの土を掘る。まだまだ深そうだ。そのまま引き抜けば、途中で千切れてしまう。少しずつ掘り進めていく。このタンポポに、どれだけの根っこが広がっているのだろうか。そんなことを考える。 *** 自分の考えが伝わらないことがある。そうしたときは伝わるまで言葉を続ける。それでも伝わらない。相手はくみ取ろうとしてくれるが、伝わらない。どうしてだろうか。話し方が下手だから。語彙が少ないから。いや、そうではない。

          タンポポの根っこ

          文字が見せてくれる景色は、ときに映像を超える

          文章に動きや音はない。あるのは文字だけ。その文字が見せてくれる景色は、ときに映像を超える――。 文章は読むことでしか、中身を知ることができない。同じ文章を読んだとしても、言葉の持つ意味は人によって異なるため、その印象はさまざま。結局のところ、すべてが読み手に委ねられる。 映像は動きや音など、その空間を伝えることに適している。何が動いているのか、何が鳴っているのか、簡単に見てとれる。映像は見えているものがすべてであり、それ以上でもそれ以下でもない。常に第三者の視点に立ったも

          文字が見せてくれる景色は、ときに映像を超える

          動かされた心 動かす身体

          感動はとても刹那的。 その瞬間は心を動かされるが、時が経てば「感動した」という経験しか残らない。そこからもう一歩。動かされた心から動かす身体へ。 *** 『ジョジョ・ラビット』という映画を観た。舞台は第二次世界大戦下のドイツ。ナチスへの忠誠心を持つ10歳のドイツ人少年、ジョジョ。彼の空想上の友だち、アドルフ。そして、ジョジョの家の隠し扉の中にいたユダヤ人少女、エルサ。知的で聡明なエルサと言葉を交わしていくうちに、ジョジョは彼女に惹かれていく。 映画には、反ナチ運動をお

          動かされた心 動かす身体

          想いと聡明さ

          言論の自由を制限された時代に書かれた文章には、想いと聡明さがある。 日中戦争から太平洋戦争と、日本が、世界が、狂った方向へ進んでいった。何が正しく、何が間違いなのか。個人の考えなど表に出せない時代。しかし、どんな時代だろうと、子どもたちには伝えるべきことがある。そうして生まれた作品が『君たちはどう生きるか』。 主人公であるコペル君(15歳)の成長を描くとともに、叔父がコペル君へ伝えるべきことを「おじさんのノート」として書き綴る。ふとしたときに感じたこと。自分とは異なる他人

          ブラックホールを見つめる

          2019年4月10日、ブラックホールの撮影に成功したと報道があった。意外だった。ブラックホールが撮影されていなかったなんて――。 ****** 天体のニュースを聞くと、いつも高校時代を思い出す。 地学の授業前、教師が「きょうは流星群が見られるぞ」と興奮気味に話していた。たしか、しし座流星群だったはず。当時から天体には興味があった。そのときは、ブラックホールよりも、目に見える星が好きだった。オリオン座のベテルギウスとか。おおいぬ座のシリウスとか。おとめ座のスピカとか。とに

          ブラックホールを見つめる

          見えるシイタケ栽培

          シイタケ栽培をはじめた。 シイタケには、原木シイタケと菌床シイタケの2種類がある。原木シイタケとは、クヌギなどの原木に菌を植えつけて栽培されるシイタケ。乾燥させた原木に種菌を植え付け、菌糸を原木に活着させる。あとは少しの手間はあるものの、自然の力で成長させる。栽培期間は2年以上で、収穫時期が春と秋のみ。そのため、一年を通して市場に流通するのは乾シイタケがほとんど。 一方、菌床シイタケは原木の代わりにおがくずや穀物などを主原料とした菌床で育てられる。真っ暗で湿度の高い室内で

          見えるシイタケ栽培

          味噌づくりと思考

          煮た大豆に、米麹や麦麹などのカビ菌で発酵・熟成させたものが味噌。味噌を貯蔵する味噌蔵には、いくつもの巨大な桶がある。その巨大な桶の中でじっくりと発酵させることで、味噌がつくられる。 桶の中には麹菌や乳酸菌など、多くの菌が住みついている。何十年も住み続けている菌や、最近引っ越してきたばかりの菌まで、桶によってさまざま。 菌の種類や数など、桶ごとに環境が異なるため、味噌の風味にも若干の違いが生じる。甘みが強いものからあっさりしたもの、酸味があるものから苦みがあるものまで。 そ

          味噌づくりと思考

          当事者として~75年目の夏~

          「うちはしあわせになってはいけんのじゃ」 井上ひさしの戯曲『父と暮らせば』に登場する美津江の台詞。 広島の上空500Mで爆発した原子爆弾。生き残ってしまった自分は幸せを選んではいけない。自分が幸せになってしまったら、犠牲になった人たちに申し訳が立たない。 原爆は、それによって命を落とした人だけではなく、生き残った被爆者をも苦しめる。そんな現実を日本人だからではなく、人間として考える。当事者として考える。 *** 15年前、小学生だった私は長崎で被爆者の話を聞く機会が

          当事者として~75年目の夏~