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【発酵】菌は生きている? スパークリング日本酒


ひいきにしているお店がある。

新鮮な魚料理と日本酒が味わえるお店。脂ののった旬な魚を、刺身やら、焼きやら、煮つけやらでいただく。

日本酒は、一人暮らし用の冷蔵庫の中で冷やされ、好みの銘柄を自分で選ぶ。決まったら「日本酒1杯いただきます!」と店主に一声かけ、海外のコインをチャリンと1枚。何杯飲んだかはコインが知らせてくれる。そばちょこに日本酒をなみなみ注ぐ。そして、口元をおちょこに近づけ、ズズッと一口。

あーたまらん。


ということで、今回は日本酒の発酵についてご紹介します。


日本酒の製法

日本酒の主な原材料はお米米麹のみ。これらを使って、甘口だったり、辛口だったり、微炭酸だったり、さまざまな日本酒がつくられます。

そんな日本酒の、おおまかな製造工程は以下のとおり。

【日本酒の製造】
①蒸したお米に種麴をまぶし、米麴をつくる
②米麹に蒸したお米と水、酵母を加える(酒母)
③酒母に水や蒸したお米を加えて発酵させる(醪)
④醪を搾り取り、火入れして、ろ過する


はじめに、米麹をつくります。蒸したお米に種麴をまぶし、麹菌を繁殖させます。その麹は、麴菌に最適な環境(気温30℃、湿度60%)に整えた麴室(こうじむろ)と呼ばれる場所に2日ほど置きます。すると、お米に綿のような麹がびっしりと繁殖しているわけです。

次に、培養させた米麴に蒸したお米と水、酵母を加えて、酒母をつくります。この酒母が日本酒のもとになります。この工程では、蒸したお米に含まれるデンプンを米麴によって分解させていきます(加水分解)。これによって、デンプンはブドウ糖に分解され(糖化)、そのブドウ糖は酵母によって分解されます。これらの工程を経て、酒母ができあがります。

デンプンをブドウ糖に分解する理由は、「ビール製造」に関する記事でもご紹介しましたので、よかったらどうぞ。

さて、この酒母に水や蒸したお米を足していき、発酵を進めていきます。この状態を(もろみ)と呼びます。発酵が進んだら、この醪を搾り、液体だけの状態にします。その液体に火入れ・ろ過を行えば、日本酒(清酒)のできあがりです。


日本酒の発酵

酒母をつくる際、酵母によってブドウ糖を分解させると説明しましたが、この分解がアルコール発酵と呼ばれるものです。

【アルコール発酵】
C₆H₁₂O₆ → 2C₂H₅O + 2CO₂+ 2ATP
※ATPは生命が生きていくために必要なエネルギーのことです。


C₆H₁₂O₆がグルコース(ブドウ糖)、C₂H₅Oがアルコール、CO₂が二酸化炭素です。米麹によってデンプンがブドウ糖に分解され、そのブドウ糖を酵母がエサとして分解していきます。これにより、アルコール二酸化炭素が生成されます。


菌が生きている? スパークリング日本酒

ちなみに、日本酒には「スパークリング日本酒」というものが存在しますが、あのシュワシュワの正体はアルコール発酵によって生成された二酸化炭素です。

普通の日本酒は瓶詰めする前に火入れを行い、菌たちを死滅させ、これ以上発酵が進まないようにします。つまり、二酸化炭素を発生させないようにしているのです。

一方、スパークリングの場合は、アルコール発酵が続いている醪に火入れを行わず、「生」の状態で瓶詰めします。そのため、瓶内でも発酵が進み、生成された二酸化炭素が瓶内に閉じ込められ、あのシュワシュワをつくり出します。これが日本酒にもスパークリングが存在する理由です(人工的に炭酸ガスを注入する場合もあります)。


純米酒の「純米」とは?

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日本酒のラベルに「純米」「吟醸」などと書かれていたりしますが、それらが何を意味しているのか知っていますか。

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上の表にあるように、これらは日本酒の種類を表しています。

日本酒の種類は、「精米歩合」「アルコール添加の有無」によって分けられています。純米酒はお米と米麹と水だけでつくられた日本酒であり、アルコールが添加されていません。また、精米歩合が60%以下(米粒を40%以上削る)の日本酒は吟醸酒と呼ばれます。

一般的には、精米歩合が低い(米粒を多く削っている)ほど雑味がない日本酒になると言われています。ただ、こればっかりは好みです。透き通った純米酒を好む人もいますし、雑味のある味が好きな人もいます。あらためて、自分の舌に聞いてみるのもよいかもしれませんね。


同じ日本酒は二度と作れない

お米と米麹だけで、あの幸せな液体をつくるわけですから、日本酒の発酵には惹きつけられるものがあります。また、お米と米麹だけで日本酒の味が決まってしまうのも、その難しさも感じとることができます。

日本酒づくりは、杜氏・蔵人さん(日本酒をつくる職人)の腕によるものではありますが、お米の種類や麹の種類によっても、その味わいは変わってきます。また、まったく同じ原材料と製造工程だとしても、酒蔵が異なれば、味も変わります。杜氏・蔵人さんの違いだけでなく、酒蔵に長年住みついた菌たちによっても味が変わるからです

日本酒づくりをはじめてから毎年、いろんな菌が酒蔵に訪れ、彼らが日本酒に微妙な変化を与えてくれるのです。つまり、同じ日本酒は二度とつくることができず、日々、新しい日本酒になるのです。

日本酒は本当に奥深いお酒です。


さいごに

日本酒の発酵、いかがでしたでしょうか。

最近は、若者の日本酒離れが叫ばれているようです。日本酒を飲まなくなった人。その気持ちはよくわかります。だって、いまはいろんなお酒があるのだから。お酒は自分の好みで飲んだらいいと思います。無理して飲むお酒なんて、ただのアルコールです。なので、私も自分の好みである日本酒、ビール、ウイスキー、ハイボール、梅酒、サワーを飲み続けたいと思います。

では。

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