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Collective Dialogues

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創造的で豊かな対話を実践するための工夫やヒント
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2020年7月の記事一覧

もしも村上春樹の小説の主人公が傾聴をめちゃくちゃ頑張ったら①【オウム返し編】

「先週は大変だったわ。請求書のせいで。」 彼女は5杯目のウォッカトニックに口をつけてから、僕を睨みつけながら、そう言った。 「請求書?」 僕は彼女が言った言葉をそのまま繰り返した。オウム返しという技法だ。オウム返しは単純に話し手が言った単語を繰り返す。ただそれだけだ。 「そしたら、請求書には必ず見積書番号が必要だって相手は言うの。上司もそれなら出しなさいって。そういうのっておかしいよね?」 「見積書番号」 オウム返しは、ただ相手が言う単語を繰り返すだけだが、どこを繰り返

オンライン会議の休憩はSpatialChatで

オンライン会議の休憩はオフラインにすることだけではないZoomやTeamsの会議や研修をしていると、合間の休憩というのは、ミュートにして、カメラオフにして、オンラインから抜け出ることが一般的になっています。そこで言われることは、休み時間は独りぼっちな感じがすると…。オフラインでの会議の休憩は休むだけが目的ではなくて、実は会議の延長みたいな雑談や、目的とは違う話をする雑談によって、会議自体がさらに活発したりというコミュニケーションの追加的要素があると思います。 オンラインの会

オンライン会議では期待の共有方法もオンラインならではに変えました

先日、初めてのクライアントさんから半日使った長い会議のファシリテーターの依頼があり、オンラインで10人のグループにファシリテーションさせてもらいました。 必要な参加者で構成された会議ではそれぞれの参加者には期待がある会議のファシリテーターを依頼された時に私が行うファシリテーションの中で、クライアントさんから期待されていないものの1位2位を争うものに、「参加者同士の期待」のすり合わせというのがあります。「会議自体の目的を明確にしましょう」というのはよく聴くでしょうし、「参加者

人への共感に満ちた洞察: 平田オリザ 『わかりあえないことから』

コミュニケーションは難しいものだ。そう感じている人は多い。そこには、本当はわかりあえるはずだという前提がある。本書は「わかりあうこと」を重視する風潮へのアンチテーゼから出発する。そして、どんな態度でコミュニケーションと向き合えばよいかを明確に示す。 本書では、演劇の授業での著者の経験も踏まえ、コミュニケーションに関わる微妙なニュアンスや状況が的確に述べられている。コミュニケーションに関わる議論は抽象的になりがちだが、記述は具体的で深い洞察に満ちている。 コミュニケーション

リモートワークの「チームビルディング」に必要なたった1つのこと

こんにちは、こがねんです。メガベンチャー人事で「組織開発」をしています。 「組織開発」とは「組織がよりよくパフォーマンスするために行うありとあらゆる働きかけ」のことですが、今日のnoteはこの「組織開発」の一大テーマの1つ「チームビルディング」についてのお話です。 リモートワークのチームビルディングは「今そこにある危機」「チームビルディング」とは「グループ(ただの人の集まり)」を「チーム(共通目的に向かって協働する人の集まり)」にすることです。どんな組織もミッションやビジ

UXリサーチにまつわる主観と客観の対立構造を超えた「間主観性」

まえがきUXリサーチにおいて、定性分析・質的分析をする場面があります。これらが提示される時に、安易に量的分析に寄せてしまったり、変に貶められてしまったりすることが多々あります。(補足すると、混合法をとられたり、しっかり分けて量的分析に取り組んでいらっしゃる方・企業もたくさんあります。 そういったことを回避するために、「間主観性」といった言葉を紹介しつつ、UXリサーチとどのような関係にあるのかを考えたいと思います。 主に以下の「質的研究の考え方」からの引用が多いので、興味を

ファシリテーションの羅針盤

ファシリテーションを説明したりする時に「ゴールに向かって促進させる」とは絶対言ってなくて、最初に目指すゴールはあっても、途中で変わることもあるし、明確で具体的な決まったゴールに持っていくのは、私にとってのファシリテーションではなくて、説得とか、落とし所を探すというイメージになります。(もちろん、それ自体がプロセスの中で出たものなら扱いますが…。) あー、話したい話からそれてしまいましたが、走り書きたいと思ったのは決まったゴールではなく、「良い方向」にという感じの「良い」が実

決まっている仕事と決まっていない仕事

仕事って何か?ということを改めて話し合うことって少ない でも、人それぞれに思っていることは違うので、言葉として仕事をお願いしたときに、違うように相手が受け止めることも多いのではないだろうか その中でも身の回りで、いざこざの原因になりやすいのが、こちらのAとBだと感じる 決まっていることをするのが仕事:A 決まっていないことをするのが仕事:B AとBにまつわるいざこざストーリー全社でBをやっていこう!って言われてBをしてみたら、Aだろって、、 Bー、Bー いうけど、結局Aな

組織に対話をどう持ち込むか?

きっかけはメッセージからManagement 3.0のオンラインカンファレンスが日本主催で行われるので、公募セッションに応募しませんか?そんなメッセージが飛び込んで、「おおお、それは応募したい!」となったので、Management 3.0 について自分が伝えたいこと、考えていることはなんだろうと心の棚卸しをしてみました。つらつらといつものように書きながら、浮かんできたものはこちら。 「Management 3.0 は組織の対話を促進する」「え?どういうこと?組織を変えてくれ

対話のメディアとしての技法: 堀公俊/加藤彰 『ファシリテーション・グラフィック―議論を「見える化」する技法』

会議やワークショップに活用できるグラフィックスが、具体的な実例とともに多数掲載されている。 この本自体は具体的な事例を提示しながら会議やワークショップをグラフィカルに描きながらファシリテーションしていく方法について述べている。事例の数も多く、誰でも使える簡易さがあります。友人や知人で読んでいる人も少なくない。 本書ではホワイト・ボードに描いていくということは「上手い下手ではないんだ」というメッセージが語られる。その視点は「対話を促進させるきっかけけを生み出すのは、他の誰か