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人事ガチャ

日本的人事制度の特徴の一つとして、定期的な人事異動(ジョブローテーション)がある。

このジョブローテーションにより不慣れな業務に就くことは育成面でメリットがあるとされるが、企業側には「生産性の一時的悪化」や「学習コストの増加」、労働者側には「短期的な成果低下」、「自己のキャリアデザインとの乖離」等のデメリットの可能性がある。

このようなデメリットがあるにも関わらず、何故、企業はジョブローテーションを行うのだろうか?

ジョブローテーションによる効果は、小池(1997)による知的熟練論により説明されてきた。小池によれば、知的熟練を効果的に発生させるには、補完性の高い職務への異動が合理的であるとされている。

一方、ワーキングパーソン調査(2010)によれば、職務内容の異なる異動の割合が37.8%との結果が出ており、知的熟練論からは非合理な異動が行われていると言える。
このような職務内容の異なる異動に関して、平野・内田・鈴木(2008)は、補完性の低い職務への異動(非連続的な異動)により「知的結合(新結合?)」による熟達が発生することで「価値創造(イノベーション)」が起こるとしている。

ただし、非連続な異動には、「生産性悪化」や「短期的な成果低下」等を増加させる可能性があると考えられ、また、笠井(2011)の調査では、全く異なる異動により、「知的結合」による熟達が発生する可能性は低いとされた。

以上のことから、ジョブローテーションによる熟達を発生させるには、これを補完する要素が必要であると考える。この研究によって、この要素を見つけたい。

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