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カズオ・イシグロ『夜想曲集』徹底解説

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「シヴァとリンガとハイファイセット」~『夜想曲集』#2「降っても晴れても」~カズオ・イシグロ徹底解剖・第67話

し、シヴァ!? そう。多くのヒンドゥー教徒に最高神として崇められているシヴァだよ。 イシグロ&土屋政雄氏ふうに言えば「ヒンズーのシバ」だね。 第2話のタイトル『Come Rain or Come Shine』っていうのは、主人公レイモンド(愛称レイ)が「シヴァ」であることのジョークでもあるんだよね。 『Come Ray or Come Shiva』なんだよ。 前回を未読の人は、こっちを先に読んどいたほうがいい。 ど、どゆこと? 小説の最初のほうで、レイモンド

「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」~『夜想曲集』#2~カズオ・イシグロ徹底解剖・第65話

しかし驚いたな。 イシグロが短編『降っても晴れても』の中に潜ませた『スペイン革のブーツ』に、あんな意味があったなんて… しかもそれだけではなく、松本隆のパクリ疑惑まで晴らすとは… お前ら大丈夫か? あくまでオッサンの「推測」に過ぎんハナシやで? このシリーズ全般に言えることやけど、何でも鵜吞みにしたらアカン。 どの口が言うんだ? ナンボクの言う通り、すべては僕の推測に過ぎないかもしれない… 本当の答えは、風に吹かれているんだよ… そうゆうのも要らん。イラ

「ぼくたちの失敗」~『夜想曲集』#2~カズオ・イシグロ徹底解剖・第63話

さて、居間を物色したレイモンドは、キッチンへ向かった。 それにしても居間で発見した3枚のCDの秘密には驚いたね! まさかあんな暗号になっていたとは! 特に「フレッド・アステア」は、サブイボMAXやったで。 有り得ないよな… 何度も言ってるだろう。 イシグロ文学においては「有り得る」ことなのだ。 太宰のように。 さて、レイモンドはキッチンテーブルの上に置かれていた「紫のノート」を目にする。 もちろんエミリのものだ。 もうパターンは読めたで! 「紫のノー

「イシグロの暗号」~『夜想曲集』#2~カズオ・イシグロ徹底解剖・第62話

さて、どんどん進めるよ。 前回を未読の人は、こちらをどうぞ~ 主人公の「ぼく」ことレイモンドとチャーリーがフラットに戻ると、エミリが「フィナンシャルタイムズ」を読んでいた。 エミリを見て「ぼく」は驚く。以前よりかなり太ってて、口元がブルドッグみたいだったからだ。 ひでえな(笑) なぜ「フィナンシャルタイムズ」なのか、わかるか? なぜ? たまたま読んでただけじゃないの? 『日の名残り』の「訳者あとがき」でも土屋政雄氏は「ニューズウィーク」を使っていたよな。

「ロンドンって、どこ?」~『夜想曲集』#2~カズオ・イシグロ徹底解剖・第61話

じゃあ第2話『Come Rain or Come Shine/降っても晴れても』の解説を始めよう。 登場人物は、この三人。こんな役割になっていた。 前回を未読の人はコチラからどうぞ! しかし衝撃的だったな… せやな… まだサブイボ立っとるわ。 冒頭に提示された4曲の「出だしのフレーズ」によって、この小説が「新旧聖書」を元ネタにしたものであることが暗示されたということは話したね。 続けて語り部の「ぼく(イシグロ)」は「今どきの若者」と「自分たち世代」の「音楽へ

~『夜想曲集』#2「 Come Rain or Come Shine /降っても晴れても」~カズオ・イシグロ徹底解剖・第51話

~~~ 三日目:夜 福江島(長崎五島) ~~~ だから、二人は星空の下で踊りつづけた… お終い… え? それでおしまいなの? タイトルの『降っても晴れても』は、最初のほうでチョコッと名前が出てきただけやんけ。 しかも小説では雨も降らん。 どないなっとんねん? そこはあとでゆっくり考えていくとして… 何か気付いた点は? 引っかかったこととか。 主人公のレイモンドって「レイモンド・カーヴァー」のことじゃないのか? 随所にカーヴァ―の短編小説のタイトルや小ネ

衝撃!カズオ・イシグロ『夜想曲集』#1「 Crooner /老歌手」で歌われる『恋はフェニックス』に隠された秘密のメッセージとは!?~『日の名残り』徹底解剖・第47話

~~~ 三日目・夜 五島・福江島 ~~~ さて、老歌手トニー・ガードナーは、主人公のギター弾きヤネクに対し、ある計画を持ち掛けた。 妻リンディのために、運河のゴンドラの上からセレナーデを歌いたいので、その伴奏をしてほしいと… ちなみに前回を未読の方はコチラをどうぞ! いよいよ例の3曲だな。 ベタな歌ばかりやったけどな。 ベタな歌だからこそいいのだ、ボケ。 あんなところで「ややこしい歌」を歌ってみろ。一気にムードぶち壊しだぞ。 長い歴史の中で、多くの音楽家や画家