見出し画像

深読み 加藤シゲアキの『ピンクとグレー』序「灰色と青とピンクとグレー」


前回はこちら



トクシマ県アナンシ
ヨネヅパーク
シュワちゃんの墓所



米津玄師は映画『ピンクとグレー』を観て、アルバム『BOOTLEG』のコンセプトを思いついた…

だからアルバムを象徴する曲『灰色と青』をアルバムの最後に置き、共演者として菅田将暉を起用した…



つまり米津玄師は『ピンクとグレー』の「色の意味」を見抜いていたわけだ。

なぜこの物語は「ピンクとグレー」なのか?

そしてなぜ映画版は映像が「カラーとモノクロ」で分かれているのか?



ここに知恵が必要である…

賢い人は「ピンクとグレー」の色にどのような意味があるかを考えるがよい…


色は「人物」と「建物」を指している…

そしてピンクとグレーの数字は「325」である…


「325」は3月25日「受胎告知日」…

つまり「人物」であり「建物」でもある「ピンクとグレー」とは…

フラ・アンジェリコの絵『受胎告知』の「天使ガブリエル」と「マリアの家」のこと…


『Annunciation』
Fra Angelico 


人もビルも、ピンクとグレー。



そしてこの絵には、受胎告知の場面で交わされたセリフが、まるで漫画の吹き出しのようにラテン語で書かれている…

3本ある文章のうち中央のものが聖母マリアのセリフ…

Ecce ancilla Domini fiat mihi secundum verbum tuum

英語に訳すと…

I am the Lord's servant. Let it be with me just as you have said.

(わたしは主の僕。あなたのお言葉通りになりますように)



「Mother Mary」が「let it be」と言う…

この絵から着想を得てポール・マッカートニーは名曲『LET IT BE』を作った。



Fra Angelico (フラ・アンジェリコ)と呼ばれる画家 Guido di Pietro(グイード・ディ・ピエトロ)は、欧米では Beato Angelico(ベアート・アンジェリコ)とも呼ばれる…

Fra Angelico は「天使のような修道士」という意味の「別名」で、Beato Angelico は「天使のような福者」という意味の「別名」…

おそらくポールは、イタリア語の Beato(祝福された者)と Beatles(ビートルズ)がよく似ていることに着目し、『LET IT BE』のアイデアを思いついた…



だから米津玄師もポール・マッカートニーと同じ様に「赤」を背景にした。

米津もポールも天使ガブリエルの「真似」だ。

フクロウ男は天使の投影であり、Paul(ポウル)と Owl(オウル)の駄洒落でもある(笑)



米津玄師のアルバム『BOOTLEG』とは、ビートルズのアルバム『LET IT BE』のブートレッグ、海賊版…

だから米津玄師は「あのジャケット画はエドワード・ホッパーっぽい」と言った…

hopper(バッタ)と、まがい物(バッタもん)のジョーク…



このアイデアは、おそらく加藤シゲアキの小説『ピンクとグレー』から得たもの。

だから米津玄師は『灰色と青』に菅田将暉を起用し、アルバムの曲数も「14」にした。

『ピンクとグレー』の章数と同じ「14」に。

なぜならビートルズのアルバム『LET IT BE』は、元々の曲数が「14」だったから。



つまり米津玄師は気付いていた…

「ピンクとグレー」の色の意味に…

小説『ピンクとグレー』の元ネタが、フラ・アンジェリコの絵『受胎告知』とビートルズのアルバム『LET IT BE』であることに…


米津玄師は映画版『ピンクとグレー』の色が「カラーとモノクロ」になっている意味も気付いていた。

あれが「GET BACK SESSIONS(ゲット・バック・セッション)」のオマージュであることに。



2021年にピーター・ジャクソン監督によって編集されて総カラー化されたが、それまではゲット・バック・セッションには「カラー」と「モノクロ」のバージョンがあった…

「カラー」のゲット・バック・セッションは、映画『LET IT BE』として公開されたもの…

そして「モノクロ」のゲット・バック・セッションは、未公開映像として保管されていたもの…



映画『LET IT BE』として公開された「カラー」のゲット・バック・セッションは、ビートルズのメンバー ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリソン、リンゴ・スターが「演技」したものだった。

そもそもゲット・バック・セッションとは、解散の危機にあったビートルズの4人が「GET BACK」つまり「原点回帰する」というコンセプトで行われたもの。

だから映画のためにカメラの前では「仲が良い演技」をしていたというわけだ。


しかしゲット・バック・セッションでは、メインのカメラだけでなく、別のカメラでもメンバーを撮影していた…

そこには演技ではない「リアル」な姿が映し出されていた…

それが、映画には使われなかった「モノクロ」のゲット・バック・セッション映像…


「カラー」は演技の世界で、「モノクロ」はリアルな世界…

行定勲監督の映画版『ピンクとグレー』のトリックは、これをオマージュしたもの。

残念ながら観客には理解できなかったようだが(笑)



「カラーとモノクロ」は、おそらく加藤シゲアキ本人の提案でしょう…

『ピンクとグレー』とは「LET IT BE」と「GET BACK SESSIONS」を元ネタにした物語ですから…


「GET BACK SESSIONS」で録音された『LET IT BE』『GET BACK』『TWO OF US』『THE LONG AND WINDING ROAD』は、ポール・マッカートニーがビートルズ解散の危機に悩んでいた1968年頃に作ったもの。

加藤シゲアキが小説『ピンクとグレー』を書いたのも、山下智久や錦戸亮の脱退問題で NEWS が解散の危機にあった2011年頃。

4人組のビートルズの解散問題と、4人組になってしまった NEWS の解散問題…

加藤シゲアキがポール・マッカートニーを真似るのも当然の流れだな。



しかも、頭文字を大文字にすると「受胎告知」を指す言葉「annunciation 」は、元々「お知らせ・ニュース」という意味…

NEWS 解散の危機にあった加藤シゲアキが小説の元ネタにするには、うってつけと言える…



小説『ピンクとグレー』が発表されてから十年以上経つが、ビートルズ『LET IT BE』やフラ・アンジェリコ『受胎告知』との関係を指摘した者は誰もいない。

「ピンクとグレー」の色の意味、そして各章につけられた「ドリンク」の意味…

唯一見それを抜いていたのは、菅田将暉を起用して『GET BACK』のオマージュ曲『灰色と青』を作った米津玄師くらいだろう。



せっかくだから、やりますか?

『ピンクとグレー』の完全解説を…


カヘッ、カヘッ、カヘッ(笑)

こうなると思っていたよ、最初から。

そのためにお前はここへ来たのだ。光の国、アナンシへ。


では、第一章から見ていきましょう…

第一章のタイトルは「24歳 ブラックコーヒー」です…


待て。大事なものを忘れてるぞ。

物語にとって、とても大事なものを。


あっ… そうでした…

物語のテーマを象徴する言葉、読み解く鍵となる、エピグラフ(epigraph)だ…


『ピンクとグレー』の巻頭に記されたエピグラフは、

but it did happen

だったな。


but it did happen…

しかしそれは確かに起きた…

このフレーズは、おそらく Daniel Johnston(ダニエル・ジョンストン)の歌『The Beatles(ザ・ビートルズ)』からの引用でしょう。



And everybody wanted to be like them
Everybody wanted to be the Beatles
And I really wanted to be like him
But he died
A legendary rock group
It's history now to read
Like a magical fairy tale that's hard to believe
But it really did happen
Four lads who shook the world
God bless them for what they done
God bless them for what they done

Daniel Johnston『The Beatles』

誰もがビートルズになりたかった
僕は本当に彼みたいになりたかった
だけど彼は死んだ
伝説的なロックグループ
彼らの軌跡を改めて振り返れば
まるで不思議なおとぎ話のようで
とてもじゃないが現実のこととは思えない
だけどそれは確かに起きたんだ
4人の若者は世界に衝撃を与えた
彼らの偉業を神も祝福する



ダニエル・ジョンストンは、Nirvana(ニルヴァーナ)の Kurt Cobain(カート・コバーン)によって有名になった…

カート・コバーンはダニエル・ジョンストンのアルバム『Hi, HOW ARE YOU』のジャケット画に描かれた「Jeremiah the Frog(カエルのエレミヤ)」のTシャツを着て、自分が影響を受けたアーティストの一人としてダニエル・ジョンストンの名前を挙げていた…



加藤シゲアキの小説『ピンクとグレー』にもカート・コバーンは登場する。

物語において重要な意味をもつ「遺書」の中に。

あのエピグラフはダニエル・ジョンストン『ビートルズ』の引用で間違いない。


それでは第一章を見ていきましょう…

第一章「24歳 ブラックコーヒー」を…



つづく




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?