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インマヌエルは茶色いからエメット・ブラウン…

わかりやすくていいじゃないか。

誰も気付かなかったのが不思議なくらいだ。

フラ・アンジェリコの絵『受胎告知』が元ネタだとわかると、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のいろんなことが腑に落ちる…

まだまだ驚くのは早いぞ。

次は体育館で行われたオーディションの場面だ。

マーティが「歴史は変えられる・自分の手で変えてみせる」と言ったところで、場面は体育館でのオーディションに切り替わる。

だから「we the people」の文字が映し出されるんだな。

なぜ「歴史をこの手で変える」が「we the people」なんだ？

「we the people」とはアメリカ合衆国憲法の前文を指す。

We the People of the United States, in Order to form a more perfect Union, establish Justice, insure domestic Tranquility, provide for the common defence, promote the general Welfare, and secure the Blessings of Liberty to ourselves and our Posterity, do ordain and establish this Constitution for the United States of America.

アメリカの憲法前文？

英語とは面白いもんで、あの前文は、こんなふうにも訳せるんだな。

我々アメリカ人は、よりパーフェクトな人間関係の形成を目指し、正義を成立させ、家庭内の問題を解決し、様々な危険から身を守り、普遍的な幸福を増進させ、我々自身や我々の子孫に自由をもたらす天恵を確保する目的をもって、このアメリカのバンドを創設する。

マーティのバンドが、世界をより良いものへ変えるバンド？

だからバンド名は「PINHEAD」だった。

ピンヘッドって「バカ」とか「まぬけ」って意味だろ？

なぜ「バカ」や「まぬけ」が世界をより良いものへ変える存在なんだ？

世界をより良いものに変えた男、歴史を変えた男の「頭」には「ピン」が立っている。

は？

フラ・アンジェリコの絵『受胎告知」に描かれる天使ガブリエルのことだ。

天使ガブリエルの頭には「神の力」を表す「小さな炎」が描かれている。

まるで「ピン」が立っているみたいに見えるだろ？

なるほど、確かに「ピンヘッド」だ…

そしてマーティのバンドはヒューイ・ルイス＆ザ・ニュースのコピーバンド。

演奏する曲は『The Power of Love』だ。

Annunciation（受胎告知）は、そもそもラテン語で「お知らせ・ニュース」という意味…

『The Power of Love』とは、受胎告知の場面で天使ガブリエルが処女マリアを説得するために語った言葉「聖霊があなたに降り、いと高き方（神）の力があなたを包む」のこと…

そういうことだ。

天使ガブリエルの受胎告知は、世界をより良いものへと変えた。

人が原罪に縛られていた古い時代が終わり、人が原罪から解放された自由な時代へ変わったわけだな。

まあ、キリスト教徒にとっては、の話だが。

なるほど、そういうことか…

だからマーティの「歴史は変えられる」でオーディションに切り替わったんだな…

ヒル・バレー高校のシーンが始まる前に流れていた主題歌『The Power of Love』の歌詞の意味を理解できていた者だけが気付く仕掛けだ。

セリフにも画面に映る文字にも何一つ意味のないものはない。

映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の冒頭10分は完璧。

あとはガレージのシーンと主題歌だけだな。

この映画で最も最高なシーンだ。

まあ、映画にしろ小説にしろ、物語の導入部、冒頭のシーンが最も考え抜かれて作りこまれているんだがな。

しかし観客や読者は、まだ始まったばかりだからと油断して、サラっと見過ごしてしまいがち。

このシーンが？

ごちゃごちゃして物であふれているガレージにしか見えないけど…

カヘッ、カヘッ、カヘッ（笑）

その節穴のような目で、よーく見てみろ。

まず映し出されるのは無数の時計だ。

この映画はタイムトラベルする話だから、無数の時計が出て来るのは当たり前だろ？

ドラえもんがタイムマシンで時空を超える時の背景もそうだ。

ばーか（笑）

無数の時計とは、これのことだよ。

マ、マリアの椅子？

確かに無数の時計の文字盤に見える！

そして次に映し出されるものはドクの館が焼け落ちたことを伝える古い新聞だ。

大きな見出しと、焼け焦げた館の写真…

こんなものフラ・アンジェリコの受胎告知にあったか？

ドクは預言者イザヤ…

この受胎告知ではイザヤが大きな見出しの書かれたペーパーを持ち、壁には焼け焦げたようなピクチャーが飾られている。

た、確かに大きな見出しと焼け焦げたピクチャーだ…

壁に掛けられた天才科学者の写真も、マリアの部屋のピクチャーだな。

それにしても、あれはいったい何なんだろう…

マリアはアートコレクターだったのか？

そして次に水浸しのコーヒーメーカーが映し出される。

なぜポットが置かれてないんだろう？

ポットがあったら「水溜り」を再現できんだろ。

そういうことか…

そしてテレビのニュースが映し出される。

核燃料のプルトニウムが行方不明になったというニュースだ。

ニュースといえばヒューイ・ルイス＆ザ・ニュース…

そして Annunciation（受胎告知）はニュースという意味…

『The Power of Love』とは「いと高き方の力」のこと。

「天の父」の霊的エネルギー「聖霊」が地上へ降りて来て、マリアの胎の中で「子イエス」として受肉することだ。

つまり放射能マークとよく似た三位一体図のことだな。

なるほど、確かによく似ている…

それに核エネルギーは昔「神のエネルギー」とか「神のパワー」と言われていたもんな…

そして次に映し出されるのは煙を出す黒焦げの食パン２枚だ。

パンは最後の晩餐だよな？

そうじゃない。あれはマリアが読んでいた旧約イザヤ書だ。

なぜか白煙を上げている。

なるほど…

だから２枚のパンは黒焦げだったんだな。

旧約といえば２枚の黒い石板だ。

その通り。よくわかってるじゃないか。

次に映し出されるのは、床に溢れ出たドッグフードだ。

床を汚すドッグフード…

わかった！マリアの部屋の汚れた床！

だからドッグフードの次にドアマットが映し出される。

そこにマーティが現れてドアマットをめくるのだ。鍵を隠すためにな。

マットがめくられていない受胎告知と、マットがめくられている受胎告知…

マットがめくられている受胎告知の天使ガブリエルは指で何かをしているから、まるで天使ガブリエルがめくったように見える…

だからマーティはスケボーの上にリュックを置いて足で蹴る。

するとスケボーが赤い布に隠されているプルトニウムの箱にぶつかる。

その箱には HANDLE WITH CARE（取扱注意） という注意書きと放射能マークが書かれていた。

赤い布で隠された箱…

その前で天使ガブリエルは「神の力」と「三位一体」について説明している…

LUKE 1:35
The angel answered, “The Holy Spirit will come on you, and the power of the Most High will overshadow you. So the holy one to be born will be called the Son of God.

ルカによる福音書 1:35
天使は答えた。「聖霊があなたに降り、いと高き方の力があなたを包む。だから、生まれる子は聖なる者、神の子と呼ばれる」

カヘッ、カヘッ、カヘッ。そういうことだ。

完璧だ… フラ・アンジェリコの『受胎告知』を完璧に再現している…

驚くのはまだ早い。まだまだ続きがあるぞ。

つづく