カルビンと1924移民法~『LIFE』解説6
さて、ドミニクちゃんによる命名式の解説の続きだ。
前回を未読の人はコチラをどうぞ!
ドミニクちゃんの命名宣言は以下の通り。
「私たちのカルビン・クーリッジ記念小学校が11000校の中から選ばれたことを大変名誉に思います。そして私たちの校名にあやかって、この火星人をカルビンと名付けます!」
このスピーチのポイントは3点だった。
1、選ばれた少女の名前が「ドミニク」
2、彼女の学校の名前が「カルビン・クーリッジ記念小学校」
3、火星人(Martian)に「カルビン(Calvin)」と命名
今回はポイント2「カルビン・クーリッジ記念小学校」からやな。
ところでカルビン・クーリッジって誰?
第30代アメリカ大統領だよ。歴代大統領の中で唯一「7月4日」に生まれた人だ。
アメリカは偉い人の名前を冠した学校や公共施設がぎょうさんあるよな。
日本でも付けたらええ。
おととしくらいの夏の甲子園に「クラーク記念国際高校」って出てなかった?
あと、現役首相の名前がついた幼稚園もあったな…
さて、多くの日本人は「カルビン・クーリッジ」と聞いてもピンと来ないだろうから、僕が解説しよう。
Calvin Coolidge (1872-1933)
なんか真面目で几帳面そう…
でもあんまり聞かない大統領だよね。
アメリカ人はこの名前で何かピンと来るの?
歴史の授業をちゃんと聞いていたアメリカ人なら、ここで「カルビン・クーリッジ大統領」の名前が出て来たらピンとくるんじゃないかな。
「あ!そういう映画か!」ってね。
そうゆう映画?
カルビン・クーリッジ大統領は「Immigration Act of 1924」(1924年移民法)を施行したことで有名なんだ。
この法律によって、イギリスやオランダやドイツ、北欧などプロテスタント国以外からの移民は厳しく制限されたんだよね。
つまり…
「正教徒やユダヤ系が多い東ヨーロッパ、そしてカトリックが多い南ヨーロッパからの移民がこれ以上増え過ぎると、アメリカ社会に良くない」
と宣言したに等しいんだよ。
ええ~!
ち、ちなみに日本人は?
日本人をはじめアジア系は移民の全面禁止だ。
「アジア人は害悪だから、これ以上アメリカ社会に入って来てくれるな」
と宣言されたみたいなもんだよね。
当時日本はアジア唯一の「一等国」を自負していた。だからこの移民法は日本人にとって大ショックだったらしい。下に見ていたアジア諸国と同じ扱いをされたわけだからね。
民主国家の鑑としてアメリカを見ていた知識階級の落胆ぶりは特に大きかった。ここから対米開戦につながる反米感情が高まったとも言われている。
そういうわけで、日本ではこの法律は憎しみを込めて「排日移民法」と呼ばれるようになったんだ…
ま、マジで…
そんなんあり?
社会にとって異質なものが入ってくることを拒む「1924移民法」を制定したカルビン・クーリッジ大統領の名前が冠された小学校が、これから地球へ運ばれる未知の生命体を命名する名誉にあずかるって、かなりの皮肉だよね…
だから自国の黒歴史もちゃんと知ってるアメリカ人なら、このシーンでピンと来ただろうね。
「この映画には移民に関するメタファーが隠されている。しかもプロテスタント、中でもカルヴァン主義に関するメタファーが…」と。
カルビン・クーリッジ大統領は「Calvin」って名前だけに、やっぱり熱心なカルヴァン主義の家庭に生まれたの?
そのようだね。
彼のフルネームは「John Calvin Coolidge(ジョン・カルビン・クーリッジ)」という。
宗教改革者ジャン・カルヴァンは英語で「John Calvin」と書くから、まさにそのまんま。
マルティン・ルターをそのまんま英語読みにしたマーティン・ルーサー・キング牧師みたいやな…
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