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エピローグ第15話:あのペネロープのポーズは何を意味していたのか?『THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI(スリー・ビルボード)』徹底解剖


チェーホフがこんなに面白い人だとは思わなかった…

ホントに駄洒落とかオヤジギャグが好きなのね…

・・・・・

なんのことかわからない人は、前回を未読の人だね。

まずこちらからどうぞ!

外国作品の駄洒落は難しいよね。

翻訳されると意味が通じなくなってしまうことが多いから…

かのノーベル文学賞作家カズオ・イシグロも、そのことで悩んでいた。

『バベットの晩餐会』で有名なカレン・ブリクセン(イサク・ディーネセン)なんかは、それを解決するために、母国語であるデンマーク語版と、最も流通する英語版を自分で書いたんだ。

しかも細かい部分でかなりの変更を加えて。

どっちの言語でも駄洒落やジョークが綺麗に成立するようにしたかったんだろう…

駄洒落ひとつにもそこまで考えるんやな、一流作家っちゅうもんは…

おそロシヤ…

それ絶対グーグル翻訳で外国語にしたとき通じないから(笑)

さて、伯爵や予審判事たちが応接間で休んでいると、隣室から「戸はしまってるかい?」と声が聴こえてきた。

オリガの父である森番だ。

彼は最愛の妻を失ってから《精神の病い》を患い、ずっと家に閉じこもっているんだよね。村の人たちからは「狂人」と呼ばれていた。

『スリー・ビルボード』のミルドレッドも、最愛の娘を失ってからは言動が過激になり「crazy lady(狂女)」と呼ばれてたよね。

さて、助手のミーチカが慌てて隣の部屋に入って行くと、森番は物騒なことを言い始めた。

「錠をおろして、がっちりしめておけよ……泥棒が入ってきたら、俺に言うんだぜ……そういう不埒な奴らは……俺が鉄砲で……」

中央公論社版(訳:原卓也)より

その言葉を聞いた執事は、なぜか顔を赤らめた。

そしてそれを見た伯爵や予審判事は不思議に思った。

森番の「不埒な奴らは俺が鉄砲で」発言は、何か別の意味があるのでは?と訝しがるんだ。

ちなみに何のことだったの?

妻に先立たれ、さらには病気も患っている森番にとって、娘オリガが嫁に行くことはまさに悪夢だ。

実は、顔を赤らめた執事ウルベーニンはオリガのことを狙っていて、森番の小舎にこっそり通っていたんだよ。

だから森番は「俺から泥棒する奴は鉄砲で…」と言ったんだね。

いずれにせよ物騒やな。

そして場の空気が微妙になった瞬間、オリガが突然姿を現す。

オリガにとってもビックリだけど、このタイミングでの登場と鼻唄の奇妙な歌詞に一同も虚を突かれ、何も言葉が出なかった…

やがて表階段を駆けあがる音と、ドアの開く音がした。《広間》に赤いワンピースの娘がとびこんできた。
「わたしの好きな、五月初めの雷雨!」笑いに声をとぎらせながら、彼女は金切り声に近いような甲高いソプラノでうたいはじめたが、わたしたちの姿に気づくと、不意に立ちどまり、口をつぐんだ。
彼女はどぎまぎして、羊のように静かに、つい今しがた彼女の父ニコライ・エフィームイチの声のきこえてきた部屋に立ち去った。

中央公論社版(訳:原卓也)より

なんか既視感ある。なんでだろう?

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