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映画内で言及されないカルビン君の重要な能力について~『LIFE』解説7

さて、今回は映画『LIFE』とジャン・カルヴァンの著作『キリスト教網要』との関係について話そう。

前回までを未読の方はコチラをどうぞ!

難しいハナシは勘弁やで。

ただでさえ『LIFE』解説シリーズは他のに比べて閲覧数がイマイチなんやさかい。

了解。では単刀直入に言おう。

映画『LIFE』において、国際宇宙ステーションISSのクルー6人の運命は…

すべてジャン・カルヴァンの『キリスト教網要』に書かれていたんだ。

ハァ!?

ジャン・カルヴァンの教えは「予定説」として有名だね。

救済される者されない者は、神によって予め決められているという考え方だ。全知全能の神の前では、人間の自由意志なるものは無いという思想だね。

当時カトリック世界では、善行や免罪符の購入によって天国に入れるとされていた。カルヴァンはそれを痛烈に批判したわけだ。

不完全な存在である人間の行為が、完全無欠である神の行動を左右するのはオカシイと…

まあ一理あるわな。

これが映画のカルビン君にも適用されているわけだ。

乗組員たちは危険を顧みず様々なやり方で救われようとした。

でも、いくら自己犠牲的行為(善行)を行おうとも、そんなことは全くの無意味なんだよ。

だって救われるかどうかは予め決まっていることなんだから。全知全能のカルビン君によってね…

未来はすべて決まっていたってこと?

その通り。

カルビン君は、先のことがわかっていたんだね。乗組員たちの考えを読むことができたんだよ。

だから罠にもかからないし、抜け道を見つけることも出来たし、常に先回りすることが出来た。

宇宙ステーションの構造も熟知してたよね。

乗組員がそれを「知っている」から当たり前なんだけど(笑)

マジですか!?

だって『キリスト教網要』第1篇 第1章のタイトルがこれだよ…

「神の知識と我々人間の知識は相結合している」


カルビン君は、人間の意識にコネクトすることが出来たんだ。

乗組員は早くこれに気付くべきだったよね…

そんな能力があったとは…

わかっていたら全然違っただろうに…

そして『キリスト教網要』には各クルーの運命もちゃんと書かれていた。

まず死んでしまった4人。

第4章のタイトルが、彼らの結末を物語る…

「第4章:無知のために、邪悪のために、あるいは窒息せしめられ、あるいは壊敗せしめられたる、神においての知識」

CHAPTER 4. THE KNOWLEDGE OF GOD STIFLED OR CORRUPTED, IGNORANTLY OR MALICIOUSLY.


え…?これって…

ひとりずつ見ていこう。

まずは「無知・無視(IGNORANTLY)」によって死んだヒューイ・デリーから…

彼は生物学者で、カルビン君が隔離されたラボ内の培養器に唯一接することのできる存在だった。

だから本来なら彼が真っ先にカルビン君の「他の生物の意識を読むことができる特殊能力」が人類にとって危険であると報告すべきだった。

だけどヒューイは、気付いていたのに報告せず、それを「無視」したんだ。

え!?

ヒューイは知っていたの!?

もちろん。

彼は優秀な生物学者だ。それくらいのことに気付かないはずがない。

培養器の酸素が漏れてカルビン君が仮死状態になってしまった事件があったよね?

ヒューイのせいにされてたけど、あれはカルビン君の仕業だったんだよ。

そしてヒューイはそれに気付いていたけど黙っていた…

ええ~!?マジで!?

だけど、どうして…?

まずカルビン君の思惑から説明しよう。

カルビン君は火星の土壌の中から仮死状態で発見された。そして地球に運ばれる途中で国際宇宙ステーションISSに収容される。

カルビン君としては仮死状態のまま地球へ向かいたかったんだ。

だけどISSで目覚めさせられてしまった。これは困るよね。

なんで?

だって培養されて成長させられたら「危険」なことがバレてしまうからね。

実は乗組員の中には、カルビン君が危険とわかったら宇宙空間へ即時追放する指令を受けている者もいた。人的犠牲を払ってでもね…

カルビン君はそれを知っていたから、目覚めたくなかったんだよ。

でもヒューイによって培養されてしまった。だからわざと酸素を抜いて仮死状態になったんだ。

なんでヒューイは黙っとったんや?

そんな大事なこと報告せんとアカンやろ!

「足」だよ。

ヒューイは足が不自由だった。幼い頃に下半身麻痺になってしまったようなことを話していたね。

そんなヒューイだから、カルビン君の驚異的な「万能細胞」ぶりを見て心が湧きたった。

カルビン君の万能細胞能力を医学に応用すれば、自分の足を元通りに出来るかも…と考えたんだよ。

個人的な願望を、人類全体の未来より優先させてしまったんだね。

だからカルビン君は逃走後にヒューイの足に同化したんだ。ヒューイの頭の中の妄想を知っていたから…

そ、そうゆうことだったのか!

『キリスト教網要』の日本語訳では「無知」となっているけど、英語の「IGNORANTLY」には「無視」という意味もある。

この映画の制作陣は「無知」より「無視」という意味を当てはめているよね。

まあ、危険だとわかっていたのに無視したから十分「無知」なんだけど…

ちなみにヒューイのモデルは英国王ジェームズ1世だったよね。

ジェームズ1世は当初カルヴァン派に寛容だった。だけど突然カルヴァン派の急進派である分離派と呼ばれる人たちを弾圧した。

分離派はオランダに逃れ、そこからメイフラワー号に乗ってアメリカに渡る。

これがそのままヒューイとカルビン君の関係になっているというわけだ。

なるほど…

さて、次は「邪悪(MALICIOUSLY)」のために死んだローリー・アダムズだ。

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