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第13回:アンジェラとペネロープ 『THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI(スリー・ビルボード)』徹底解説

さて、今回は

「ミルドレッドの回想(アンジェラとの親子ゲンカ)」

「病院を抜け出すウィロビー」

「ペネロープ登場(元夫チャーリーとの夫婦ゲンカ)」

という一連の流れを解説しよう。

前回の「取り調べと吐血」の解説はコチラです。

「家族でケンカ(回想)⇒病院のウィロビー⇒家族でケンカ(現在)」やな。

せやけどなんで脚本家のマーティン・マクドナーは、過去と現在の家族喧嘩の間にウィロビーを挿んだんやろか?

元夫チャーリーとペネロープを交えた家族の喧嘩シーンの内容は、アンジェラとの喧嘩や末期癌のウィロビーが伏線になっているからだよ。

この3つの場面は別々のようで実は繋がっているんだ。

マジで?

では順を追って見ていこう。

まずはミルドレッドの回想シーンから。

車を貸してくれと頼むアンジェラとそれを断る母ミルドレッド、そして女二人の罵り合いにうんざりするロビー君が登場する。

ミルドレッドはこの罵り合いの最後にアンジェラへ「あんたなんてレイプされればいい!」と言ってしまう。

そしてこれが娘への最後の言葉になってしまったんだね…

これはへこむな。

さて、ここでの会話で重要なのは「アンジェラの臭い」についてだね。

ミルドレッドはこう言った…

「お前は一日中マリファナの臭いをさせている」

この映画において「臭い」は重要なキーワードだ。

「葉っぱ臭さ」は物語を読み解くヒントになっている。

ウィロビーが死ぬ前に妻と交わした最後の会話も「馬の臭い」と「ゲロの臭い」だったからな。

そういえばそうだった…

そして次は病院のシーン。

仲睦まじいウィロビー夫妻が微笑ましかったよね…

ウィロビーのハゲオヤジはニヤケ顔で若い嫁のケツをめっちゃ撫でとったよな。

医師から数日間の入院を伝えられたけどウィロビーにはそんな気はなく、それを察した妻のアンは上着を取りに行く。

そして、ひとりになったウィロビーの表情が一変する…

なんかすっごく悲しそう。

この時に自殺を決意したんだろうな。

ミルドレッドの顔面に吐血してしまったことで、アンジェラを徹底的に燃やした理由がバレる可能性が高まった。

いや、「もう気付かれるのも時間の問題だ」と観念したに違いない…

だからミルドレッドを一気に窮地に追い込む作戦を選択したのだ…

文字通り「捨て身」の作戦に…

そして次のシーンは「家族4人の再会の時」だ。

この映画の中において唯一「家族4人」が揃う瞬間だね。

そう言われると超重要なシーンっぽく思えてくる!

「超重要っぽく」ではない。「超重要」なのだ。

この場面は、まずミルドレッドとロビーの朝食シーンから始まる。

ミルドレッドがロビーの顔面にシリアルを飛ばすんだね。

あれは何だったの?

顔面にウィロビーの吐血を浴びたことが、ミルドレッドの中でひっかかっていたのかもしれないね。

ただそれが「なぜひっかかっているのか」わからない。

だからイライラしてロビーにあんなことをしたんだ。

もしくはコーエン兄弟の『RAISING ARIZONA(赤ちゃん泥棒)』でも、ジョン・グッドマンがシリアルをスプーンですくって投げるシーンがあるんだけど、それと関係あるのかもしれないな。

だけど、なぜジョン・グッドマンがシリアルをスプーンで投げたのかは、僕にもわからない…

あれはどういう意味があったんでしょうかね、公園兄弟さん?

そ、そんなこと俺たちは知らん…

なぜなら俺たちは公園兄弟であって、コーエン兄弟ではないからだ…

そういえば、ウィロビーが奥さんに「君がこの手紙を読む頃は…」という置手紙を書いてたけど、その文面が『赤ちゃん泥棒』でニコラス・ケイジ演じる主人公ハイが奥さんのエドに書いていた置手紙とそっくりの内容だったな。

間抜けなハイは置手紙を書いている途中で眠ってしまい、起きたら昼で、置手紙の意味がなくなったけど(笑)

しかもラストは『赤ちゃん泥棒』が「ユタ?」で、『スリー・ビルボード』は「アイダホ?」や。

『スリー・ビルボード』には、この『赤ちゃん泥棒』のネタがたくさん使われているんだ。

脚本・監督を務めたマーティン・マクドナーは、よっぽどこの映画が好きなんだろうね(笑)

<続きはコチラ!>


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