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溢れる「過剰流動性」の "器" - 「逆イールド」の米国債 → ナスダック → ビットコイン、日経平均、そして...

 2023年、シリコンバレー銀行(SVB)やシグチャー銀行を吹き飛ばした米国債の "暴風雨”早期「利下げ」騒ぎで「逆イールド」を形成したが今や完全に行き詰まり。相場のダイナミズムを失っている。大やられした米銀もFRBの監視の目が厳しくなり米国債の "器" は一杯。商売あがったりである

 低調な米国債市場と歩調を合わせるように、相場を牽引してきたナスダック”マグニフィセント7” も上が詰まっている。アップルテスラの株価の不調は象徴的であり、ファンド、投資家の手詰まり感も深まる

 つまり頼みの米国市場の "器" は「過剰流動性」で一杯になりつつある

 溢れた「お金」はどこへ向かうのか

 真っ先に向かったのは主要市場でアンダーウェイトになっていた日経平均だろう。年初来の運用成績は他市場を上回る。最近追いかけてきたのが独DAX一方で不調なのが昨年好調だった英FT

 そこへ追い打ちをかけたのが「脱・中国」時価総額の急減でもわかる通り「お金」の流出が凄まじい。まあ「スパイ法」なんて無茶を通せば人が逃げ出すのは当たり前で「お金」はそれにつれて動く。世界第2位の市場は捨てないだろうとタカを括っていたのかもしれないが、欧米の基準に照らせば当然の帰結。ここでも行き場のない「過剰流動性」が生まれている

 それでも余った「お金」は受け皿が足りず、向かったのがビットコイン(BTC)等の暗号資産価格の算定根拠が希薄なのはかえって好都合で、とりあえず「お金」が入り続ける間は高騰が続くウォール街も今は現物ETFを作っておいて良かったとほっとしていることだろう。とにかく目先の運用成績を上げることはできる。もっともこれは一種の "チキンレース" でもあり、ブレーキを踏み損なえば崖下に真っ逆さまの危険もある

 @70ドルそこそこから@80ドル台まで復活している原油価格も健闘はしているが、反面中国の不況で鉄鋼系が下落したりコモディティ(商品市場)は強弱様々。実需の影響が強いだけに買い一辺倒ともいかない

 「FRBもECBもさっさと利下げしろ!」

 これがヘッジファンド(HF)やウォール街の本音だろうが 想像以上にしつこい「インフレ」|損切丸 (note.com) が立ちはだかる。やはり世界中で▼1億人近いベビーブーマーが労働市場から抜けた「人口動態」の影響は半端ではなく、AIの技術進展等にまだ数年はかかる。拙速に「利下げ」すれば 燻る「インフレ」の ”種火” 。|損切丸 (note.com) に再点火

 そう言う観点から「過剰流動性」の親玉・日銀による「引締め」開始は時宜を得た戦略でもあり、結果的にFRB・ECBの「利下げ」を早める。ただ1,200兆円ものJGBの半分以上も抱える日銀も "器" は一杯で、性急に事を進められない財政危機が顕在化すれば、それこそキャピタルフライト(資本逃避)から深刻な「円売り」を招いてしまう

 マーケットの手詰まり感は現状が「危うい均衡」の上に成り立っていることを示唆している。常に儲けなければならない投資銀行もHFも薄々その事に気付いていながら突っ走るしかない。暴騰するBTCを見ているとその事を強く感じるが、まあこれは筆者の現役の頃も一緒。その度にリーマンショック(2008)のようなクライシスが起きてきたが、結局「借金」を重ねて「過剰流動性」で凌いできた

 3京円(≓300兆ドル)もの「大借金」を抱えた現在、財務当局からすれば、無謀と判っていてもクラッシュを起こすよりはマシ。だから やっぱり「インフレ」しかない|損切丸 (note.com) という結論に至る。もう「増税」なんかでチマチマ回収できる次元ではない

 そうなると 続・逃げ出す「お金」。向かう先は... @2024|損切丸 (note.com) となるが、所詮「法定通貨」同士の交換に過ぎないFX(外国為替)では限界がある。実際ユーロドルやポンドドルを見ているとボラティリティー(変動率)は絶望的に下がっており儲けるのが難しい。だから金利差を狙った「円」のキャリートレードに殺到する訳で、それを財務官が「投機」と言っているのだろう。だが業界もかなり煮詰まっている

 「地震」と一緒で「クラッシュ」や「クライシス」を予知するのは非常に難しい。明日かもしれないし3年後かもしれない。確実なのは「インフレ」がしばらく続く事であり、その間生活者は「お金との格闘」を強いられる

 「デフレよりインフレの方がいい」

 就職氷河期など仕事がなくて苦しんだ日本人はこう言っていたが、今頃後悔しているのではないか何もしなくても「預金」で食えたデフレ期のほうが「インフレ」よりはるかに楽デフォルトで没落した国々は例外なく「インフレ」「通貨安」で滅んでいる日本は今その "入口"

 どこかの元・外銀支店長みたいに大袈裟に煽るつもりはないが(苦笑)、日本が "徳俵" に足が掛かっているのも事実。日銀が "うっちゃり" で逆転できるのか、重要な場面に立ち会っている。日本人もそのぐらいの気概で今の「お金との格闘」に向き合う必要がある。ただ追い詰められると "火事場の馬鹿力" を発揮する日本人。その点は筆者も期待している


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