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買い向かう「日本人」の「円安デモクラシー」。 ー ”Trend is NOT Friend !”

 米株価が大分戻してきた。 "偽りの夜明け” 戦略と判っていながら、ここまではウォール街の目論見通り。まあ米国債も10年金利が@2.0%の大台を前に足踏みするのは十分予想されたので、「商売上手」と褒めておこう。

 まとまった金額で買ってくれる「日本人」、特にExodus = "脱・日本" の傾向が強まっている個人投資家には彼らも注目している。実際「対外証券投資」(  標題添付)を見ると1月最終週~2月第1週にかけて+1兆円近く海外株式を買い越し。おそらくその*ほとんどは米国株だ。

 目端の利く人なら主要株式市場で唯一年初来プラスで "孤軍奮闘” する英国株を選んだかも。ジョンソン首相は苦境にあるが、既に+0.50%「利上げ」を行った "先見性" が評価されている中露を巡る安全保障政策でも退潮が目立つアメリカや足並みが揃わないヨーロッパを補う形で存在感が増しており、ようやく "BREXIT効果" が出てきたとも言える。

 年初からのナスダック指数の急落で ”レバナス" (ナスダック指数に投資元金 × 3倍、5倍などレバレッジをかけた投資信託 )で大やられという話も耳にするが、尚買い向かう驚くべき胆力** ” Trend is Friend ” (流れは友達)の欧米人からすると理解できない投資手法だ。

 **かく言う筆者も現役中は暴落するJGB(日本国債)を買い向かうなど、散々「逆張り」してきた。今思うと本店はヒヤヒヤして見ていたのかもしれないが、よく見逃してくれたものだ(苦笑)。ナスダックに関して言えば、▼20%の調整売りは覚悟の上で▼10%を超えた当りで買い向かったのだろう。「鯛の頭としっぽはくれてやれ」の日本人的解釈なのだが、▼10%を ”くれてやる” とは随分豪気な「日本人」である。

 この+1兆円が日経平均に向かえば…と残念に思う反面、こんな国難の時に株価の足を引っ張る「金融所得課税」を言い出すなど「財務省による2人羽織」が透けて見えており、20~40代の「日本不信」の根は深い。これではNISAなど何の役にも立たない。

 ”証券市場のメインプレイヤーである大手証券会社が、相場操縦を行ったという前代未聞の疑惑について、東京地検特捜部が2/2までに関係者を事情聴取するなど捜査着手した”

 「ブロックオファー」(一定期間特定の価格で株を大量売出)を巡って大手証券会社に捜査が入ったが、昔からの相場を知る者には「何を今更」感が強い。今回は「終値関与」=特定の株式等の終値の引上げ(引下げ、固定)を意図して、立会終了間際に発注し約定させる取引、が問題視されている。

 「東証は最後の15分だけ見ていればいい」

 バブル最盛期、市場関係者の間ではこんなことが当たり前のように囁かれていた。日中どれだけ下げても「最後の15分」で大量に買いが入り引けはプラス転換。こんなことが続き、日経平均が7連騰、8連騰なんてザラバブル崩壊後「PKO」( =Price Keeping Operation、株価維持政策、Peace ではない。笑)が発動した時も同様。その時は国ぐるみである。

 実は欧米にも似たような取引慣行はあるが、***日本との決定的な違いは「投資家目線」である事。つまり「お金」を投じている「個人の権利」( ”利益” ではない)保護が市場の「哲学」となっている

 ***事の善し悪しや程度は別にして、今回の感染症対策欧米と日本の決定的な違いはこの「個人の権利」に重きを置いているかどうか。あるロシア人が日本に来て「理想の社会主義がここにあった」と漏らしたそうだが、この点、お隣の共産国家と何ら違いが無い。

 筆者が生きてきた50年余、政策も相場も常に「供給側」=霞ヶ関、経済団体、「~会」「~連」に立っており「需要側」に立つのを見た事がない。つまり「昭和」モデルのまま。欧米の「個人主義」が絶対ではないが、社会モデルを欧米化させている現状で齟齬が出るのは当たり前。マーケットは最たるもので、20~40代がツケを払わされている

 だがここに来て 「シルバーデモクラシー」に "静かな反乱" 。 ー 「お金」の ”脱・日本” 。|損切丸|note による「円安デモクラシー」とでも呼ぶべき変化が起きている。選挙の票では勝てないので、「お金」の "脱・日本" により「昭和」からの脱却を迫っている

 具体的な例として分り易いのは日銀の金融政策10年JGBYCC(イールドカーブ・コントロール)上限である@0.25%に接近し、日銀は今日(2/10)夕刻****@0.25%での "無制限" 「指し値」オペを発表

 **** "無制限" と言いつつ、実はもう「国債」を大量に買う「お金」がない「損切丸」「日銀バランスシート」シリーズをお読みの方はご存じだが、国内の1,000兆円余りの「預金」リソースは既に使い果たし、ここから何かを買うには:①短期国債発行 →「政府預金」②短期のレポオペ等「お金」を再調達する必要がある。ただ短期市場からの調達を増やしすぎれば、今度は「短期金利上昇→長期金利上昇」の経路を辿って、かえって金利上昇を促してしまう怖れもある。日銀もその辺は判っているはずだ。

 発表直後、ドル円は「円安」方向に跳ねた。こうやって無理に金利を押さえ込めば「悪い円安」を助長してしまうので、現行の政策継続は困難FRBが「利上げ」を実施する3月の「金融政策の総点検」に向け、①YCCのレンジ引き上げ、あるいは②YCC廃止、の方向で政策調整が進むと予想する。

 「インフレ時代」を迎える中、「ゼロ金利」などもってのほか。ここからは兆ドル単位の「現ナマ」が中央銀行により引き上げられ世界中で「お金」の熾烈な争奪戦が始まる。そんな中、日本だけが不条理な「低金利」を続ければ、魚や食料品同様、「お金」も「買い負け」してしまう

 今後この国は財務省や経済団体など「供給側」に配慮する政策よりも、「需要側」の「お金」の "脱・日本" を引き留める努力が必要になる。そもそも現行の「年金」も「現役世代」の積立てで「引退世代」=「昭和世代」が食わせて貰っており、肝心の「お金」が海外に逃げては元も子もない

  "偽りの夜明け” 米国株今後相場の急変動には要注意だが、この「円安デモクラシー」自体は継続するだろう。やっと「昭和」が終わる「昭和」生まれの筆者は微妙な50代だが、せいぜい「令和の姥捨て山」で野垂れ死にしないよう(苦笑)、「守り」を固めて踏ん張っていきたい。


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