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繰り返される「金余りゲーム」。ー ”ジョーカー” は「デフォルト」。

 「ああ、またか...」

 ここ数日の相場を見ていて思わず溜息。前稿 「ドル覇権」衰退の兆しと「ドル高」で "輸出" される「インフレ」。|損切丸|note でも述べたが、個人的に「転換点」と定めている1998年(LTCM破綻)以降、繰り返されてきた「金余りゲーム」だ。

 時々の ”流行” を反映して代表的な銘柄はNYダウ → ナスダック → ビットコインと変化してきているが、20年以上も続く 世界は「過剰流動性」中毒。ー 「テーパリング」(薬抜き)は並大抵ではない。|損切丸|note

 2022年の「ゲーム」をリードしているのが「原油」。年初来の運用成績も+31.5%WTI@10/27)と他を圧する断トツのトップ。「余ったお金」が右往左往している様が窺える。

 「景気後退懸念でドル金利が下がっている」→「ドル安」という理屈のようだが、それだとWTI@$83台→@$88台の説明がつかないリセッション入りするなら原油需要も減退するはずが、まるで*「ドル安」を補うかのように価格が上昇している。

 *サウジアラビアの採算分岐点が@80~83ドルという説もあり、産油国による寡占状態の原油市場には何らかの "意図" が働いている可能性もある。そこへ「金余り」が重なれば相場が上がる仕組みなのかもしれない。ただ本当に需要が減退すれば、いずれ "あるべき価格" に落ち着くだろう。

 「金利」は本来「景気」や「インフレ」の動向を示すものだが、グリーンスパン元FRB議長17回連続で累計+4.25%も「利上げ」したのに上がらなかった米国債金利を " Conundrum" (謎)と評した2004~2006年頃から、「金利」は「金余り」の度合いを示すものに変化してしまった

 つまり@4.0%まで低下した10年米国債FRBが「利上げ」「QT」(量的引締)を止めることによって「金余り」が戻ってくることへの期待感の表れ。直近+2,000ドルも反発したNYダウ原油価格もその結果に過ぎない。エコノミストや識者には申し訳ないが、リセッション懸念とか業績期待とかはあまり関係なくなっている相場の焦点は「金が余るかどうか」ドル円を含め「ドル安」に転じているのも「ドルが余るから」

 ただこの「ゲーム」をひっくり返す ”ジョーカー” が存在する。「デフォルト」(破綻)である。どんなに「金余り」でも、潰れる国・企業に「お金」は向かわない「金余り」で株がラリーしても「デフォルト」すれば「元金」が失われる景気後退が現実化してくると、「金利低下」=「金余り」が資産価格を押し上げる効果は出てくるが「デフォルト」は防げない

 厄介なのは潰れそうな国や企業ほど大丈夫な振りを装うこと。いわゆる「三味線を弾く」と言う奴だが、敵もさるもの。なかなかの "演技" で、これを見抜くのは難しい。筆者もいくつかリアルな「倒産」とか「夜逃げ」に立ち会ったが、ほとんどの場合「その時」は突然やってくる

 こういう時、 "演技" を見抜く手掛りになるのが「マーケット」株価為替の変動には "フェイク" や(日本政府の大好きな) "投機" も含まれるが、FXや主要株式市場など流動性の高い市場ではHFT( High Frequency Trades、高頻度取引)や精緻なAIプログラムが発達しており、力任せに相場を動かすのは不可能。つまり「売買い」には相応の「理由」が伴う

 「お金」は正直だ。いくら見た目を装っても駄目なモノ、危ないモノからは逃げていく年初来▼30%も売られる「円」然り、ハンセン指数と人民元急落が告げる事。- マーケットからの ”メッセージ” 。 |損切丸|note の中国株然り。SNSによる情報量の増加と相まって、嘘は瞬時にばれる

 「魂は細部に宿る」

 こういう市況だと今後相場はより「プロ化」していく。WTIとかNYダウとか代表指標だけでなく、産地毎の原油動向や個別株の動きをつぶさに調べることが必要になる。いずれにしろ中長期的に相場はあるべき価格に戻るはずなので、「金余り」で膨れた部分は「デフォルト」で調整される事になる。

 ウォール街を中心に「金余り中毒」の投資銀行業界はこれからも度々 ”禁断症状” を起こして「金利低下」を仕掛けてくる。年初の「金利2%運動」然り、5~6月の「3%運動」然り。しかしその結果は現状の通りだ。

 確かに30年の住宅ローン金利が@7%(!)を超えた米住宅市場は冷え込んできている。それでも「インフレ」が収まる保証はなく、依然「スタグフレーション」の怖れは続く

 そしてもっと深刻なのは30年以上 ”寝た切り” の日本。こちらは「ゲーム」さえ始まっていない

 賃金が上がり始めた2016年以降、ベッドから起き上がってリハビリ(=「金融引締」)が可能だったが、「起き上がって動くのはエネルギーの無駄」ベッドに縛り付けたまま。おまけに「ここで急いで起き上がったら(=「利上げ」)倒れてしまう!」と言わんばかり。これではいつまで経っても「普通の生活」に戻れない集中治療=「異次元緩和」はもう不要だ。

 「インフレ」も「円安」も日銀総裁の交代など待ってはくれない「利上げ」も始めて見れば ”案ずるよりも産むが易し” 自分の「預金」に利息が付き始めて、初めて日本人も目が覚めるだろう。


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