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岡山経済新聞の読書会vol.2「延長戦」

今回は、短歌。
歌集を読書会って、もしかして初めての試み??

短歌

短歌のことはよくわからない。
ただ、読んでみて何を感じたか、どんな情景を思い浮かべたかは言える。
そうしよう!ということになった。

先入観という「私の当たり前」

長谷川麟さんの歌集「延長戦」を読ませていただきました。
長谷川さんが、どんな思いで歌を詠んだかは、今回、横に置いておくことにします。ごめんなさい。
まずね、「延長戦」という言葉。
「延長線」じゃないのよ、というところにフォーカスを当てる人もいた。

「延長戦」

「延長戦」と聞いて、そりゃ〜野球でしょ!!(阪神巨人戦!!)という人もいれば、サッカーだと思った〜と想像した延長戦もさまざま。
人生の中の「延長戦」っていつのこと?

同点になってからが、延長戦

野球でもサッカーでも、
ある一定の時が来たときに同点でなければ延長戦にはならない。
では、ある一定の時っていつのこと??
同点って何が一緒のこと??

振り向けば父の姿が今もある 勝ちきってこそ延長戦は

長谷川燐 「延長戦」より

第一物語

私は、テレビに齧り付く。今日は大事な試合。
今日勝てば、マジックが減り、グッと優勝が近くなる。
しかも相手は、宿敵の巨人。負けられない試合とはこのことだ。

9回裏に同点に追いついた阪神。
この勢いで勝って、気持ちは、道頓堀に飛び込む準備をしたいところ。

父は、ビールを片手にソファにでんと構えて観ている。
阪神を応援しているのか、それとも監督でもしているのかという顔で、
「同点になって延長戦になったくらいで、勝った気になっちゃあかん。
延長戦ってのは、勝ってこそ意味があんねん」

背中から聞こえてくる。

第二物語

※エペ剣(フェンシングで使う剣らしい)という言葉が他の歌で登場する。

フェンシング歴は15年になる。父が国体選手であったこともあり、3歳くらいからなんだかんだとエペ剣を握っていた。

今日勝てば、一つの目標に到達する。この試合、この試合とプレッシャーはどんどん高くなる。いつも背後には厳しい目をした父がいる。

プレッシャーからか、最後の1ポイントが奪えない。
延長戦に突入する。
父は目線でこう語る。「勝ちきってこそ延長戦」

第三物語

私の父は早くこの世を去った。
私がまだ18歳の時、父は43歳だった。
とにかく何にでも一生懸命で、ぐうたら昼寝をする姿を見せなかった。
マラソン大会に出るなど、健康そうに見えていた父だが、
癌が見つかり、あっという間にあちらの世界へ行ってしまった。

私は今、44歳。
ついに父より歳をとった。
父はどんな44歳を過ごしたかったのだろう。
父の過ごせなかった人生を私は生きる。
父からもらった、この人生、ここからは延長戦を1年、1年楽しむよ。

物語はいくつも

1つの歌を読むだけで、思い描くストーリーはさまざま。
父は今、本当に存在するのか否か?
「勝ちきる」ってどういう意味か?
延長戦ってなんの?
さまざまな疑問が生まれ、
解消するストーリーがその度に生み出されていく。

感想

一人で読んで、ここまでの想像ができただろうか??
参加者の中には、歌集を一気に読もうとして、挫折したという人がいた。
こんな妄想・想像、ストーリーテリングをいちいちしていたら、疲れて寝てしまう。

歌集はみんなで読むとおもしろい。

他にもこんな歌で妄想を話し合った。

ユニクロで一度に下着を買ったから一度に寿命が訪れている

長谷川燐 「延長戦」より

学南のゆうちょで七千円おろす たぶん泣けないような気がする

長谷川燐 「延長戦」より

敬語ときどきタメ口になる 助手席に花の匂いのする女の子

長谷川燐 「延長戦」より

レシートは大丈夫です、と伝えればくしゃくしゃにされるパフェのレシート

長谷川燐 「延長戦」より

元気だけが取り柄です。って流行りそう 逆にね。分かる。分かる街並み

長谷川燐 「延長戦」より

https://gendaitanka.thebase.in/items/76407694

自分も詠んでみたい

こうなってくると、自分も短歌を作ってみたい欲求が芽生えてくる。
日常の一瞬を、目に止まった風景を、あの時の思い出を、
着飾るよりも素直に、個人的で、生々しくて、私だけの世界を。

次回の読書会

次回は、2023年11月19日。
山極寿一さん・小川洋子さんの共著「ゴリラの森、言葉の海」

当日、書籍の販売も致します。ご相談ください。


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