ショート小説『お金』
『ピッ!280円です!』
冷たい電子音が鳴り響く。
いつものビールといつものつまみなので、いつもの値段だ。
これが貯金箱だったらなーといつもと同じことを思いながら、小銭を投入した。
『使えるお金を投入してください。』
身体はすでに、出口を向いていた。足も半歩出ていた。
『ちっ、感度の悪い奴だ』
と言い、出てきた小銭を再び投入口へ。
『ピーピーピーピーピーピー』
警告音が鳴り出した。周りに客が居ないのは幸いだ。
何処からともなく、人が走ってきた。
『おい、小銭が・・・』と言いかけると、
店員の表情が曇っているというか雨雲一色。
『あのーお客様、昔の小銭は使用出来ませんので。。。』
『はっ?』
『はっ?』
この店員は私を揶揄っているのか?
『あのー、それいつの時代の貨幣ですか?』
『はっ?2022年のに決まってるだろ!』
『決まってるだろ!と仰られましても、今は2050年ですし、今年のマネーでお願いします。』
『はっ?』
『はっ?』
『今、何年て言った?』
『2050年ですが、何か?』
きっ、きっ、昨日まで2022年だったはずなのに!
そこに掛かってるカレンダーもデジタルのカレンダーも2050年だ。
恐る恐る聞いてみた。
『私が今持ってるお金って??』
『はい、無価値ですね』
おしまい
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