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私は何者か、317


卵が値上がりしているとかいう。さもありなん。彼等は優良食品。金たくさん払っても手に入れよう。等価とは、異国よりフェアトレードなどと。それもまた良きことかと。国内に目を向けて。等価。対価。どうか。そうか。ノンか。ウイか。シルブプレ。畑にじゃがいもを植えよう。すくすく育てば、カレーにシチューにコロッケ、おでん、フレンチフライ。ほらね、メルシーボクー。ふらんすか仏か。春陽と言えど、朝晩は冷える。いけないこと。犠牲。sacrifice。その暗い目を見るのはあまりに悲しい。死とはすぐ隣におわす。咳き込んでは遠のいてゆく意識のなかで、それでも、わたしを、私のことをどんなふうに、その薄れゆく現在のこのあるべきかたちをとらえていたのか。放っておいてとはわたしの口癖。にもかかわらず、先にさよならとか、卑怯極まりないよ。春彼岸。その人の大切な誰かがさよならしたとか聞いてはいたが、そのさよならは誰が仕組んだ。誰に、組み敷かれたのか。わたしの未来のことなどわたしにはわかるはずもなく、いや、わからぬからこそ。それが、ロトの妻のように振り向くことの勇気か。振り返る怖さにうちふるえ、または、欲がないからこそ、ただ振り向けぬのか。不自由さゆえに、その深さゆえに、振り向くのか。目を閉じて、耳を塞ぎ、唇を閉じよ。前にしか道はなく、未知とはまだその先のことであろう。そして、振り向いたところにある者の未来がまたそこにあったりするのであろう。夫であった人の死のその刻を立ち会ったものとして、もう、許して欲しいと思う。生き証人であると。その、私へのストレスはだれがどうしてくれようか。わたしへの負荷か。生まれ持った物など、わたしの責任ではないはず。運命とは残酷であり、けれど、簡単に覆せようぞ。わたしのせいではない、それだけのこと。みな、プラマイゼロ。さよならよ、さよなら。そこまで。


彼の寝息。


背中に書いた文字は鶯。


鳴いてみて君が振り向く驚いて我は鶯それさえ忘れ


愛などと、人の作りし概念。


言わせてもらおう。


つくりものの愛なのかと。


飲んでいるのは、否めぬ。


彼がただそこに死なずにいることをのみ望む 我麦酒七本


望むとは、望まれてか。


それとも、望まれるから、望むのか。


私は何者か。


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