No.940 それを言っちゃあ…。

中国外交部の報道官は、7月11日の定例記者会見で、IAEA(国際原子力機関)の事務局長が韓国とニュージーランドを訪問した時に、「福島の放射能処理水は飲用や水泳が可能で他国の原発排水と同じく危険がない」と発言したことに対し、強い反発のコメントを述べました。
 
IAEAの総合評価報告書には異議があり、基準を満たせるか定かでない福島の汚染水を正常に稼働する原発の排水と単純に比較することは、科学の常識に反し、両者には本質的な違いがある。一つ目は由来が異なる。二つ目は含まれる放射性核種の種類が異なる。三つ目は処理の難度が異なると理由を挙げました。そして、「IAEAは日本原発汚染水浄化装備の効果と長期的な信頼性を評価しておらず、今後30年内にすべての原発汚染水が標準に合うように処理されるという保障がない」とし、「日本側は機関報告書を海に出て行く通行証として使うことはできない」と付け加えました。
 
 「福島の汚染水の飲用や水泳が可能だと考えている人がいるなら、われわれは日本に対し、汚染水を海に流して国際社会に懸念を持たせるのではなく、しっかりと利用し、その人たちの飲用や水泳に提供するよう提案する。」
とまでいいました。
「安全というなら、海に流すのではなく、日本人の飲み水や生活用水として使えばよいではないか!」
という理屈です。

「面白い。国の内外に安全性を理解してもらうために、さっそく国会議事堂内の飲み水は、全て福島からの安全な汚染水に切り替えようではないか!」として、言い出した議員や政党の皆さんが懸念を打ち払って頂ければよいのですが、そうはなさらないでしょう?それなら、海への、魚への、漁師への、近隣諸国への、地球への…、安全は本当なのですか?
 
国際社会において、言葉の論理を曲解して利用し、平気で振りかざして正当化しようとする某国のあり方は、成熟した大人のそれとは思えません。しかし、都合がよくないから薄めて垂れ流してしまおうとする、どこかの国の誰かさんたちの思惑の痛いところを突いたような印象は否めません。国策に反し、積極的に自然破壊を助長するような行為のように思えるからです。
 
それにしても、中国人の発想には、時に仰天させられることがあります。「海賊版王国」の名を欲しいままにしている彼(華?)の国ですが、日本のアニメやキャラクターだけではない「似せもの」を生み出す能力に長けています。日本からすれば、「著作権や特許の侵害である」と国際法や世論に訴えたくもなる訳ですが、こんな発想で切り返す中国人もいるのだそうです。
 
「日本は、中国人の生み出した漢字から平仮名やカタカナと言った独自の文字文化を生み出したと言うが、そもそも我々の発明した漢字を無断で使った結果ではないか。著作権や特許をいうなら、日本人は中国に漢字を返せ。」(「サンデーモーニング」で寺島氏が語っていました。)
 
「へー、なるほどな―!」と妙に感心してしまう私ですが、○理屈についても大国の看板を背負っているようです。
「それを言っちゃあおしまいよ!」
と寅さんの声が聞こえてきそうです。

国際関係とは「無理が通れば、道理引っ込む」世界なのでしょうか?


※画像は、クリエイター・あらほさんの、「海底とたくさんのお魚」の1葉をかたじけなくしました。安全で、健康な海であってほしいものです。