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不屈の心

私は、今から4年ほど前からバンコクで働いている。
駐在員もいない、雇い主である上司は日本人だけど他はタイ人作業員だけ、の小さな会社。
事務は私ひとり。総務兼経理兼人事兼購買兼通訳兼現場管理みたいな簡単なお仕事です。
現在は現場管理を担当してくれる人が入社し、なんとかかんとか楽しく働いている。

楽しく働けていることの要因にタイ人スタッフしかいないというのはあると思う。
日本にいた時も割とのらりくらりと周りとはうまくやっていける方だったので、どこでも楽しく働けていたんだけど。
育った環境も価値観も全く違う彼らには驚かされることや考えさせられることが多々あって、単純におもしろいのだ。
射手座ですどうも。

さて今日は漢文みたいな職務の中から、人事関連で驚いたことを書こうかな。
ちなみにうちの子たちは製造現場の作業員なので、オフィス街にいる大卒のタイ人とはまたちょっと違うと思います。the ローカルタイ人のお話。

友達や恋人と一緒に面接に来る

最初に驚いたのがこれ。その発想はなかった、的な。
ひとりで入社するより楽しそうだもんね?うんうん。
もちろん何の問題もないんだけど、ひとりだけ欲しいなっていう時にちょっと困ったりする。

友達同士はまだしも同棲カップル、家でも職場でも一緒にいたいってすごいな!と思うのは、私がSuper Dryだからだろうか。
あとは一緒には来ないけど入社後友達や恋人や親族を連れて来るパターンがあります。
仲良し。仲良しですね!

友達や恋人が面接に付き添いとしてついてくる

要る?付き添い。面接に来るのに必要ですかね?って思うんだけどけっこういるんですよね。
座ってね、待ってるんです。面接が終わるの。

一度古株のタイ人に「どうしてタイ人は面接に友達を連れて来るの?」って聞いたら、「わかんない。私はひとりで受けるけど、友達の面接について行ったことはあるよ。…ガムランジャイ(励ます、勇気づける)じゃない?」と言っていた。
そういえばスタッフが昼休みに美容院行って来るって後輩を連れてった時も、ついて行く子に「なんで一緒に行くの?」って聞いたら「ガムランジャイ」って言ってて笑った。
タイ人は寂しがり屋です。

円満退社じゃないのに戻ってこようとする

これが一番のカルチャーショック。
辞めたスタッフの中には知り合いや今いるスタッフ、時に私に直接連絡してきて「戻りたい」と言う子がいるのだけど、揉めて辞めた子の方が多い。
私だったら絶対戻りたいなんて言えないし、戻ったところで普通に働けるんだろうか?と本当に不思議なので、そんなエピソードをふたつ紹介します。

もう香水しかない

半年と少し前に、半分クビという形で辞めた子がいる。
要因はふたつあって、ひとつは生活態度。
ギャンブル好きで、宝くじが主だったようだけどそのせいなのかお昼を食べない日も多く、それでいていくら当たったみたいな自慢話をする。
そこまではまだ良かったけど禁止されているにも関わらず自分の給与額を他のスタッフに話していた。しかもその額が実際よりも盛っていて新人では有り得ない額なものだから、ボスは憤慨しつつも呆れ、周りのスタッフの目は冷ややかだった。

そしてもうひとつは、書くのもなんだか心苦しいが、他のスタッフたちからの苦情。
「臭い」から隣に座りたくない、仕事を教えるのが嫌だというものだった。
吐きそうだという子も出てくるし、現場にやたら芳香剤が置かれ始めた。
私の席は離れているので気にならなかったけど、たしかに近くを通るとお風呂に入っていない、頭をしばらく洗っていないようなにおいがする。
清潔感もなかった。持ち物や仕事の仕方など、端々から「部屋がものすごく汚そうだな…」と連想させる人ではあった。

タイ人はいい匂いが大好きだ。
柔軟剤やベビーパウダーや芳香剤の匂い。私にとってはそっちもなかなかどうして臭いですよ?と思うのだけど完全なるマイノリティ。
フローラルを愛して止まないタイ人にとってはかなりのストレスだったのだろう。
彼女が臭いという不満は日に日に大きくなっていった。

きっとみんな、嘘や見栄でゴテゴテの自慢話にも辟易してたのもあると思う。
みんなが食事している横でバカみたいな大声で電話したり、口を開けば薄っぺらい自慢話ばかりで、こんなに空気の読めないタイ人もいるんだなと驚くほど浮いていた。
そのクセこっそり一番おとなしいスタッフに帰りの足代がないと10バーツを借りていた。
30円…30円もないの…。
社内の空気が今までにない微妙なものになってしまい、このままではいけないと彼女と面接することになった。

面接前はボスとふたりでものすごく悩んだ。
どう切り出してどう言うのか。
お給料のことを言うなという注意は余裕でできる。お金を借りようとしたらクビだと念押しすることもできる。問題はもうひとつの方。
お風呂に入っているのかもしれない。元々の体臭だとしたら言ってはいけないのではないか。女性であることが言いにくさを増大させる。(男性でも言いにくいけど)

散々悩んだボスは単刀直入に「スタッフから臭いという声があるのだけど毎日お風呂に入っていますか。」と聞き、「もし心当たりがないのであれば、香水を使うのはどうだろう。」と提案した。
あんなにつらい通訳もそうそうない。
彼女は困った顔をして「お風呂には毎日入っている。これ以上どうしたらいいのかわからない。香水を使うしかないけど好きではない。」と言った。
翌朝電話で、彼女は退職を願い出た。

そしてつい先日、10バーツを貸してあげたスタッフに彼女から電話があり、「社員を募集しているなら戻りたい」と言っていたとのこと。
ボスはきっぱりと「いえ、結構です。」と答えた。

お金を返したら

あるあるだと思うけれど、金銭面で揉める子というのは少なからずいて、だいたいが給料を前借りしたり他のスタッフにお金を借りたままいなくなるパターンだ。

その中に数年に渡り前借りや借金を繰り返し、初めの頃は返済していたものの、産休を期にボスからまとまったお金を借りてフェードアウトした子がいる。
「生まれた子が健康ではないために医療費や特別なミルク代がかかる」「高価な医療器具を買わないと命に関わる」というもので、不憫に思ったボスがポケットマネーを出したのだった。

その後仕事には復帰したものの子供を理由に欠勤が増え、休職となり、その間に私やスタッフに泣きながら病院代を貸してくれ今すぐATMへ振り込んでくれと電話して来たりして本当に勘弁して欲しかった。
早い段階でボス以外は誰も彼女を信用していなかったので、同情する人はいなかった。
スタッフ同士のお金の貸し借りは禁止されている。
端から無心をして全員に断られた彼女は、最後にかけたスタッフに「私の名前は出さずに自分が借りたいということにして先輩から借りてくれ」と言ったこともある。
姑息すぎて引くし、バレるということは考えないのだろうか。
スタッフ全員がうんざりしていた。

そこから、忘れた頃に連絡してくるようになった。
もう一度雇ってくれないかと。

いやあなた、ボスにお金返してないよね?まずは返済しないとボスは話聞かないって言ってるよ、と言うと、「いくらですか?」と言う。
びっくりした。キレイさっぱり忘れている。

彼女は「働いてそのお給料から返します!」と言い出し、なんとボスもみんなが止める中それならと再度雇ってしまい、彼女は見事にスタッフと揉めて二日で辞めた。
何がしたかったんだ…と、ふと復帰初日のことを思い出す。
そういえば、電話を借りたいと言い、会社のfaxでどこかに書類を送ったり受け取ったりしていた。
それから彼女宛の郵便物が届き続けるようになる。おそらくローンか何かだろう。

更に驚くことにしばらくして彼女はまた戻りたいと連絡してきた。もう話すのも面倒だった。
会社まで押しかけてきてボスと話したいと言う。仕方なく話を聞いたが、ボスがまずはお金を返済してくれと言えばもちろん返します今集めているんですと彼女。
一体何度このやり取りをするんだと思いながら通訳する私。
そして彼女は言った。
「お金を返したら雇ってくれますか?」

空いた口が塞がらなかった。
すごい。これほどまでに神経がごんぶとの人にはそうそうお目にかかれないのではないか。
一見おとなしそうで腰が低く、ありがとうございますが口癖のような彼女。
見事なまでに口だけなのだ。

ボスはまずは返済してくれ。それから考えると再度言い渡し、その後彼女からの連絡はない。

実際戻って来たとしたら、彼女たちは普通に働けるんだろうか。
なんとなくだけど、何事もなかったかのように働けそう。
周りもとりあえずは表面上は普通にしてそう。
そう思わせる何かがタイ人にはある。

タイ人は本当にメンタルが強いと思う。
物忘れがいいだけかな。
私も自称鋼のメンタルだけど、負ける自信しかないです。

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